一流は5つの「因数分解」で悩みを消す

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■「堂々巡りする悩み」を消す思考習慣、教えます

Aさん(メーカー・営業・35歳)は悩みを抱えていました。

「今日も早起きができなかった。きっとスマホでゲームしてつい夜更かししまって寝るのが遅くなったせいだ。あぁ、1週間後の顧客向けプレゼンは不安だな……。あの緊張感、何回経験しても苦手だ。どうしよう。上司からは、新規顧客開拓せよと命じられているけど、(自分は)人見知りだし、新規開拓なんて地獄だ。おまけに部下は成長しないし、残業削減プロジェクトも迷走しているし。今日も残業だ……」

複雑な事象が絡み合って、何を糸口に解決したらいいかわからない。Aさんのような状況に陥っている人は少なくないでしょう。こういうケースでは、私は習慣化コンサルタントとして「思考を因数分解する」ことをおすすめしています。また、伸びしろの大きい有能なビジネス―パーソンほど、以下の「因数分解」式に似た解決策を試している傾向があります。

▼思考の因数分解5つのテクニック

思考を因数分解する技術には、次の5つがあります。

技術1:曖昧なもの・状況を、具体化する
技術2:原因と結果を見抜く
技術3:自分がコントロールできるか案件かできない案件かを区別する
技術4:大きいものを小さく砕く
技術5:分析をやめて解決へ行動化する

Aさんの悩みでケース・スタディしていきましょう。

技術1:曖昧なもの・状況を、具体化する

曖昧な課題は、具体化することです。プレゼンが不安と感じた時に、「あー、嫌だ、不安だ」と嘆いていても前に進みません。「ストーリー作り」「資料作成」「発表」のいずれのパートが不安なのか? パーセンテージにしてみるといいでしょう。

「発表」が80%の不安ならば、この部分を重点的に準備します。さらに「発表」するパートについても恐れていることがあるとすれば、それは何でしょうか? 自問自答してみます。

「プレゼン中に頭が真っ白になること」
「(プレゼン後の)質疑回答に即答できないかもしれないという怖さ」
「見当ハズレな内藤で同席する役員が怒るのではないかという不安」

など、思いつくままに具体的に書き出してみましょう。書かないと、不安というモヤモヤがどんどん増幅して、得体のしれない恐怖心で押しつぶされてしまいます。一方、書けば、自分の心の中が整理整頓でき、不要な怖さを持たずにすみます。悩み・不安の堂々巡りを防ぐことができるのです。

■難題「早起き」の解も簡単に見つかる?

技術2:原因と結果を見抜く

全ての結果は、何らかの原因からもたらされています。その原因は何か。さらにその原因の原因は何かとさかのぼって考えていくことで、複雑に絡み合った事象がほどけて、因果関係が次第に見えてきます。

たとえば、Aさんのように早起きがなかなかできないという場合。毎年、多くの早起き習慣に関するコンサルティングをしてきたことで分かってきたのが、早く起きるためには、早く寝なければならないということ。ごく当たり前のことですが、これが極めて大事なのです。できそうでできないのです。

では、早く寝るためにはどうしたらいいか。帰宅後に夜更かしするのをやめ、お付き合いの飲み会などを制限する必要があります。さらに、残業を減らし19時には会社を退社する習慣が必要……という具合です。早起きするには、案外、複雑な因果関係が絡んでいたのです。

複雑な因果関係は、何に対処するが重要です。どこに対策を打つか。課題の最重要項目である「センターピン」を発見できれば、少ない労力で大きな結果が出せます。センターさえ見つければ、周辺の非センターの不安要素には目をつぶることもできるかもしれません。

技術3:自分がコントロールできるか案件かできない案件かを区別する

そもそも自分がコントロールできない案件に関して悩んでも解決の糸口は見えてきません。無力感が高まるだけです。

代表例は、「部下が育たない」といったケースです。部下を今すぐに「できる人」に成長させることはほぼ不可能です。誰にもできません。成長するか否かは、上司の問題というより、部下本人の資質の問題という点が大きいのです。上司ができることは、部下がより成長するための自分のアプローチ方法です。

マニュアルづくりやテンプレート・ルールなど「仕組み」づくりで部下の成果をカバーをすることも可能でしょう。このように「自分にできること」に焦点を合わせ、できないことと区別することが重要です。

できないことに関しては、上司と言えどもへんに背負わないで、割り切ることが、心の不安やモヤモヤを増させないコツでしょう。

■小さく砕けば「悩み」も大したことない!

技術4:大きいものを小さく砕く

上司から新顧客を開拓するようにと言われた。しかし、自分にとって開拓は未経験もしくは不得手。どうすればいいかさっぱり分からない。

このような状況で立ち往生していると、先延ばしをして3カ月後、上司に「新規開拓進んでる?」と聞かれた時に「いえ、まだ忙しくて……」としどろもどろな回答になって、叱責を受けるはめになります。ここでの問題は、「新しい顧客を開拓する」というテーマは現状のAさんには大きすぎる案件だということです。

そこで、小さく砕くことを考えます。新規顧客開拓をするためにやることって具体的には何かを、やはり書き出すのです。

・どのような手順でやるのか経験者に3人聞く
・ターゲット顧客リストを1000件つくる
・電話アポをとるトークメモをつくる
・毎日電話を30件しアポをとる
・訪問してヒアリングをする
・提案書を書く
・注文を貰う
・納品する

というように、仮説でいいので書いてみます。そうすると、まずは手順を聞き出す「経験者3人」に誰を指名しようかと考えます。選ぶだけですので、それほど難しい作業ではありません。このようにして1歩1歩前に進めると、あんなに「大きく」感じたテーマが、細分化されて、対処しやすくなります。

技術5:分析をやめて解決へ行動化する

私たちが心のモヤモヤで堂々巡り状態になるのは、課題・問題の分析ばかりをやっているときではないでしょうか。こんなときは、解決志向で考ることが大切です。専門用語では「ソリューション・フォーカス・アプローチ」といいます。

問題の分析ではなく、解決策を一気に考えようという発想。つまり、残業が多いなら、なぜ多いのかをあれこれ考えずに、減らすためどうすればいいかと解決策を一気に発想する手法です。

・会議が多いので、制限時間を1時間にしたらどうか。
・社内メールは18時以降送れないようにしたらどうか。
・マネージャーが早く帰るようにしたら部下も帰れるから、マネージャーは残業禁止はどうか。

などと、考えるのです。問題の分析をずっと続けていると正解が出るまで対処ができません。決まった「正解」がない課題も多いので、とにかくアクションを起こしたほうが解決への近道ということもあります。

さて、いかがでしたでしょうか? ぜひ、あなたの悩みに当てはめて、ノートに書いてみてください。

大切なことは書くことです。書くことで、2次元、3次元に思考は深まっていきます。それを繰り返すことで、悩みに対する正しい対処が習慣化していくのです。

(習慣化コンサルタント 古川武士=文)