福島出身の監督が「立入禁止区域」まで取材敢行 避難を強いられた人々の心に寄り添うドキュメンタリー公開
福島県出身の映画監督が、原発事故により「立入禁止区域」となった地域への現場取材を敢行、女優・市原悦子がナレーターを務めたドキュメンタリー映画『立入禁止区域・双葉 〜されど我が故郷〜』が公開される。
本作は、東日本大震災、その後の福島第一原子力発電所事故の影響で、大半の地域が警戒区域・計画的避難区域となってしまった福島県双葉郡住民の有志によって設立された、「Fukushima FUTABA」プロジェクトの第1弾。福島生まれで、県立双葉高等学校出身でもある映画監督・佐藤武光が、「立入禁止区域」に入り込んでまで取材した映像が公開される。
事故発生当時、友人たちに連絡をとりつつカメラを携え故郷に向かったという佐藤監督。検問での制止にも、「おれは双葉の出身で、故郷に戻るから、自己責任で入る!」と答えて突進。取材をしていくうちに、地元の状況を一番知らされていないのは、地元の人々だと気付き、自分の記録した映像でそれを伝えていこうと考えたという。
佐藤監督は、立入禁止区域だけでなく、埼玉県加須市旧騎西高校、ホテルリステル猪苗代、いわき市など避難地への訪問取材も行った。避難所を転々としながら娘と支え合って暮らす母親。「立入禁止区域」にある自宅に通い、放射能測定を続ける住人などが登場するという。この先の見通しもたたない人々の心情は、「立入禁止区域」の映像と同様の衝撃を、観客にもたらすことだろう。
「立入禁止区域」の映像が一般に公開されるのは極めて珍しいことといえる。しかし映画は、日本が初めて体験する未曾有の事故に直面させられた、同地域の人々の心に寄り添ったものだという。避難した人々が直面している現実だけでなく、それによって起きたさまざまな問題や、吐露する素直な心情に耳を傾ける機会となりそうだ。(編集部・入倉功一)
映画『立入禁止区域・双葉 〜されど我が故郷〜』は3月17日より渋谷アップリンクにて公開