ソフトバンク・工藤公康監督【写真:藤浦一都】

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優勝を後押しする「ファン」の力、本拠地で勝てなければリーグ制覇から遠ざかる?

 ヒーローインタビューで良く選手から発せられる。「ファンの方の声援のおかげです」「みなさんの声援で打つことが出来ました」などなどのメッセージ。熱心に応援してくれるファンへの感謝の思いを示す言葉である。

 実際にリーグ優勝を掴むには、この「ファン」の力が大きなものになるようだ。自チームのファンが数多く入るホームゲーム。ここで、どれだけ多く勝てるかが、その年の順位を大きく左右するのである。ホームゲームとビジターゲームは半々。72ないし71試合をそれぞれで戦う。ほぼ同数の試合数ではあるのだが、本拠地での試合はより重要で、成績から見れば、本拠地で勝てないチームは、リーグ優勝から大きく遠ざかるのである。

 ソフトバンクと楽天が首位の座を激しく争っている今季のパ・リーグのホームとビジターの戦績は、現時点でこうなっている。ホームには地方開催などの主催ゲームも含まれている。()は順位。

ソフトB
ホーム(1)40勝14敗
ビジター(2)30勝23敗

楽天
ホーム(2)33勝13敗1分
ビジター(1)30勝21敗

西武
ホーム(3)33勝16敗1分
ビジター(3)28勝25敗1分

オリックス
ホーム(4)28勝28敗
ビジター(4)18勝28敗1分

日本ハム
ホーム(5)23勝26敗
ビジター(6)12勝41敗

ロッテ
ホーム(6)19勝33敗
ビジター(5)14勝35敗1分

 楽天に2ゲーム差をつけて首位に立つソフトバンクが、本拠地で圧倒的な強さを誇っている。15日のオリックス戦終了時点で5連勝中。ここまで実に26個の貯金を積み上げている。貯金7のビジターゲームとの差を見れば、「ホーム力」の高さが分かる。これは楽天、西武もしかり。今季のパ・リーグに限れば、本拠地での成績がそのまま順位を反映している。5位に沈む日本ハムは本拠地で借金わずか3だが、いささか敵地で負けすぎである。

セ・リーグ首位の広島も本拠地で好成績

 広島が独走態勢を築き、マジックが再点灯したセ・リーグはこうなっている。

広島
ホーム(1)38勝15敗1分
ビジター(1)28勝23敗3分

阪神
ホーム(2)30勝22敗
ビジター(3)26勝25敗1分

DeNA
ホーム(4)25勝24敗3分
ビジター(2)27勝24敗1分

巨人
ホーム(6)25勝26敗
ビジター(4)25勝28敗1分

中日
ホーム(2)31勝23敗3分
ビジター(5)15勝33敗2分

ヤクルト
ホーム(4)25勝24敗2分
ビジター(6)11勝44敗0分

 やはり広島の「ホーム力」が特筆して際立っている。ホームゲームで貯金23個を作り出し、ビジターでは貯金は5個。ビジターで貯金3のDeNAや同じく貯金1の阪神とは敵地での成績に大きな差はなく、本拠地での強さで独走態勢を築いている。ビジターの成績に関しては、パ・リーグも同様で、上位3?4球団にそれほど大きな差は出ていない。

過去3年間の優勝チームも本拠地で強さを発揮、「内弁慶」がリーグ制覇をつかむ道?

 過去3年間のセ・パ両リーグの優勝チームの成績も見てみよう。

2016年
日本ハム
ホーム(1)45勝24敗2分
ビジター(2)42勝29敗1分

広島
ホーム(1)51勝20敗1分
ビジター(1)38勝32敗1分

2015年
ソフトB
ホーム(1)44勝25敗3分
ビジター(1)46勝24敗1分

ヤクルト
ホーム(2)45勝26敗1分
ビジター(2)31勝39敗1分

2014年
ソフトB
ホーム(1)45勝24敗3分
ビジター(2)33勝36敗3分

巨人
ホーム(1)44勝27敗1分
ビジター(2)38勝34敗

 過去3年の優勝チームで最もホームでの貯金が少なかったのは2014年の巨人。それでも17個の貯金があった。2016年の広島は、なんと31個の貯金を作った。総じて優勝したチームはホームでは20前後の貯金を作っている。2015年のヤクルト以外は、その年の本拠地成績が、リーグ1位だった。

 ビジターの成績は、年間90勝を達成した2015年のソフトバンクの22個が過去3年で最多。2014年のソフトバンクや2015年のヤクルトは、敵地で借金を作っても、リーグ優勝を果たしている。2015年のヤクルトは勝率.539での優勝で、本拠地成績では巨人を下回ったものの、巨人がビジターで15個の借金を作ったことも影響していた。

 今季のパ・リーグのように2強によるデッドヒートになったり、セ・リーグの広島のように独走態勢となるなど、その年々のペナントレースの展開によっての違いはあれど、本拠地での成績が大きな意味を持つことは、概ね共通している。少なくとも、優勝争いに加わるためには、ホームでの貯金20前後は必要となるのだろう。本拠地と敵地で同じように勝ちを積み重ねるのは至難の業。ホームに強い「内弁慶」こそが、リーグ制覇を掴む道なのかもしれない。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)