3月29日より公開される映画『ダブリンの時計職人』では、職も家も失ったアイルランドの男性が描かれている。出戻った故郷で女性に恋をするものの、無職で車上暮らしであることを言い出せない主人公フレッド。職を失うことが人間の心に与える変化、そして人生でつまずいたときに人はどうやって立ち直っていくのかを考えさせられる、深いテーマの映画だ。

職を失うことは恋愛にどんな影響を与えるのだろうか。無職の彼と付き合った経験のある女性に話を聞いたところ、付き合う相手によって明暗が分かれるようだ。

    「そのうち起業する」が口癖の彼と別れたFさんの場合

Fさんが学生時代から10年交際した彼は、実家住まいで時々バイトをする生活。ネットビジネスに興味を持ち「そのうち起業するから」が口癖で、穏やかな彼だったが何度言っても就職だけはしようとしなかった。Fさんは親や友人に「そんな男はやめたら?」と忠告され続けても彼から離れなかったが、30歳の折、ついに別れを告げた。

そうなって初めて彼も本気で焦ったのか、半年後「正社員になった、復縁したい」と連絡をしてきた。まだ情がある、と語るFさんだが、「でも、たぶんまだ試用期間(笑)」とのことで、しばらく様子を見てから考えるらしい。

冒頭の映画でも「“そのうち”何とかなる」と言った無職の若者に、主人公が「光陰矢の如しだ」と説く場面があるが、どんなに好きな相手でも、“そのうち”が8年近くともなると、さすがに信じ切れなくなるのかも……。

    無職だけど優しくて家事のできる彼がいたYさんの場合

広告代理店に勤めるYさんが、大学で知り合って付き合った彼はとても優秀な人で、「第一希望の企業に受かるまでは就職しない」と断言していた。結局、1年以上働かずにYさんの家に居候をし続けたが、彼はとても優しく、忙しいYさんのために家事をすべてこなしてくれていたので、“ニートとしての働き”にはYさんも不満がなかったという。

そして翌年、彼は見事、一流企業へ就職が決定。「将来が不安で別れることも考えたけど、我慢して良かった(笑)」と今は思っているそうだ。

    無職だからこそ交際を深められたOさんの場合

逆に無職が恋愛に功を奏した例もある。モテるのに5年近く恋ができなかったIさん(当時29歳)は、ある日ピンとくる男性に出会った。でも彼は当時、再就職先を決めかねており無職。年齢的にも少し不安には思ったものの、それよりも「絶対この人だ!」という直感が勝ってしまったそうで、交際をスタート。

半年後、彼は無事に再就職。激務になり頻繁には会えなくなったが、今も円満だという。「交際当初にたっぷり時間の余裕があったからこそ、お互いを深くまで知り合えた」と語るIさん。ハードワーカーも少なくない日本、プライベートの充実という意味では、「しばらく働かない期間があること」も、長い目で見れば有効なのだろう。

厳しい時代、職を失う可能性は誰にでもあり、本人だけの責任ではないこともある。映画でも「責められたり、邪見にされても、人生は終わりじゃない」という台詞があるが、つまずいたら、自力で立ち直るしかないのが人生。そのときに恋愛や人間関係が与えてくれる力はとても大きい。だからこそ、無職の男性と付き合うときは「諦めず無職から抜け出していける人かどうか」を慎重に見極めるべきといえそう。

(文=外山ゆひら)

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