大阪・西成でホームレスを狙った“飛ばし携帯”の被害が相次いでいる。
 いくら利用しても料金が利用者に請求されずに他人が負わせられる(=飛ばす)、実際の利用者と名義人とが異なる“飛ばし携帯”の被害者は、これまではヤミ金や事件絡みというのが一般的だった。借金やトラブルを口実に携帯電話を取り上げられて使われるか、あるいは無理矢理契約させられるというパターンである。

 しかし今、西成では、ホームレスや路上生活者が食い物にされているという。
 「手口は、何者かが身元が確認できるホームレスや路上生活者に声をかける。そして、1〜5万円程度の報酬で複数の携帯電話を契約のみさせ、本体を取り上げる。名義人探しは、脅迫するより金で釣った方が手っ取り早いというわけです。名義人は報酬を受け取るも、その後、高額な通話料を請求され途方にくれることになります」(地元紙記者)

 地元ホームレスの支援をする「釜ヶ崎支援機構」の関係者は言う。
 「ある50代のホームレスなどは『ええバイトあるで』と言われ、ついて行ったら3万円と引き替えに2台の携帯を契約させられ、2カ月後に約8万円の請求書が送りつけられてきたそうです」

 西成・あいりん地区では、今年春から生活保護のハードルが下がり、身元確認のできる“元ホームレス”が増加。しかし長引く不況で、労働環境そのものは改善されておらず、その日の生活費にも事欠くという状況に変わりはない。
 「屋根の下に暮らしているというだけで、あとはホームレスと同じ。そういう人たちが狙われているのです。もちろん悪いのは声をかける方ですが、かけられる方も、悪いこととは知りつつ目先の金に手を出してしまうというのがやりきれません」(同)

 取り上げられた携帯電話は「多くは薬物売買や組織売春、そしてオレオレ詐欺の小道具に使われている」(社会部記者)という。また、不法滞在の外国人に転売されているという情報もある。
 支援機構では、このような実態の調査に乗り出すとともに、契約手続きが簡略化する一方の携帯電話会社への問題提起も検討していくという。貧困ビジネスの“あの手この手”はとどまることを知らない。