高校野球が始まって100年。横浜・渡辺元智監督の勇退や、1年生のスーパースターの登場で、地方大会から話題を集めた第97回全国高校野球選手権大会が今日から開幕する。

 実力ナンバーワンの優勝候補筆頭は東海大相模(神奈川)だ。エース左腕の小笠原慎之介(3年/左投左打)は最速150キロの速球にチェンジアップも冴え、神奈川大会では27イニングを投げて30奪三振。防御率0.00と圧倒的な力を見せた。

 右腕の吉田凌(3年/右投右打)も140キロ台の速球と切れ味鋭いスライダーを持ち、昨夏の神奈川大会決勝で20奪三振をマークした実力者。この他にも2年生の北村朋也(右投右打)も最速145キロを誇り、3人の強力投手陣を擁するのは心強い。神奈川大会では小笠原と吉田が交互に先発したが、甲子園ではどんな起用をするのか、門馬敬治監督の采配も見逃せない。

 野手も通算35本塁打の杉崎成輝(3年/遊撃手/右投左打)、主将の長倉蓮(3年/捕手/右投右打)、4番の豊田寛(3年/外野手/右投右打)ら、昨年からのレギュラーが5人残り、経験も豊富。昨年夏は初戦敗退に終わっただけに、聖光学院(福島)との初戦(大会7日目・第1試合)がカギを握る。

 東海大相模と並び、優勝候補に挙げられているのが、センバツ優勝の敦賀気比(福井)。投打で注目を集めるエースの平沼翔太(3年/右投左打)、センバツで史上初となる2打席連続満塁本塁打を含む、3本塁打の大会タイ記録を作った松本哲幣(3年/外野手/右投右打)らを中心に実力、経験とも申し分ない。

 ただ、追われる身となった今回、福井大会決勝で延長10回サヨナラ勝ちと苦戦したように、「勝たなければならない」プレッシャーとの戦いになる。相手よりも己との戦いになるだろう。それを乗り越えれば、春夏連覇も見えてくるのだが......。

 この2強を追うグループは実力校が揃い大混戦。仙台育英(宮城)はフォークが武器のエース・佐藤世那(3年/右投右打)に、プロ注目の平沢大河(3年/遊撃手/右投左打)と投打の軸が揃っている。センバツでは優勝した敦賀気比に1−2と接戦で敗れているだけに、リベンジを果たしたいところだ。

 昨年夏、今春と2大会連続ベスト8の高崎健康福祉大高崎(群馬)はエース左腕の川井智也(3年/左投左打)、プロ注目の捕手・柘植世那(3年/右投右打)、センバツで本塁打を放った主砲の柴引良介(3年/右投右打)ら、昨年からの経験者がチームを引っ張る。代名詞となった"機動破壊"は盗塁だけではなく、走塁で勝負。相手の隙を突く走塁が出てくると、チームも一気に乗ってくる。

 関東一(東東京)は、ナイジェリア人の父を持つ俊足強肩のオコエ瑠偉(3年/外野手/右投右打)、東東京大会で打率.684と打ちまくった主砲の伊藤雅人(3年/遊撃手/右投右打)を中心に足を絡めた攻撃が持ち味。さらに、3投手による継投がはまれば上位進出も見えてくる。

 センバツ8強で東海地区無敗の静岡は、核弾頭・鈴木将平(2年/外野手/左投左打)、静岡大会で3本塁打を放った内山竣(3年/外野手/左投左打)、主砲の堀内謙伍(3年/捕手/右投左打)と役者が揃っている。2年生エースの村木文哉(右投左打)はフォークを得意球としているが、スタミナ面にやや不安を残す。

 中京大中京(愛知)は最速143キロの上野翔太郎(3年/右投右打)、高校通算44本塁打の主砲・伊藤寛士(3年/捕手/右投右打)を中心に力のある選手が揃う。

 また、初出場ながら注目を集めているのが、大阪桐蔭を破った大阪偕星学園。チーム打率.379の強力打線に加え、光田悠哉(3年/左投左打)、姫野優也(3年/右投右打)の二枚看板が安定。大阪大会で次々と強豪校を破った勢いを甲子園に持ち込みたい。

 同じく近畿勢では、天理(奈良)と智弁和歌山も虎視眈々と上位進出を狙っている。天理は主砲の坂口漠弥(3年/一塁手/右投右打)と、俊足好打の舩曵海(3年/外野手/右投左打)のプロ注目の打者を抱えている。

 一方、智弁和歌山は左腕の斎藤祐太(3年/左投左打)が安定感を増し、野手も昨年春のセンバツで本塁打を放った山本龍河(3年/外野手/右投左打)と、身長184センチ、体重98キロのがっちりした体躯から強烈な打球を放つ春野航輝(3年/一塁手/右投右打)らを中心に破壊力がある。監督として甲子園歴代最多となる63勝を挙げている名将・高嶋仁監督の采配にも注目だ。

 春夏連覇以来5年ぶりの登場となる興南(沖縄)は優勝投手・島袋洋奨(現ソフトバンク)を彷彿とさせる2年生トルネード左腕・比屋根雅也(2年/左投左打)を中心にまとまる。3月には沖縄遠征にやってきたセンバツ出場校をことごとく撃破しており、波に乗ると怖い存在だ。

 そして、なんと言っても今大会注目ナンバーワンは、早稲田実業(西東京)の1年生スラッガー・清宮幸太郎(一塁手/右投左打)だ。西東京大会では6試合で打率.500、10打点と、堂々の成績を残した。投手陣に不安を残すが、あまりの"清宮フィーバー"ぶりにスタンドが早実を後押しする雰囲気になるだろうし、快進撃の可能性もある。

 高校野球100周年、世界のホームラン王・王貞治氏の始球式ではじまる特別な大会。はたして、どんなドラマが生まれ、どんなスターが誕生するのか。開幕から目が離せない。

田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka