5月27日に歌手のASKAと一緒に愛人とされる栩内(とちない)香澄美が逮捕された。二人の背後関係は、現在も様々な憶測が飛び交っているが、このニュースを見ていて、女性のみなさんは、自分と覚せい剤が無縁だと思っていないだろうか?

実は今日の日本では誰もがドラッグを使った犯罪の当事者になる可能性があるのだ。なかでも女性はドラッグと相性が特にいい。その理由とともに覚せい剤をとりまく現状について紹介したい。

善良な市民に広まる覚せい剤

昨年、覚せい剤(使用や所持)で逮捕されたのは1万909人。そのうち暴力団関係者は6,096人(全逮捕者の55%)で、残りは裏社会の人間ばかりではなく普通の人たちである。現在男女別統計が出ている2012年では、2,268人の女性が逮捕された。未成年も99人含まれている(平成25年版『犯罪白書』より)。この数値は氷山の一角で、実際にはさらに10〜100倍の使用者がいるとも言われている。また、逮捕者の中には、高校生や中学生までいて、もはや「誰がやっていても不思議ではない」のが実情なのだ。

違法薬物が簡単に入手できる!?

覚せい剤には「シャブ」「エス」「スピード」などの俗称がある。また、使用すると冷感を覚えることから「冷たいの(アイス)」と呼ばれる。見た目は氷砂糖を砕いたような細かい半透明の結晶の欠片である。効果は一般的に「眠くなくなって興奮する」とされている。

危険な薬物をいったいどうやって手に入れているのか。最近ではインターネット掲示板、SNS等で「キメ友募集」「渋谷でP(パケットやポンプの意味)」など、覚せい剤を意味する隠語を使って打診したり、取引を持ち掛けてくる売人(プッシャー)から購入するパターンが大半。ほかには友達ネットワークで直接売人を紹介してもらうこともある。

数年前には都内の高級住宅地で主婦の覚せい剤利用者が急増した。プッシャーの携帯電話に連絡を入れ、指定の場所に金を置き、指定された覚せい剤の隠し場所を教えてもらって受け取る。自動販売機の裏、公園の植え込みなど、様々な場所に巧妙に隠されている。主婦たちは子育ての合間に受け取りにいったという。彼女たちは「家庭」というリスクがあるため口が堅く、金払いもよい。主婦の間で口コミだけで広まり、2008年にイラン人プッシャーが逮捕されるまで、麻布や白金などで延べ2万人に販売され、約2億円の売り上げがあった。

プッシャーたちは、覚せい剤を1グラム4〜5万円で販売している。1回当たりの使用量は0.02〜0.03グラムで、金額としては800〜1,500円程度。意外にリーズナブルな側面もある。だが、客が女の場合、金以外の対価としてプッシャーがセックスを要求してくることがかなりの確率である。女性も覚せい剤を手に入れるためなら断れないのが実情である。というのもそれほどまでに覚せい剤とセックスの相性がいいからだ。

一度使うと“気持ちいい”が深く刻まれる

覚せい剤を使用した女性たちが最初の動機として挙げるのは、ダイエットや受験勉強など。覚醒効果や食欲減退などの効能が発揮される結果なのだが、一番ポピュラーなのがパートナーにすすめられること。元アイドルで、覚せい剤取締法違反で逮捕された酒井法子も同様の動機を挙げていた。

男女で覚せい剤を使用する場合には、性行為とセットで使用する、通称「キメセク」が多い。覚せい剤とセックスの組み合わせは、脳の中枢神経に強く作用して過剰に「快楽」を使用者に与えてくれるからだ。ただし、キメセクは強烈な快楽をもたらすと同時に脳を壊してしまう。快楽物質を無理に供給したことで脳の欲求を司る部分に負担がかかって破壊されるからだ。キメセクをしている当人たちは、この状態を「体に刻まれたからやめられない」と言うのだが、実際には脳が壊れてしまった状態なのである。

覚せい剤の効果が切れた時に襲いかかる異常な倦怠感、眠気、意欲低下といった副作用に、壊れた脳では耐え切れない。睡眠、食事、タバコや酒を我慢する「意思の強さ」とは根本的に原因が違うからだ。ブレーキの壊れた車で急停止しようとしているようなものなのだ。

一度でも体に入れてしまうと決して取り出すことのできない「悪魔の薬」ともいわれる覚せい剤。薬物中毒者は多くが犯罪者となって逮捕されたり後遺症に悩まされ、社会復帰不可能な状態になる。待ち受けているのは例外なく破滅でしかない。こんなものを快楽と引き換えにするには釣り合うはずがないのだ。

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(丸山ゴンザレス)