肌荒れ、生理痛、乳がん…「女性ホルモンの乱れ」が招くカラダ警報
女性ホルモンというとエストロゲン（卵胞ホルモン）ばかりがクローズアップされる傾向にありますが、本当に大切なのはエストロゲンとプロゲステロン（黄体ホルモン）がバランスよく正常に分泌されること。このバランスが崩れてしまうと体だけでなく心にまでさまざまな症状があらわれてしまいます。
そこで今回は、健康管理士の筆者が、2つの女性ホルモンの基本的な働きから、そのバランスが乱れた時に起こりやすい症状までをご紹介します。
■女性ホルモンの働き
エストロゲン（卵胞ホルモン）は、女性らしいボディラインや美肌など女性にとってうれしい働きが知られています。その一方、プロゲステロンについては食欲増進、肌荒れ、イライラなどあまり好ましくない作用もあるため、どちらかといえば嫌われ者扱い。
しかし、いずれも最も重要な働きは排卵を促し、受精、着床、妊娠の維持から安全な出産をさせることです。そのために周期的にホルモンの分泌バランスが変るということを念頭に置いておきましょう。
■女性ホルモンの乱れによって起こる症状
（1）不正出血
生理以外の時に出血することを不正出血と言います。本来、生理の時期になると子宮内膜が剥がれ落ち出血が起きますが、女性ホルモンの乱れで子宮内膜を維持する力が弱くなったり、子宮内膜が過剰に厚くなったりすることで、生理の時期ではないのに子宮内膜が部分的に剥がれ落ちて出血を起こすことがあります。
（2）PMS、生理痛
PMSの原因は未だ全てが解明されているわけではありません。しかし、要因の1つとして、エストロゲンの分泌が減少しプロゲステロンの分泌が増加する排卵から生理が始まる前の時期には、セロトニンの分泌量が低下するため、気分の落ち込みやイライラといった精神的な症状が起こりやすくなるとされています。
また、生理前から生理中にかけて分泌されるプロスタグランジンというホルモンが過剰に分泌されることでもPMSや生理痛が起こるとされています。プロスタグランジンは子宮を収縮させて経血の排泄を促す働きを担っていますが、必要以上に分泌されてしまうと子宮の収縮が強くなり痛みを引き起こしてしまいます。
（3）肌荒れ・ニキビ
生理前のニキビや肌荒れ、さらにシミが濃くなったように感じるという経験は多くの方があることでしょう。これはプロゲステロンが皮脂の分泌やメラニン色素の増加を促すために起こること。ただでさえイライラしやすい時期と重なるので、ニキビなどはつい潰してしまったり、触ってしまったりしますが時期が来れば落ち着くものと割り切って優しくケアしてあげましょう。
（4）自律神経の乱れ
女性ホルモンと自律神経は相関関係にあるため、女性ホルモンのバランスが乱れると自律神経は乱れやすくなり、自律神経のバランスが乱れても女性ホルモンの乱れが生じます。自律神経が乱れると寝つきが悪くなったり、便秘や下痢、動悸や息切れ、めまいや手足の冷え、体のダルさなどさまざまな症状が起こります。
（5）乳がん
ここまでご紹介した症状はいずれもプロゲステロンやプロスタグランジンの過剰な分泌によるものですが、エストロゲンの分泌が過剰になってそのリスクが高まるのが乳がんだといわれています。
やはりエストロゲンとプロゲステロンどちらかだけが体に良いというものではなく、いずれもその分泌のバランスが大切だということです。
女性ホルモンは25〜30日という一定のリズムで分泌のバランスが保たれているもの。そのバランスを保つためには、食事や睡眠など生活リズムそのものを整えることが最も大切なことです。あれやこれやと流行りの健康法に飛びつく前に、こうした基本的なことをしっかり実践していきましょう。
【参考】
※ 日本成人病予防協会 学術刊行物『ほすぴ』
【筆者略歴】
※ SAYURI・・・長年の医療業界での経験を生かし、健康管理士、食育インストラクター、心理カウンセラーとして執筆活動や講演活動をする傍らNPO法人予防医療推進協会の理事長も務める。
【画像】
※ lenetstan / shutterstock
