東日本大震災と東京電力の原発事故の影響で、東北や関東地方の入学式や入社式が相次ぎ中止になるなど、2011年4月は異例ずくめの新年度のスタートとなった。原発事故の復旧のめどさえたたず、政府管理が取り沙汰される東電や、みずほ銀行のシステム障害を抱えるみずほフィナンシャルグループの入社式中止はやむを得ないとしても、大半のフレッシュマンは震災と原発事故の被害者と言える。

   企業の間では首都圏の混乱を避けるため、入社式を大阪に「疎開」させるところも多かった。地方出身の浪人生の中には、首都圏の混乱を避け、関西の予備校に入学するケースも目立つという。

関西で予備校生活を始める浪人生も

   文部科学省によると、震災などの影響で4月初旬の入学式の中止や延期を決めた大学は東北と関東を中心に132校になるという。深刻な原発事故が続く福島県の福島大学は入学式を5月に延期した。学内には100人余りの避難者がおり、授業開始も5月にずれ込む見込みだ。

   首都圏でも計画停電などの混乱を避けるため、早稲田大、上智大など多くの私大が入学式を中止。慶応大は入学式を「無期限延期」とした。早大の授業開始は5月で、学生からは「これで夏休みが1カ月短くなる」との嘆きが聞こえる。東京大は4月12日に入学式を行うものの、恒例の日本武道館ではなく、学内に会場を移すという。

   東電の原発事故と計画停電は、とりわけ地方から上京し、新生活を始める学生や浪人生にとっては不安に違いない。代々木ゼミナールなど大手予備校では、東京都内の予備校入学を避け、関西で予備校生活を始める浪人生も出ているという。

   企業の入社式も混乱を極めた。日本郵政グループ、野村ホールディングスなどは入社式を中止。りそなホールディングス、キリンホールディングスなどはグループの合同入社式を見送った。「被災した社内施設の復旧を急ぎ、計画停電による首都圏の交通網の混乱を避けるため」という。NTT東日本、セブン&アイ・ホールディングス、イオンなどは入社式を延期した。

入社式で震災の犠牲者に黙とうをささげる

   入社式を東京から大阪など関西に疎開させる企業も目立った。日本生命保険、伊藤ハム、帝人、デサントなどだ。いずれも関西に本社を構える企業だが、実質的な本社機能を東京に移すなどしており、これまで入社式も東京で行っていた。今回は「首都圏の混乱をさけるため、安全な関西で入社式を開くことにした」という。同じく大阪に本社を置く繊維商社の蝶理も当初は大阪で入社式を開く方針だったが、「首都圏の計画停電が落ち着きつつある」と判断し、東京で開催することにした。

   新入社員の門出となる入社式だが、今回は震災の犠牲者に黙とうをささげる企業が多かった。帝人の大八木成男社長は大阪で行った入社式で「国難の時期の入社なので、仲間と復興に力を注ごう」などと新入社員に呼びかけた。企業によっては、入社式後の社員研修も首都圏を避け、引き続き関西で行うところもあるという。

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