岩政は闘莉王にヘッドで競り負けろと言われたのだろうか。森脇はそのこぼれ球への反応を遅らせろと指示されていたのだろうか。瞬間、僕は眼下で起きている光景に目を疑い、そして言葉を失った。100点満点の演技。ケチの付けようのない完璧な芝居。芝居や演技だとしても、二度とお目にかかれない離れ業。斎藤佑樹投手をはじめ、世の中に「持っている」選手は多々いるが、ここまでのものを持っている選手はそう多くない。まさに神がかり的。神秘的で魔術的で。長い間サッカーを見てきたけれど、ここまでの非現実的なプレイを僕は見た試しがない。

三浦知良、44歳。恐るべし。前から少し、変わっているなと思っていたけれど、突き抜けてしまった感じがある。誤解を恐れず言わせてもらえば、変態度はスポーツ界ダントツのナンバーワン。ここまでおめでたい選手を。僕は見たことがない。さすがに「キング・カズ」と、自ら名乗るだけのことはある。天晴れ!カズ。

というわけで、採点です。

GK川島6 見せ場は一度限り。

DF今野6 やはり今季2部でプレイするのは良いことではない。

DF伊野波6.5 「この3バックでは、伊野波、吉田がイニシアチブを取ってゲームを進めることが大切」とは、ザッケローニの言葉。

DF吉田6 フィード能力、キックの質をより高めたい。

MF長友5 コンディション不良だったらしいが、すべてにおいてイマイチ。格の違いはもとより、存在感を示すことができなかった。そもそも、長友は走っていなければ存在感を発揮できないタイプ。こうしたある意味で「魅せる」試合には向いていない選手だと言える。

日本代表対Jリーグ選抜。このチャリティマッチは、エキシビションマッチなのか真剣勝負なのか。試合前、選手は全力で戦うことを誓ったが、やはり100%ではない。8割程度が良いところだ。中にはもう少し頑張っている人もいたが、そのあたりがあやふやだったことは否めない。

チャリティマッチを強化試合と銘打つのはやはり変。欲のかきすぎだ。相手のJリーグ選抜は、急造チーム。失点シーンにも象徴されるように、コンビネーションに大きな問題を抱えている。そうした相手にどこまで本気で向かっていくべきか。立ち振る舞いには、まさにプロっぽさが求められていた。だが、日本人選手は、あまりチャリティマッチ慣れしていない。ファンもしかり。頃合いを承知している人は少ない。

これが単なるチャリティマッチでないことも輪を掛けた。東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティマッチ。日本を襲った戦後最大の災害の復興の手助けになれば、という試合。とてつもなく重いテーマを背負った試合。なおも、福島第1原発は、危機的状況にある。事態は深刻化を辿る一方だ。世の中は、笑える状態には一切ない。

だが、100%大真面目というわけにもいかない。魅せる試合でなければならない。長友のプレイには、この試合の矛盾点が見え隠れしたわけだ。

だからこそ三浦カズのプレイには救われた。繰り返すが、彼は44歳だ。プレイしているのはJ2の横浜で、Jリーグ選抜に選ばれるような活躍をしているわけではまったくない。こう言っては何だが、お祭りに欠かせない色物、人気者として、彼は長居のピッチに立っていた。瞬間、代表チームの強化という視点は、とても嘘臭いものになっていた。だが、その彼が、一番魅せるプレイをした。チャリティマッチに相応しいプレイをした。「自軍の失点をここまで喜んだ経験はない」とは、試合後のザッケローニの言葉だが、そこにこの試合の本質を見る気がする。

MF内田5.5 前方にスペースがあるときは、果敢に勝負を挑みたい。

MF遠藤6 プレス等々、一生懸命やり過ぎたような気もする。