ヨーロッパの球界関係者にとっての悲願が、ついにオランダの地で叶うことになりました。MLBのジェイソン・ホロワティ氏が現地時間の昨日、オランダ・アムステルダム市内で記者会見を行い、2014年(または2015年)に同市のホーフドループ地区において、MLB公式戦を3試合実施すると正式に発表しました。「アムステルダムシリーズ」と銘打たれたこのシリーズは、総額1200万ドル(約10億9000万円)の資金を投下して建設される、フーフトクラッセのクラブ「ヴァッセン・パイオニアーズ」の新本拠地スタジアムで開催されます。

 ホーフドループのシティホールで行われた記者会見では、オランダのテレビやラジオにおける国民的コメンテーター、アンディ・ホートカンプ氏が司会を務めました。自身もかつて野球とソフトボールをプレーしていたという彼は、同国で最大人気を誇るサッカーの試合でレポートを務められることを嬉しく思う一方、自身の夢は今回の公式戦でマイクを持つことによってのみ叶う、と語りました。オランダ王立野球・ソフトボール連盟(KNBSB)のテクニカルディレクターであり、現役時代はヤンキースなどで内野手として活躍したロバート・エーンホーン氏は、今回のプロジェクトについて次のように語っています。

 「オランダでの3試合のMLB公式戦の開催は、我が国における野球の地位を高めることになるだろう。そしてスポーツ界全体から見ても、今回のプロジェクトはまさにファンタスティックなものとして受け止められると思う。アムステルダムとホーフドループの両都市、KNBSB、そしてオランダ五輪委員会が手を組んで進めてきた、2年越しの計画なんだからね」

 ホーフドループに建設される新スタジアムは、全部で6面(野球場2面、ソフトボール場2面、多目的フィールド1面、ビーボール用グラウンド1面)にも及ぶ巨大なコンプレックスの中に建てられます。クラブハウスを併設したスタジアムは、普段はバックネット裏に600人を迎え入れますが、仮設スタンドを内外野に増設することで、最大3万人の観客を収容できる構造になっています。今回のスタジアムは、2014年2月までには建設を終えるよう市から求められていますが、これはKNBSBが主催するジュニア・シニアの大会に使えるようにするためとのこと。「パーク21」と名付けられたこの建設プロジェクトが、非常に重要なものと受け止められていることが伺えます。

 ところで、今回建設されるスタジアムがこれほどの人数を動員できるつくりになっているのは、MLB側からの要請であるとのこと。アムステルダムシリーズの開催に引き続き、長期的にはWBCの本大会(あるいは予選)をこのスタジアムで行う計画もあるとのことです。さらに、この大規模コンプレックスはKNBSBによるオランダ代表関連の活動にも、主に選手育成の目的で用いられるとのこと。KNBSBでは、このパーク21をオランダ代表による合宿の新たな拠点とする意向です。

 イギリス・ロンドンからオランダ入りしたホロワティ氏は、MLBがオランダを選んだ理由として、次のように語っています。「MLBは世界中の人々に野球の魅力を伝えるために、このゲームのテリトリーを広げようとしている。その目的を果たすうえで、オランダはまさに適任だと判断した。招致計画の緻密さはもちろん、2011年ワールドカップでの活躍のような、選手や指導者たちの国際舞台における活躍という意味でもね」

 2011年のオランダの立候補以来、招致合戦を繰り広げてきたイタリア・ローマに対し、MLBが落選を伝えたのと同じ日、アムステルダムの日刊紙であるパロール紙は、このニュースを即座にレポートしました。また、アルゲメーン・ダグブラードやNRCハンデルスブラードといった他の新聞社も、ヨーロッパ初の快挙を待ちわびたかのように伝えています。

 オランダにおけるアメリカ4大スポーツの情報誌「USAスポーツ」でも、ザンダー・ヴァンルーベック記者が「いつになったらゴーサインは出るのか」という記事を書いていたように、現地でも少なからず期待が高まっていた「アムステルダムシリーズ」の開催。やっと開催が決まったこの3試合が、オランダをはじめとするヨーロッパ野球全体にとって、大きな起爆剤となることを祈るのみです。素晴らしい機会となって欲しいですね。

ソース一覧
http://www.mister-baseball.com/mlb-games-europe-netherlands/
http://www.mister-baseball.com/mlb-regular-season-games-hoofddorp-stadium-2014-2015-possibility/