2020年のスマホはこうなる? HTC U11は未来からやってきた端末だ:山根博士のスマホよもやま話

日本での発売も正式にアナウンスされたHTCの新モデル「HTC U11」。Snapdragon835の搭載や6GBの大容量メモリの実装(上位モデル)、5.5インチWQHDディスプレイを搭載するなど名実ともにHTCのフラッグシップモデルとなる。

昨年のフラッグシップ機である「HTC 10」を順当にスペックアップした製品とも言えるが、水が流れるような本体デザインや微妙な色合いを醸し出す背面側のガラス仕上げなど、全体の仕上がりは大きく変わった。金属とガラス素材の組み合わせは今年1月に発表された「HTC U Ultra」「HTC U Play」と同じテイストだ。それぞれ5.7インチ、5.2インチモデルであることから、HTCのUシリーズはディスプレイサイズやCPUを変えた3モデルが出揃ったことになる。

金属とガラスをギャップレス仕上げとした美しいデザインのHTC U11
しかしHTC U11は新デザインのハイスペックモデルという位置づけの製品であるだけではなく、これまでのスマートフォンにはない新しい機能を搭載してきた。それはスマートフォンの将来の使い方を大きく変えるものになるかもしれない。側面を握って操作する「エッジ・センス」と、複数の音声アシスタント機能を搭載しているのである。

スマートフォンを握るという操作は、スマートフォンを使う時に必ず行うものだ。手の平でスマートフォンを持てば、おのずとスマートフォンを軽く握ることになる。その握る操作でスマートフォンをコントロールしてしまおうというのがエッジ・センス機能である。類似の機能を持った製品は過去にも他社から発売されたことがあるが、エッジ・センスは感圧センサーを利用することで、握る強さの強弱に応じた2通りの操作を可能にするほか、感度の調整も行える。


Squeeze=握る操作がHTC U11の特徴の一つだ

エッジ・センスは「強く握る」または「弱く握る」で異なる操作を割り当てられる。そのため一連の操作をスムースに行うことができるのだ。例えばカメラを起動し、強く握るとリアカメラとフロントカメラを切り替え、弱く握るとシャッターを切ってくれるのである。1つのアプリ内で複数の操作を必要とするときも、エッジ・センスならば握りの強弱で連続した操作を行える。ただのタッチセンサーではなく、複数の操作を行える点は利便性が高い。

HTC関係者によると、当初エッジ・センスは電源ボタンや音量コントロールまでも出来るように考えられていたようだ。つまり側面から一切のボタンを無くし、端末を握るだけで電源ONからの操作が全て行えるようになるはずだったのだ。しかしいきなり電源ボタンを無くすのはユーザー側が戸惑ってしまうだろう。他社の例を見てみれば、LGは側面のボタンを背面のカメラの下に配置し左右に何もないすっきりしたボディーデザインのスマートフォンを販売してきたが、今のモデルでは左右のボタンが復活している。背面の電源ボタンはユーザーにとって慣れるものでは無かったのだろう。


スポーツ中も端末を握って操作。エッジ・センスはスマホの使い方を変えてくれる

HTC U11は本体の左右下半分側に圧力センサーが内蔵されているが、それを上側や本体上下にも配置すれば、合計6つのセンサーを配置できる。またHTC U11は側面を両側から握ることで動作するが、試しに片側だけを押してみてもエッジ・センス機能は動作した。現状は握りの強弱という2つの動作にしか対応しないが、フルにセンサーを内蔵させたうえで握り方のパターンを組み合わせれば、エッジ・センスで対応する動作は10以上にもなるだろう。なお2012年にはドコモが「Grip UI」という、握って操作の開発モデルを発表したことがある。

例えば、本体右側の上側を強く押せば電源が入り、左側面の上側を強く押せば音量が上がり、下側を強く押せば音量が下がる、といったように、従来のハードウェアキーが配置されていた側面部分を押すといった操作なら、ユーザーは簡単に覚えるだろう。カメラを起動して本体を横にすれば、側面の上部右側を軽く押すとシャッターが切れる、なんて動作の割り当てもできる。本体を握るだけではなく、片側の側面だけを押す、という操作が加われば画面をタッチする操作をより低減させることができそうだ。


HTC U11は本体側面下部のみにセンサーを内蔵。今後のモデルではセンサーを増やすかもしれない

だが本体を握ってアプリを起動することだけがHTC U11の本来の特徴ではない。HTC U11に搭載されるGoogleアシスタントとAmazonアレクサの起動を握る操作に割り当てれば、スマートフォンをポケットから取り出しながら即座に呼び出すことが出来るわけだ。つまりスマートフォンに向かって「OKグーグル」と話しかけなくとも、HTC U11を軽く(あるいは強く)握るだけで、音声アシスタントをそのまま使うことができるのである。

しかもHTC U11は4つの高性能マイクを内蔵しているため、騒音の多い屋外でも音声アシスタントの声認識率は高いだろう。さっと取り出すだけで話しかけることができ、しかも何度も言い直さなくても良い。スマートフォンの音声コントロール時代を先取りするようなデバイスがHTC U11なのだ。


GoogleアシスタントとAmazonアレクサ対応。中国のBaidu DuerOSにも対応する。

そう考えると、HTC U11の流線型のボディー形状も、本体を持って画面のアイコンをタップすることよりも、ポケットから出し入れしやすく、しかも側面を無理なく握る操作ができるデザインとして考えられているのかもしれない。スマートフォンにいくつものアプリを入れたところで、結局使うのは数個程度という人も多いだろう。将来、複数のセンサーが内蔵されるようになれば、それらのアプリすべては端末を握る、側面をタッチする、という操作で起動することができるようになる。

しかも予定の確認や天気のチェック、乗り換え案内、果ては簡単なショッピングなどは音声アシスタントを使えばいいのだ。そうなるとスマートフォンの画面のアプリアイコンをタッチするという操作を行う必要すらなくなってしまうかもしれない。


HTC U11は側面片側だけを推しても反応する。音声アシスタントとの組み合わせなど多彩な操作が期待できる

HTC U11の実機を触ってみたところ、エッジ・センス機能に慣れるためには若干の時間が必要と感じた。また対応する機能もまだ少なく、全てのアプリで握る操作が使えるわけではない。まだ粗削りな部分も見受けられるが、スマートフォンの新しいユーザーインターフェースの方向性の一つとして、このチャレンジは大きく評価できる。

2017年はGoogleやAmazon以外の音声アシスタントが次々と商用化され、スマートフォンを音声でコントロールする時代が来るだろう。本体を握って音声で操作できるHTC U11は、スマートフォンの未来の姿を先取りしているのではないだろうか。



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