就任初戦のヴェローナ戦は、トッティ(右)に出場機会を与えなかったスパレッティ(左)。今後の起用法に注目が集まる。(C)Getty Images

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 ローマがついに監督交代に踏み切った。
 
 開幕からの2か月はインテル、ナポリと首位の座を争っていたものの、11月24日にチャンピオンズ・リーグ(CL)でバルセロナに1-6の惨敗を喫したあたりから調子を崩し、その後のリーグ戦6試合でわずか1勝(4分け1敗)。
 
 コッパ・イタリアではセリエBのスペツィアにPK戦で敗れてベスト8進出を逃すなど消化不良の試合が続き、リュディ・ガルシア監督はサポーターからの厳しい抗議に晒されていた。
 
 それでも、12月20日のジェノア戦で1か月半ぶりの勝利(2-0)を収め、一度は解任の危機を免れたかに見えた。
 
 しかし年明けの2試合でキエーボとミランに引き分け、首位ナポリから7ポイント差の5位まで順位を下げるにいたって、シーズン途中の監督交代に消極的だったジェームズ・パロッタ会長もついに決断を下さざるを得なくなった格好だ。
 
 新監督に招聘されたのは、5年半ぶりの古巣復帰となるルチアーノ・スパレッティ。
 
 前回、2005-06シーズンから足かけ5シーズン(09-10シーズンは開幕2連敗で早々に辞任)にわたってチームを率いた時には、フランチェスコ・トッティを4-2-3-1の最前線に据えた「ゼロトップ」フォーメーションを編み出して、セリエAで2位3回、CLで8強入り2回というクラブ史上に残る好成績を挙げた。
 
 10年末から率いたロシアのゼニト・サンクトペテルブルグでも、4シーズンで2度のリーグ優勝を勝ち取ったイタリアきっての名将のひとりだ。
 
 13-14シーズン途中(14年3月)にゼニトを解任された後は、ミランやユベントスをはじめ複数のクラブで監督就任が噂に上ったものの合意には至らず、2年近くにわたって浪人生活が続いていた。
 
 スパレッティが離れていた5年半の間に、ローマは大きく様変わりした。オーナーはセンシ家からアメリカ人のパロッタに替わり、チームの顔ぶれもほぼ一新。かつてスパレッティの下でプレーした選手で今も残っているのは、トッティとダニエレ・デ・ロッシ、そして控えGKボグダン・ロボンツの3人だけだ。
 
「まずは選手のクオリティーをこの目で確かめる必要がある。しかし時間を無駄にはできない。ライバルはすごいスピードで走っており、我々は遅れを取っている。すぐに結果を出さなければ、2か月後に私はローマ中を引きずり回されてさらしものにされるかもしれない」
 
「当面の目標は、誰が見てもこれがローマのサッカーだとわかる明確なスタイルを確立し、コンスタントに結果を積み重ねること。チームは私の要求にすぐに応えて、最初の試合からはっきりとした変化を見せてほしい」
 
 就任後初めての会見でこう語ったスパレッティだが、初戦となった1月17日のヴェローナ戦は1-1の引き分けで、流れは変えられなかった。
 
 今シーズンのローマは開幕当初、よりポゼッション志向を強めて主導権を握るというスタイルを志向したものの早々に行き詰まり、その後は重心を下げてのカウンター志向へと舵を切っていた。
 
 しかし、その攻撃はモハメド・サラーやジェルビーニョのスピードを活かした単独突破への依存度が高く、組織的な連携はむしろ低下してチームが間延びする傾向が強くなるなど、攻守両局面に問題を抱えて混迷状態に陥っていた。
 
 スパレッティはそれを受けて、今シーズンの基本形だった4-3-3から4-2-3-1にシステムを変更。攻撃的なプレースタイルを持つミラレム・ピャニッチをデ・ロッシと共にボランチに起用してゲームメイクを委ね、そのピャニッチよりも守備的ながらテクニックと運動量を兼ね備えたラジャ・ナインゴランをトップ下に上げるという新機軸を打ち出した。