■ACL組で唯一外国人枠を埋めている柏

ACL第1節でベガルタ仙台、浦和レッズ、サンフレッチェ広島が揃って「討ち死に」したことで、あらためてJクラブのバジェット、選手層の問題が指摘されている。日本勢で唯一、初戦に勝利した柏レイソルは、ゼロックス杯こそ落としたものの、J1第1節にも勝ち、しっかりと実を獲っている。他の三クラブとどこがちがうのかは一目瞭然。外国人枠を埋めているのだ。

昨季もネット バイアーノがよければもっと上の成績を出せたと思うが、今季は最後の一枠にクレオを持ってこれたことが非常に大きい。プレッシャーがかかる二試合、中国アウエー0-1勝利のACLで決勝点、J1開幕戦でも2得点。これだけでかなり元を獲っている。

柏の予算規模はJ1でも決してトップクラスというわけではない。ベガルタ仙台やサガン鳥栖のように人件費がひと桁億円台ではないにしろ、浦和、名古屋グランパス、鹿島アントラーズの「赤御三家」には及ばない中堅クラスで、しばしば親会社の資金力が云々される大宮アルディージャとも少し差がある。
ではどこがちがうのか。それはもちろん内訳で、「集中と選択」という言葉がこれ以上似合うクラブはほかにないかもしれない。

■クレオの年俸は推定一億円

マルチェロ・リッピ監督率いる中国最大級のクラブ広州恒大はムリキ、コンカに加えてルーカス・バリオス、さらにエウケソンを獲得したことでクレオが余剰戦力となり、期限付き移籍に同意したが、もちろんアジアレベルでは突出したフォワードであることにまちがいはない。昨季のACLラウンド16にて、広州はFC東京にタレントの差を見せつけ、1-0で勝利した。その決勝ゴールを叩きだしたのがクレオだった。

このスーパーなフォワードの年俸は推定一億円(※日刊スポーツ調べ)。FIFAクラブワールドカップでも頼もしさを感じさせたジョルジ ワグネル、レアンドロ ドミンゲスのコンビと同額で、ネルシーニョ監督にも、億までは行かないが、日本のサッカー界としてはかなりの高年俸を支払っている。選手、スタッフの人件費をブラジル人(クレオはセルビア国籍を取得しているがブラジル出身)に集中させているところがポイントだ。彼らはメンタル的にも萎縮することがなく、国際大会でも堂々としていられることができ、チームを支える柱になれる。

代表選手や欧州各国リーグ1部の選手に遜色ない力を持ちながら、Jクラブの財力でぎりぎり維持できるタレントを獲得できれば、それに越したことはない。一〇億円クラスの選手を引っぱってくる広州の補強も、チェルシーやマンチェスター・シティ的な意味で最高だが、Jの身の丈経営のなかでよく工夫したという意味で柏の補強も最高だと言っていい。

■準代表級の選手が名を連ねる

もともと「柏は日本代表に選ばれないがいい選手」「実力はあっても先発での出場機会がない選手」を他クラブから獲得してはじっくりと個の力を引きだしてきっちり戦力にしてきたクラブで、すべてに於いて無駄がない。ACL常連となりつつあるいま、そのスケールをアジア基準に引きあげて、賢いお金の使い方をしている。

「準代表級」という点で申し分ないのがセンターバックだ。代表Aキャップはあるものの、今野泰幸と吉田麻也の牙城を崩すには到っていない近藤直也と、ロンドンオリンピックでオーバーエージの吉田の相方を務めた鈴木大輔がコンビを組んでいる。

ロンドンオリンピック代表チームは前線に比べて守備陣がJリーグに出場する機会が少なく、成長の遅れが懸念されていたが、五輪本大会では鈴木がしっかり堅守の一端を担っていた。J1でも、昨季はアルビレックス新潟のディフェンダーとして横浜F・マリノスに次ぎ広島に並ぶ失点数2位の守備を実現。同じ新潟の石川直樹もACL出場の仙台に移籍して「出世」した。それだけの評価がついている選手であっても市場価格はリーズナブルで、近藤とふたり合わせても年俸は今野の半分程度だ。