今年のNPBのいろいろな記録をまとめていて、意外なことに気が付いた。今季のパリーグで規定試合数(96試合)以上一塁を守った選手はオリックスの李スンヨプしかいなかった。セリーグは阪神のブラゼル、ヤクルトの畠山和洋、広島の栗原健太と3人いるが、両リーグ合わせても4人しかいない。

実は、昨年もパリーグはソフトバンクの小久保裕紀、千葉ロッテの金泰均、セリーグは阪神のブラゼル、中日のブランコの4人しかいなかった。
かつては、最もレギュラーを固定しやすいポジションという印象があった一塁手だ。事実数年前までは7〜10人前後が規定試合数に達していた。このところ急激に正一塁手がいなくなっている。
今季、NPBの一軍の試合で一塁を守った選手は、セパ合わせて94人にも上っている。

1B-2011-NPB

正一塁手を固定できたのは、阪神と広島だけといってよいだろう。巨人などは14人もの選手が一塁を守った。これでは攻撃力は上がらなかったと思う。
一塁手には、やはり打撃が期待される。ここ数年、両リーグを代表する「打てる一塁手」だった小笠原道大、小久保裕紀が衰えてきていることも大きいのかもしれない。また、外国人の一塁手も定着できていない。それに加えて、今の野球は「一塁手は下手でもつとまる」時代ではなくなりつつあるようにも思う。今季は、統一球の導入によって「打」の数字は一段と悪化したが、これも影響しているのかもしれない。
これによって、不思議な現象が起こっているのがゴールデングラブ賞の選考だ。セリーグはブラゼルと栗原の争い。ブラゼルも非常にゴロさばきのうまい一塁手で、チームをたびたび救ってきたが、栗原は途中交代はあるものの全試合一塁を守っている。栗原が受賞するのは妥当だと思われる。
しかしパリーグは、規定試合数に達したのは李スンヨプしかいない。すでに契約解除された選手を選出するのは不適当と判断したのか、小久保裕紀を選出している。しかし小久保がファーストミットを持ったのは75試合に過ぎない。シーズンの半分ちょっとしか守らなかった選手にゴールデングラブを授与するのは、いかがなものかと思う。日本シリーズのMVPなど後半戦の印象が強かったこともあるだろうが、ここは該当者なしでもよかったのではないか。
巨人の一塁手は、戦後から1980年までの35年間で川上哲治と王貞治の二人しかいなかった。「不動の一塁手」は強いチームの象徴という印象が強い。がっちりして、パワーがあって、打線の中心に座りそうな選手を、一塁手として育てていけばよいのではないかと思う。
中田翔や筒香嘉智など、考えてはいかがだろう。