遠藤保仁 (Photo by Tsutomu Kishimoto/PICSPORT)

【後半26分、遠藤保仁が蹴ったPKはヨルダンGKに弾かれ、日本は絶好の同点機を失った。結局そのままタイムアップ。名手らしからぬ失敗を本人はどう振り返るのか。そしてこの試合の敗因をベテランはどう分析したのか】

ミックスゾーンの鉄柵が倒されそうになるほど遠藤保仁の登場に報道陣が群がった。本人はいつもどおり淡々と丁寧に答えていく。答えにくいはずのPKの失敗についても、感情をほぼ表に出さずに語った。

遠藤は報道陣の質問にいやな顔を見せず11分間にわたって答えた。だが、やはり本当は動揺も後悔もあったのだろう。しきりと髪を触る。デズモンド・モリスの「サッカー人間学」によれば、髪を触るのは誰かに頭をなでてほしいという気持ちを表しているという。

▼遠藤は、PKについて「自信を持ってあそこに蹴りました」とコメント

(撮影:フォート・キシモト)


「PKは自信を持ってあそこに蹴りましたし、コースもそんなに悪くなかったので、読まれていたのかと思いました。レーザービームを当てられていたのはわかっていましたが、影響はなかったと思います」

▼同点のチャンス…遠藤が蹴ったPK

(撮影:岸本勉/PICSPORT)


そしてもし自分がPKを決めても「ドローになるかというのは、まだ時間もありましたし」わからないと考えていたという。

遠藤がこの試合の反省点として挙げたのは、わかっていたのにやられてしまったことだった。

「点を取られても動揺というのはないと思いましたが、多少前掛かりになるというのはありましたし、そこでカウンターを食らわないようにと気をつけていました」

「あそこは我慢しながら、リスクをそんなに冒すという時間帯でもないですし、最低でも1点で抑えておかなければ苦しくなる」

さらに、いつもの試合とどれほど違ったのかという点についても言及している。

「今日に限ってはアイデアが足りなかった」「ミドルシュートは少なかったと思いますし、打つタイミングはあった」

ではなぜそんなことが起きたのだろうか。遠藤が漏らしたこの台詞がその要因を一番的確に表している。

「いろいろプレッシャーはあったし、次も同じようなプレッシャーがかかると思いますが、今日の教訓が生きればいい」

日頃、何のプレッシャーもないような顔をしてプレーしている遠藤でも、思わずこう語ってしまう試合だったのだ。日本の敗因は、歴戦のプレーヤーといえども足が固くなる重圧だった。慎重すぎる戦いは、そのせいだと考えると、つじつまが合うのである。

ワールドカップ予選の魔物が、再び日本の前に立ちふさがってきた。


▼勝利を手にした、ヨルダンのサポーター

(撮影:岸本勉/PICSPORT)

▼超満員となった、スタジアム

(撮影:フォート・キシモト)

▼注意する警察がいなくなった途端、金網によじ登ったサポーター

(撮影:ロイター)