米Facebookのメッセージングアプリ「Messenger(メッセンジャー)」の月間アクティブユーザー数(MAU)が10億人を超えたという。

 2008年にFacebookチャットをリリース、モバイルのFacebookアプリからFacebookチャットの機能を単独アプリにしたのが2011年。それから5年で10億人超えとなった。そもそもFacebookのユーザーが母体になっているとはいえ、「チャット」プラットフォームの勢いがわかる結果だ。

 実際、ここ数年で、仕事のやり取りもメッセンジャーで行うことが格段に増えた。ビジネスにしても、プライベートにしても、いまやメールよりも使い勝手がいいからだ。
すぐに相手につながる。返信が早い。このあたりはLINEでもお馴染みのメリットだ。

◎チャットアプリのライバルはメールではない
 チャット自体は古くからあり、Skype、Yahoo! メッセンジャーやGoogleハングアウトも、もともとチャットだ。
しかし、この手のPCベースで展開するチャットは、通信回線の高速化・大容量化、ハードの高性能化などにより、音声チャットはビデオチャットという方向に向かい、UIなども進化した。

 一方、LINEやFacebookメッセンジャーなどモバイル展開のチャットアプリは、それとはちょっと違う位置づけだ。
「ブラウザのしばりもない、PCなんて眼中にない」という感じ。
そもそも音声、動画を強化していくのは、いくらハードの進歩が著しいとはいえ、やはりスマートフォンやモバイル通信では厳しいからだ。
もちろん、LINEもFacebookメッセンジャーも通話機能もあるが、メインはテキストだ。
グループメッセージやスタンプなど、あくまで「テキストでのコミュニケーション」をベースとしてシェアを拡大してきた。

 そこは、デスクトップのチャットの対抗馬がメールであったのに対し、モバイルのチャットアプルのライバルはメールではなかったということが大きいだろう。

 これまで、チャットは「メールがいいのか、チャットがいいのか」という文脈で取り上げられることが多かった。
しかし、思い切って言ってしまえば、
メッセンジャーアプリの本当のライバルは”ブラウザ”であり、”PC”なのではないか。
PC用のメッセンジャー単体アプリが出ないことも、そう考えると納得だ。

◎プラットフォームとしてのチャット
 では、よく言われているようにチャットボットのプラットフォーム化は進んでいくのだろうか?

 今年になって、Facebook、LINE、Microsoftと、各社がチャットボットプラットフォームを発表した。人工知能をベースに、会話をしながらユーザーの課題を解決するというモデルが想定されている。話し言葉を解釈し、そこから必要な情報を取り出すという作業が必要となるのだが、どこまで現実的なんだろうか。

 人工知能で会話をする”ボット”というと、Microsoftが開発したボット「Tay」がある。しかし、Twitterで実験的に運用していたところ、一部のユーザーに洗脳され人種差別的な発言を繰り返し、実験が中断されたという。こうしたことから、まだまだ難しいと思われるかもしれない。

 しかし、自由な会話はまだ難しいのかもしれないが、現状、想定されるサービスとしては、メッセージを受け取り、自動で何かの注文(予約)を受けることであったり、問い合わせの窓口対応であったり、会話の内容をルール化できる環境で運用しようというものだ。
いまの技術であれば、ある程度可能だといわれている。

 さて、技術的に現実性を帯びてきたとなると、どのプラットフォームを選ぶかということになるが、その場合、ユーザーセグメントや母体として抱えるユーザーの数が決め手になってくる。
FacebookメッセンジャーのMAUが10億超というのは、その際に大きなアドバンテージになるだろう。


大内孝子