奮闘むなしく準決勝で敗退した侍ジャパン。次回大会でのリベンジを期待したいところだが……

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ドミニカ共和国の初優勝で幕を下ろした第3回ワールドベースボールクラシック(以下、WBC)。3連覇を目指した侍ジャパンは準決勝で惜敗したものの、第2ラウンドの台湾戦で手に汗握る逆転劇を演じるなど、今大会も熱いドラマを見せてくれた。

メジャーリーグ評論家の福島良一氏が今大会を総括する。

「印象的だったのは、オランダやイタリアなどヨーロッパの野球後進国の躍進。彼らの活躍は“野球不毛の地”といわれる地元でもメディアが取り上げ、注目を集めました。ゆっくりではありますが、着実に大会の裾野が広がっていると思います」

大会を主催するメジャーリーグ(以下、MLB)側の「競技の世界的普及」という目的は、少しずつ実を結びつつあるように見える。

しかし、肝心の野球の母国・アメリカでのWBC人気は低迷を続けている。ほんの一部の試合を除けば観客席はガラガラ。また、視聴率も前回を大きく下回るなど、今回のWBCも、アメリカではまったく注目されていなかったというのが実情だ。

第1回WBC開催のため日本側の渉外担当としてMLB側と交渉し、大会の企画運営にも携わったコウタ氏はこう語る。

「アメリカの野球ファンはMLBのペナントレースにしか関心がないし、運営側も盛り上げようという気がない。予選や第1ラウンドの組み合わせも変じゃないですか。どうしてキューバが日本まで来て予選を戦い、オランダが台湾で戦うのか。結局、ビジネス目的のため、日本とアメリカが決勝ラウンドで戦うように仕組まれている。これじゃ人気は出ない」

いくら日本のメディアが世界一決定戦とあおっても、結局は花相撲的な大会ということ。さらにコウタ氏が続ける。

「今から約10年前、MLBではイチローや佐々木主浩の活躍によって放映権料やスポンサーが入り、『日本野球と絡めば金になる』と考えるようになっていた。そこで彼らは3つの目標を立てたのです。巨人・松井秀喜のヤンキース入団、ヤンキースの開幕戦の日本開催、さらに日本を巻き込んで、野球の世界大会(WBC)を開催すること。いずれも実現しました。ただ、この経緯からわかるように、WBCの本来の目的は野球の普及ではなく、MLBの金儲けなんです」

無論、MLBの金儲けには付き合えない、との批判は当初からあった。第1回大会前から日本側は分配金や開催時期をめぐってMLB側と対立し、今大会前はプロ野球選手会が状況改善を求めてボイコットまで示唆した。今後、そうした日本側の主張をMLB側が受け入れることはあるのだろうか。

「それはない。分配金に関して、赤字が出た場合はMLB側が負担するわけで、収益が上がったから分配比率を上げろというのは通らない。また、開催時期の変更はもっと現実性が低い。メジャーリーグの歴史を考えても、シーズンを動かしてまでWBCをやるなどあり得ない」(前出・福島氏)

こうなると次の大会で、日本がボイコットする可能性も十分にある。そうなれば、第4回WBCはどうなってしまうのか。

「開催を中止するしかない。そもそも、あの大会は興行として体をなしておらず、完全にジャパンマネー頼み。日本代表が出なければ成立しません。一方で、日本のテレビ局やスポンサーも、WBCが儲からないことを、この3大会で完全に知ってしまった。過去2大会は日本が優勝したから、各企業が支払った莫大なスポンサー料はある程度還元されたと思いますが、今大会では確実に大損ですよ。ですから、日本代表が出る出ないにかかわらず、4年後、こんな大会に日本の企業が大金を出すことは考えにくい」(前出・コウタ氏)

すでにWBC消滅のカウントダウンが始まっている?

(取材・文/コバタカヒト)