「電気自動車は本当に「クリーン」なのか──EV普及の前に考えるべき「4つの問い」」の写真・リンク付きの記事はこちら

気候変動に歯止めをかけるには、電気自動車(EV)が欠かせない。少なくともこれが一般の共通認識である。さっさと「ハマー」とはおさらばして、排ガスが出ないものに乗り換えよう、ということだ。

少なくとも7カ国が、今後数十年のうちにガソリン車などの内燃機関で動くクルマの販売を禁止することを計画している。英国やフランス、そして何よりも自動車大国である中国のマーケットを失うかもしれないという不安は、自動車産業にその重い腰を上げさせた。

1月14日、フォードは2020年までにハイブリッド車とEV計40車種を新たに投入すると発表(同社はまた、「Mach 1」という新モデル販売の大雑把な計画も発表した。高燃費なクルマからの移行を少し簡単にする、高性能な電動SUVといったところだろう)。ゼネラルモーターズ(GM)[日本語版記事]、ジャガーランドローバー、ボルボ、アストンマーティンはEVへの完全移行を目指している。

しかし、クリーンでグリーンな未来への道には、万能薬よりも落とし穴のほうが多そうだ。というわけで、新たなドライヴに向けてクルマを充電中のいま、わたしたちが聞いておくべき質問をまとめてみた。

1. EVはどのくらい増えるのだろう?

ガソリン車禁止を目指している国は、EVにとっては大きな潜在市場だ。もし自家用車の需要が変わらないと仮定すれば、現在のクルマ販売の数値を基にEVがどのくらい必要になるか推測するできる。

ガソリン車禁止国が増えた場合のEVの推定累計販売台数。縦軸の単位は100万台。

2. バッテリーはどのくらい必要になるのだろう?

トヨタ自動車とホンダは燃料電池車の実現に向けて、いまだに奮闘中だ(いまのところ客はあまり興味をもっていないようだが)。というわけで、いま発表されているEVは、すでに実現されているもののなかでいちばんいいテクノロジー、すなわちリチウムイオン電池に頼っている。バックアップはガソリンエンジンだ。

テスラはネヴァダ州に世界最大のバッテリー工場「ギガファクトリー」を建設している[日本語版記事]。ここでは年間35GWh相当のバッテリーが生産される予定である。

しかし、これでは足りない。クルマはもうじき、バッテリー消費量ナンバーワンの地位を家電から奪うことになるだろう。さらにクルマには、スマートフォンに組み込まれているもの以上にいろいろなものが必要になるのだ。

必要な総電力量(ギガワットアワー)。白線はEV、黒線は携帯端末を示す。

3. クルマを充電する電力はどうやって発電されるのだろう?

どのバッテリーも、充電が必要だ。もし充電のための電力が石炭や石油、(多かれ少なかれ)天然ガスといった“汚れた”資源から来るのなら、EVはほとんど気候変動対策にはならないだろう。ここで奇妙な問題が発生する。バッテリーはそれぞれの場所の電力を使って充電されるため、EVのメリットの大きさはクルマがどこで充電されるかによって変わるのだ。

発電量とその内訳(2016年)。黒は再生可能エネルギーによる発電、茶色は原子力を含むその他の方法による発電を示す。

地域によって発電方法が違うということは、場合によってはEVは普通のクルマより環境に悪いかもしれないことを意味する。もし所有者が石炭火力発電を行っている州(カンザスのことだ)に住んでいるとしたら、環境への優しさはリッター15kmのガソリン車と同程度になる。発電のほとんどが化石燃料を使って行われているインドでは、リッター11kmのクルマと同じくらいになる。

環境への影響をEVと同程度にする場合、ガソリン車の燃費はどのくらいでなければならないか? 横軸は、1ガロンで走行可能なマイル数。

4. バッテリーは何から出来ているのだろう?

仮に地球全体の電力すべてが再生可能エネルギーにシフトしたとしても、バッテリー生産にはコバルトやリチウムといった天然資源の採掘が必要になる。そして、それは持続可能性や責任の問題につながってくる。

例えば、世界中で使われているコバルト(リチウムイオン電池の大事な材料だ)の60パーセントは、コンゴ民主共和国で採掘されている。そしてこの国では人権侵害がはびこっているのだ。

研究者たちは、問題ある材料をあまり使わなくて済む新しいバッテリーの開発を目指している。そしてガソリン車廃止を宣言している国は、再生可能エネルギーへの移行とともにこういった問題にも取り組むことが理想になる。

結局のところ、上から下までクリーンなシステムを構築しない限り、われわれは地球温暖化に負けるのだ。

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