政府は昨年12月16日に「原発事故収束」を宣言したが、福島での原発作業はいまだ続いている。現場でも東電のデタラメは一目瞭然だという。福島第一原発の最前線で昨年、崩壊した建屋の修復作業に従事した職人が告発する。



「現地での仕事は、勤務している会社に震災直後から話が回ってきていた。親会社から言われれば、それは行くよ。でも、将来ある若いやつらを前線には送れないよな。俺が先陣切って行くのは当然だった」

 高濃度の放射能が待ち構える原発での作業に迷いはなかったか聞くと、持井忠夫氏(仮名)は、きっぱりとこう口を開くのだった。

 福島県外の建設関連会社に勤務する持井氏は、特殊技術を有するベテラン職人で、家族を抱える中年男性だ。

 彼は数カ月間にわたって、福島第一原発で作業をしたと言うが、同地には全国各地から働き手が集結していたそうだ。1日3000〜4000人の出入りがあったのを目の当たりにしたという。原発作業といえば、東電が法外な報酬を餌に人手を確保していると、よくささやかれているが、持井氏はこう話す。

「確かに、昼間から酒臭いホームレスみたいなやつらはいっぱいいたな。着替え場所では指がなかったり、入れ墨が入っていたりと、明らかにその筋の人とわかる人間もいた。それから、冗談なのか『こいつらオーバーステイだよ』なんて言われている外国人たちだって働いていたよ。でも、そうした働き手は、あくまで単純なガレキ処理班だよ。だから俺たち職人には、ちゃんと会社を通して仕事が回ってきていた」

 ちなみに持井氏によれば、1人の作業員につき東電から1日50万円が1次請けのゼネコンに支払われていたそうだ。そこから子会社→孫会社と3〜4社を経由して、持井氏の会社には1人当たり4万〜5万円の報酬が入ってきたという。職人の手取りはそのうち9割ほどだったというが、健康被害を考えて、1日の作業は長くて2時間という取り決め。危険を顧みなければ、わりのいい仕事だと考える向きがいてもおかしくない。

「2時間といっても、そのうち30分は入念な着替えの時間。実質1時間半の労働だよ。でもね、放射線量1000ミリシーベルトなんて場所を通過して作業場に向かうこともあった。朝礼で、『駆け足で通ってください』なんて説明されるんだ。そんな作業の連続だから、東電は『危険手当』も出すということで約束していた。報酬のさらに半分の額をね。ところが東電は、それをウヤムヤにして出さなかったんだ。危険を冒しているのに、約束の手当が出ないなんておかしい。俺らは直接の親会社に何とか立て替えてもらったけど、東電から支払いを受けなかったというゼネコンは今、激怒している」

 2時間で交代という作業時間についても、ずさんな取り決めだったという。

「現場でやっていれば、いくら作業終了時間だと言われても、ここまでやらないと次に引き渡せないという場面が出てくる。特に俺たち職人にしかできない作業の場合はなおさらだ。時間オーバーなんてしょっちゅうだったよ。現場で残業を止められることもなかったし、例外で残業代として1時間1万〜1万5000円出すって話もあったけどウヤムヤにされたな」

 作業員にはいいかげんな対応だった一方、東電叩きを続けるマスコミ対策には過敏だったという。

「作業している場面をスクープしようと、テレビ局のヘリコプターが建屋の上空をホバリングしていることもしばしばだった。すると『皆さ〜ん、出ないでくださ〜い』と姿を映されないよう徹底指示していた。守秘義務もあって、マスコミには『知りません』と言えと。休日に検診を受けないで外出する作業員がいれば、東電の保安班がしらみ潰しに探しに来て、『契約したのに、何で約束を破るんだ! もう来なくていい!』と上から叱りつけるんだ。やることはやらないで、そういうところだけはしっかりしていたな」

 東電の体質は2012年も変わらないのだろうか。