神の手弾や韓国の疑惑判定に並び… パナマの“ゴースト弾”「伝説の大誤審」に不名誉選出

写真拡大

北中米カリブ海予選パナマのゴーストゴール騒動で波紋 スペイン紙が伝説の誤審を特集

 ロシア・ワールドカップ(W杯)北中米カリブ海予選で波乱が起きた。

 10月10日に行われた最終予選最終節で、アメリカが敗れて予選敗退となった一方、パナマが悲願の本大会出場を決めた。パナマはコスタリカ相手に2-1勝利を飾ったが、この試合でゴールラインを割っていなかった一撃がゴールとして認められる「ゴーストゴール騒動」で波紋を広げた。

 スペインメディアではW杯における数々の誤審を特集。神の手弾や日韓共催W杯で韓国代表の躍進を後押しした疑惑の判定などに並ぶ、伝説の大誤審に不名誉な選出を果たしてしまった。

パナマのゴーストゴールは、マラドーナとアンリのW杯最大のパロディに加わった」と特集したのはスペイン地元紙「マルカ」だった。

 最終節キックオフ前の時点で、パナマの順位は4位。W杯出場権獲得を意味する3位浮上にはパナマの勝利と、3位アメリカの敗戦が条件だった。アメリカが敵地で最下位トリニダード・トバゴに1-2でよもやの敗戦を喫した一方、パナマはすでにW杯出場権を得ていたコスタリカをホームに迎え、2-1の逆転勝利を飾った。

 この試合で疑惑のゴールが生まれたのは0-1で迎えた後半8分だ。劣勢のパナマが右CKを得ると、ニアサイドで両軍誰も触れずにファーサイドにクロスが流れる。FWペレスが相手DFと交錯しながら顔でボールを押し込もうとしたが、倒れこんだDFの足に阻まれ、ゴールラインは割らずにボールはゴール横にこぼれた。

 最終的に紙一重でクリアされたはずがゴール判定となり、コスタリカの猛抗議も実らず大誤審が生まれた。“ゴーストゴール”で勢い付いたパナマは逆転に成功。結果的にアメリカは本大会出場権を逃すとばっちりを食う羽目になった。

マラドーナ「神の手発言」で伝説に

 マルカ紙では「フットボール界最大の大会でインチキなゴールで論争が起きるのはこれが初めてではない。他のとんでもない瞬間を振り返ろう」と過去の誤審を特集している。

 まず選出されたのは1966年W杯イングランド大会決勝で起きた疑惑のゴールだ。西ドイツ戦でイングランド代表FWジェフ・ハーストは延長前半11分、右からのクロスに完璧なトラップを見せ、右足一閃。シュートはバーの下を叩き、そのままバウンドした。ゴールラインを割っていなかったものの、ゴールが認められてしまう。ハーストの一撃でイングランド代表は4-2で下し、優勝を果たした。

 2番目はアルゼンチンの天才ディエゴ・マラドーナの神の手弾だった。1986年W杯準々決勝でアルゼンチンはイングランドに2-1勝利。いずれもマラドーナの一撃だったが、相手GKと競り合ったマラドーナの左アッパーがボールを直撃していた。完全な誤審だが、マラドーナはこの後、相手5人を抜く神業ゴールも決める天才ぶりを披露。試合後の「神の手発言」で伝説となった。

 3番目は元フランス代表FWティエリ・アンリが2010年W杯欧州予選アイルランド戦で見せた神の手アシストだ。0-1で迎えた延長戦で、エリア内に侵入したアンリは腕でボールをトラップ。その後のクロスでDFウィリアム・ギャラスの同点弾をアシストしたが、クロス直前に左手で二回タッチするというハンドだったため、試合後に物議を醸した。

日韓W杯、韓国がスペインに勝利も…

 4番目は2010年南アフリカW杯のメキシコ戦でアルゼンチン代表FWカルロス・テベスが犯したオフサイド弾。FWリオネル・メッシが突進し、スルーパスをテベスに供給した。飛び出したGKに阻まれたが、このこぼれ球をメッシがループシュート。するとゴール前で完全なオフサイド状態だったテベスが頭で押し込み、先制点を奪い取った。メキシコ代表の抗議は実らず、ゴールと認定されている。

 5番目の誤審も同じく2010年W杯で起きた。イングランド代表MFフランク・ランパードはドイツ戦で、1-2とビハインドで迎えた後半38分に華麗なループシュートを放つ。ボールはバーの下を叩き、ゴールラインより内側にバウンド。名手マヌエル・ノイアーから同点弾を奪ったかに見えたが、ゴールは認められず。このショックが響いたのか、イングランドは1-4で大敗を喫した。

 6番目の誤審は2002年日韓共催W杯で3位に輝いた韓国代表が、誤審の連続で物議を醸した準々決勝のスペイン戦がピックアップされた。「エジプト人主審ガマル・アル・ガンドールが、スペイン側の正当な2ゴールを却下するなか、韓国は勝利した」と記している。

 7番目には、元日本代表監督で元ブラジル代表MFジーコの魂の一撃も選出されている。1978年W杯スイス戦でジーコはコーナーキックからヘディングでゴールを突き刺した。2-1勝利のはずが、ウェールズ人のクライブ・トーマス主審はこのゴールを認めず、痛恨の1-1ドローとなってしまった。

クウェート皇族が介入、ゴール取り消しに

 8番目の誤審はスペイン代表FWミチェルのキャノンシュート弾が選ばれた。1986年メキシコ大会グループD組初戦のブラジル戦でミドルシュートを決めたはずが、オーストラリア人主審のクリス・バンブリッジ氏はゴールを認めなかった。

 9番目の誤審はスタンドからの圧力によるものだった。1982年スペインW杯でクウェートはフランスに1-4で敗れたが、1-3とリードされた場面でフランス代表FWアラン・ジレスの明らかなゴールに対し、スタンドで観戦していたクウェート皇族のシェイク・ファハド・アル・ザバーハ氏がピッチ上に介入。ロシア人主審にゴールの撤回を申し立てると、なんと取り消しになる前代未聞のスキャンダルが起きた。

 これまでのサッカー史で様々な誤審が生まれたが、パナマのゴーストゴール事件はW杯の歴史に汚名を刻んでしまったようだ。

【了】

フットボールゾーンウェブ編集部●文 text by Football ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images