Apple Watchアプリの開発でわかったこと
発売から数週間のあいだに得た知識。
Apple Watchアプリの開発にあたっては、全く新しいインターフェースに慣れる必要性があり、(一部の特権階級を除いて)ほとんどの人が実物に触れられなかった。このことから、最先端のアプリを開発するのは今もなお難しい。
それでも開発者の挑戦は続いているが、発売から数週間が経って、この新製品でアプリがどのように動作するかが確認され、フィードバックが得られるようになったところだ。
そのうちの主な一人はInstapaperの開発者でTumblrの創業者、マルコ・アーメントだ。彼はApple Watch向けポッドキャスト・アプリ、Overcastの最初のバージョンを実物で試したうえで、迅速な改善を行った。
以下に述べるのは、アーメントや彼のような開発者によって、これまでに判明したことだ。
ソフトウェアの検討
事前に分かっていたことだが、iPhoneアプリのサイズを縮小するだけのやり方では決してうまくいかない。「iPhoneのインターフェースや枠組みをApple Watchに無理やり押し込もうとするのは考えが足りず、悪あがきというものです」とアーメントは述べている。「そうではなく、実物のApple Watchに即した設計が必要です」。
バージョン2.0のOvercastでは、ユーザーにとって本当にすぐに知りたい情報が検討された。すなわち、次にアップされるポッドキャストや、それを変更できる機能だ。アーメントによれば、シンプルになったユーザー・インターフェースは、最初のバージョンよりもずっと機能的だという。
「既存のiOSアプリから『ミニ版』を作るのはやめましょう」。The Working Groupのシニア・モバイル・プログラマー、ブライアン・ギラムもそう述べている。Apple Watch上のスペースはiPhoneよりも小さく、貴重なものだ。アーメントもギラムも、瞬時に情報が読めるような、適切な種類・サイズのフォントが必要だと強調している。
ハードウェアの制約
ニック・リーとマーキヤン・マツェクはApple Watchの「ラグの多さ」、すなわち待ち時間が長いという問題を指摘した。あるアプリのユーザー・インターフェースの呼び出しが増えるにつれ、アニメーションを動かすのは困難になり、問題視されるようなラグが増えることになる。
アーメントは、Apple Watchの動作が遅れるのはアプリ開発者にとって重大な問題だとの認識を強め、「WatchKitのロード時間は一貫性に欠けており、解決が難しい」としている。このため、アップルのスマートウォッチ・アプリ用のソフトウェア・フレームワークであるWatchKitによる障害を減らそうと、彼はアプリの動作方法を根本的に再構築した。
どうやらこの問題は徐々に解決しそうだ。WatchKitでは改善と最適化が大きく行われるはずであり、いずれはApple Watchのみのネイティブ・アプリも運用可能になるだろう。だが、さしあたって今のところは、開発者がコードを単純化するしかない。
独自の機能性
Apple Watchは他のどの端末にもないインタラクションをもたらしてくれる。開発者の任務は、同製品の独自機能を最大限に活用することだ。「(最初のOvercastアプリは)使いやすいとは言いがたく、iPhoneを取り出す方がマシだという代物でした」とアーメントは言う。
iPhoneよりも使いやすいアプリを作る。これは挑戦だ。同じアプリからの通知がiPhoneとApple Watchに届いたとしても、画面のサイズ、身につけている場所、入力オプションはそれぞれ異なる。
「Apple Watch 用Wunderlistに関して最も素晴らしいのは、iPhoneで操作しなければならないような状況でも、ハンズフリーな利用ができることです」。タスク管理アプリWunderlistのデザイン部門主任、ベネディクト・レーネルトはこう述べている。
スマートウォッチがもっと日常生活に馴染むようになれば、ソフトウェア開発者はアプリをどのように動かすべきかがわかるようになる。われわれはまだスタートしたばかりだ。アーメントはこのようにまとめている。
すべてのiPhoneアプリが有用なApple Watch版アプリにはなれないし、またそうする必要もありません。逆に言えば、ここに新たなチャンスが多くあるということです。魅力的なApple Watchアプリが、iPhone上で必ずしも魅力的ではないとも言えるのです。
つまり、Apple Watchに最適化したアプリの魅力が、Apple Watchそのものの購入動機になるかもしれないということだ。
画像提供:Apple, Marco Arment and Wunderlist
David Nield
[原文]