深刻化する中国の大気汚染 (C)孫向文/大洋図書

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 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。現在、中国の各都市は大気汚染に悩まされています。「PM2.5」などの粒子状物質が拡散し、薄汚れた濃霧に包まれた都市の光景は、日本のみなさんもTVニュースなどで見たことがあると思います。そして中国の大気汚染は現在進行形で深刻化しているのです。

 広東省広州市に、「Yさん」という友人が住んでいます。僕は以前からSkypeを使用し、彼と漫画の話などを楽しんでいたのですが、先日連絡した際、僕がしきりに漫画の話題を振ったにもかかわらず、Yさんは全く聞く耳を持たず、広州市の大気汚染の話ばかり語っていたのです。

各地で深刻化する大気汚染

 彼は「私の家のまわりを見てください!まるで仙人が住む土地のようです!」と言って、薄暗い広州市内の写真を僕に見せました。さらに彼は市内の空気から異臭がすると語っていました。人が嗅覚で感じられるほど、空気中の粒子状物質の濃度が上昇しているのでしょう。Yさんには外出時、防塵マスクを装着することを推奨しましたが、彼は中国の防塵マスクはアメリカの「3M」社の粗悪な模造品ばかりだと愚痴をこぼしていました。

 現在のYさんは生命の危険性すら感じているため、漫画の話をするどころではなかったのでしょう。日本の清浄な空気の下に住む僕は、延々と大気汚染の話を語る彼の姿を見て、ある種の罪悪感すら覚えてしまったのです。

 広州市以外からも深刻な大気汚染が報告されています。2015年12月23日、南京市一帯がピンク色に染まりました。中国の各メディアで大々的に報道された南京市の光景はまるでCGで加工したかのような非現実的なもので、中国全土に大きな衝撃を与えました。

 科学者や気象予報士たちは「霧に夕焼けの光が写り込んだ光学現象」などと説明し、重大な問題ではないと返答しましたが、これが中国政府側の指示による弁解であるとは明らかであり、「嘘をつくな!」、「政府は我々の税金でエセ専門家を雇っている!」、といった苦情が中国のネット上に殺到しています。

「新種の汚染物質の誕生だ!早く吸おう!」、「ピンク色の空は南京市の誇りだ!」、「南京の空気を吸ったらバラの香りがするだろう」、「これは最新防空システムだ」などと、今回の現象を皮肉った書き込みも多く寄せられていました。中国国民の大半が国内の大気汚染現象に呆れているのでしょう。

 さらにTwitterに投稿された情報によると、最近の北京市では屋内ですら数時間で防塵マスクのフィルターが灰色になってしまうほど、大気汚染が進行しているそうです。中国国内で工業化が進む限り、今後も似たような事例が発生すると思います。

「大気汚染が進み、人々がマスクを到着しなければ外出できない」というのは、SF小説や映画でよくある設定ですが、中国ではそれが現実化しつつあります。ネット上に「中国の都市は映画『バイオハザード』のロケ地に使える」という書き込みがありましたが、言い得て妙だと思います。Yさんのみならず、中国在住の僕の友人たちは、みな大気汚染による健康悪化を不安視しています。

 現在、多くの中国国民が国外脱出を考えており、近い将来、「大気汚染難民」たちが日本をはじめとする周辺諸国に押し寄せる可能性はあると思います。実際、中国では2月8日は旧正月にあたるため、その時期は連休シーズンに突入します。2016年の2月は空気清浄機を購入するために、多くの中国国民が日本に殺到することが予想されます。

 中国共産党政府が強行的に進めた工業化の結果、国内には大気汚染が頻発するようになりました。この現状に対し、中国政府の役人たちは環境対策を考えるどころか、国外逃亡を画策したり、NGO団体がドイツの「フォルクスワーゲン」社を提訴するなど、海外企業に責任をなすり付ける始末です。

 日本もかつては工業化により様々な環境問題が発生しましたが、政府や企業側の努力により大半が解消しました。この日本側の対応は現在の中国のものとは対極的です。今後中国の大気汚染問題を解消するためには、共産党政府が退陣し、国民の意思が反映される民主的な政府が樹立することが必須条件となるでしょう。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)

(構成/亀谷哲弘)