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新しい年度が始まる春は、転勤などで引越をする人が多い季節だ。いま住んでいるマンションやアパートなど賃貸住宅の契約を解除して、別の土地へ移る人もいるだろう。そのなかには、賃貸契約がまだ続いていて、「途中解約」しなければいけない人もいるかもしれない。

では、契約期間中に転居する場合、借り手には違約金などのペナルティが生じるのだろうか。解約時にトラブルにならないよう、不動産会社に確認しておくべき点はあるのだろうか。瀬戸仲男弁護士に聞いた。

●契約期間の定めが「ある場合」と「ない場合」がある

「ここでは、一般的な『普通借家契約』についてお話します。普通借家契約は、『契約期間の定めのない普通借家契約』と『契約期間の定めのある普通借家契約』の区別があります」

このように瀬戸弁護士は切り出した。賃貸契約の期間が1年や2年など限定されている場合と、そうでない場合があるということだ。

「契約期間の定めがない場合、借りた側(賃借人)は、解約の申入れをいつでも行うことができます。この場合、解約の申入れをした日から3カ月を経過すれば、借家契約は終了します(民法617条1項2号)。つまり、申し入れをしてから、3カ月分の賃料は支払わなければなりません」

申し込んでから3カ月間も賃料を支払うとなれば、解約の申し込みもかなり計画的に行わなければならないだろう。もっと短くはならないものなのだろうか?

「もし仮に、3カ月ではなく1カ月で終了させたいと希望するのであれば、契約書にそのように定めておく必要があります。

一方、貸す側(賃貸人)が、『契約期間の定めのない普通借家契約』を解約する場合は、6カ月前に申し入れをする必要があります(借地借家法27条1項)。

しかし、貸し主から解約する場合、6カ月を経過すれば無条件に契約が終了するわけではなく、解約を要求するための『正当事由』が必要ですし、立退料を用意しなければなりません(借地借家法28条)」

●「契約期間の定めがある場合」はどうなる?

では、契約期間が限定されている賃貸契約の場合は、どうなのだろう?

「契約期間の定めのある普通借家契約の場合、期間内に解約する権利(中途解約権)を契約書で認めているか否かで、事情が異なります。

中途解約権が認められている場合は、さきほど説明した『契約期間の定めのない普通借家契約』の場合と同様です。つまり、契約書に『1カ月前までに解約の申し入れをすること』と書かれていれば、解約申し入れから1カ月で契約が終了することになります。

これに対し、中途解約権が認められていない場合は、原則として、期間内の解約はできません。期間の途中で退去しても、期間満了までの賃料を支払うことになります」

つまり、「期間の定めのある普通借家契約」の場合、契約書に「中途解約」の条項があるかどうかが重要というわけだ。

なお、賃貸契約の種類としては、普通借家契約のほかに、契約更新ができない「定期借家契約」というものも存在するが、これも「期間の定めのある借家契約」の一つなので、中途解約権があるかどうかが大きなポイントになるということだ。

この「中途解約権」については、個々の契約によって異なるので、契約時はもちろん、解約するかどうかを考える際にも、しっかり契約書を確認したほうがよいだろう。

(弁護士ドットコム トピックス)

【取材協力弁護士】
瀬戸 仲男(せと・なかお)弁護士
アルティ法律事務所代表弁護士。大学卒業後、不動産会社営業勤務。弁護士に転身後、不動産・建築その他様々な案件に精力的に取り組む。我が日本国の伝統・文化をこよなく愛する下町生まれの江戸っ子。
事務所名:アルティ法律事務所
事務所URL:http://www.arty-law.com/