最近では中継を見ていても、ガラガラのスタンドばかりが目立つイタリア・セリエA。昨シーズンのUEFAチャンピオンズリーグでは、モウリーニョ率いるインテルが見事優勝を遂げ、存在感を示しましたが、来シーズンからはその決勝で敗れたバイエルン・ミュンヘンが所属しているドイツ・ブンデスリーガが、セリエAを抜いてUEFAリーグランキングの3位に躍り出ることが確実視されています。

UEFAリーグランキングとはチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグ(旧UEFAカップ)、2つの大会で各リーグ所属クラブが収めた成績をポイント化したもの。では、実際にここ5シーズンを例にとって、セリエAとブンデスのパワーバランスは本当に逆転しているのかを比較してみましょう。以下、ここ5シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(以下、CL)に参加した、両リーグに所属するクラブの結果です。○数字はその前シーズンのリーグ順位となっています。

2005-2006
【セリエA】19勝9分け10敗

?ユヴェントス…ベスト8敗退(6勝1分け3敗)
?ミラン…ベスト4敗退(5勝5分け2敗)
?インテル…ベスト8敗退(6勝2分け2敗)
?ウディネーゼ…GS敗退(2勝1分け3敗)

【ブンデス】9勝5分け8敗
?バイエルン…ベスト16敗退(4勝2分け2敗)
?シャルケ…GS敗退(2勝2分け2敗)
?ブレーメン…ベスト16敗退(3勝1分け4敗)

2006-2007
【セリエA】15勝8分け8敗

?インテル…ベスト16敗退(3勝3分け2敗)
?ローマ…ベスト8敗退(5勝2分け3敗)
?ミラン…優勝(7勝3分け3敗)

【ブンデス】8勝5分け9敗
?バイエルン…ベスト8敗退(4勝4分け2敗)
?ブレーメン…GS敗退(3勝1分け2敗)
?ハンブルガーSV…GS敗退(1勝5敗)

2007-2008
【セリエA】15勝6分け11敗

?インテル…ベスト16敗退(5勝3敗)
?ローマ…ベスト8敗退(5勝2分け3敗)
?ラツィオ…GS敗退(1勝2分け3敗)
?ミラン…ベスト16敗退(4勝2分け2敗)

【ブンデス】6勝2分け14敗
?シュトゥットガルト…GS敗退(1勝5敗)
?シャルケ…ベスト8敗退(3勝2分け5敗)
?ブレーメン…GS敗退(2勝4敗)

2008-2009
【セリエA】11勝10分け9敗

?インテル…ベスト16敗退(2勝3分け3敗)
?ローマ…ベスト16敗退(5勝3敗)
?ユヴェントス…ベスト16敗退(3勝4分け1敗)
?フィオレンティーナ…GS敗退(1勝3分け2敗)

【ブンデス】7勝7分け2敗
?バイエルン…ベスト8敗退(6勝3分け1敗)
?ブレーメン…GS敗退(1勝4分け1敗)

2009-2010
【セリエA】18勝8分け9敗

?インテル…優勝(8勝3分け2敗)
?ユヴェントス…GS敗退(2勝2分け2敗) 
?ミラン…ベスト16敗退(2勝3分け3敗)
?フィオレンティーナ…ベスト16敗退(6勝2敗)

【ブンデス】11勝6分け10敗
?ヴォルフスブルク…GS敗退(2勝1分け3敗)
?バイエルン…準優勝(7勝1分け5敗)
?シュトゥットガルト…ベスト16敗退(2勝4分け2敗)

そしてUEFAヨーロッパリーグ(2008-2009シーズンまではUEFAカップ、以下表記はELに統一)の両リーグ成績です。☆が付いているクラブはCLからの脱落組となっています。

2005-2006
【セリエA】11勝6分け7敗

?サンプドリア…GS敗退(1勝2分け1敗)
?パレルモ…ベスト16敗退(4勝2分け2敗)
?ローマ…ベスト16敗退(5勝1分け2敗)
☆ウディネーゼ…ベスト16敗退(1勝1分け2敗)

【ブンデス】14勝5分け9敗
?ヘルタ・ベルリン…ベスト32敗退(1勝3分け2敗)
?シュトゥットガルト…ベスト16敗退(4勝2敗)
?ハンブルガーSV…ベスト16敗退(5勝3敗)
☆シャルケ…ベスト4敗退(4勝2分け2敗)

2006-2007
【セリエA】5勝3分け8敗

?パレルモ…GS敗退(1勝1分け2敗)
?リヴォルノ…ベスト32敗退(1勝2分け3敗)
?パルマ…ベスト32敗退(3勝3敗)
※カルチョポリによる順位繰上げで各チームとも順位が3つ上昇

【ブンデス】7勝6分け9敗
?レヴァークーゼン…ベスト8敗退(3勝2分け5敗)
?フランクフルト…GS敗退(3分け1敗)
☆ブレーメン…ベスト4敗退(4勝1分け3敗)

2007-2008
【セリエA】6勝5分け1敗

?フィオレンティーナ…ベスト4敗退(6勝5分け1敗)

【ブンデス】20勝11分け9敗
?バイエルン…ベスト4敗退(4勝6分け2敗)
?レヴァーク−ゼン…ベスト8敗退(6勝1分け3敗)
?ニュルンベルク…ベスト32敗退(2勝2分け2敗)
?ハンブルガーSV…ベスト16敗退(5勝2分け1敗)
☆ブレーメン…ベスト16敗退(3勝1敗)

2008-2009
【セリエA】9勝8分け7敗

?ミラン…ベスト32敗退(2勝4分け)
?サンプドリア…ベスト32敗退(2勝1分け3敗)
?ウディネーゼ…ベスト8敗退(5勝2分け3敗)
☆フィオレンティーナ…ベスト32敗退(1分け1敗)

【ブンデス】17勝10分け14敗
?シャルケ…GS敗退(1勝1分け2敗)
?ハンブルガーSV…ベスト4進出(8勝1分け3敗)
?ヴォルフスブルク…ベスト32敗退(3勝1分け2敗)
?シュトゥットガルト…ベスト32敗退(2勝1分け3敗)
?ヘルタ・ベルリン…GS敗退(2分け2敗)
☆ブレーメン…準優勝(3勝4分け2敗)

2009-2010
【セリエA】10勝3分け11敗

?ジェノア…GS敗退(2勝1分け3敗)
?ローマ…ベスト32敗退(4勝1分け3敗)
?ラツィオ…GS敗退(2勝4敗)
☆ユヴェントス…ベスト16敗退(2勝1分け1敗)

【ブンデス】18勝9分け11敗

?ヘルタ・ベルリン…ベスト32敗退(3勝2分け3敗)
?ハンブルガーSV…ベスト4敗退(7勝2分け5敗)
?ブレーメン…ベスト16敗退(6勝3分け1敗)
☆ヴォルフスブルク…ベスト8敗退(2勝2分け2敗)

【ELに強いドイツ勢】
CLの数字をまとめると、セリエA勢は78勝41分け47敗。勝率は.470となり、ミランとインテルがそれぞれチャンピオンに輝いています。一方のブンデス勢は、41勝25分け43敗。勝率は.376となり、最高はバイエルンの準優勝。あとは同じくバイエルンが2回、シャルケが1回、ベスト8へ進出するにとどまっているんです。

今度はELの数字を見てみましょう。セリエA勢は奇しくもCLのブンデス勢にニアピンの41勝25分け34敗。勝率は.410となり、最高成績はフィオレンティーナのベスト4。ベスト8以上にはウディネーゼが1回入ったきりです。一方のブンデス勢は76勝41分け52敗。勝率は.450。ブレーメンの準優勝を筆頭に、毎回ベスト4へ1つ以上のクラブを送り込んでいます。確かに最近ELってドイツが強いイメージありますよねえ。

実は昨シーズンまでどちらの大会もベスト8以上に勝ち進めば、各段階でボーナスポイントが加算されるシステムでした。ということは、ポイント的に一番意味のなかったのがCLのベスト16敗退。ボーナスポイントはもらえず、参加していれば多くのポイントが見込めるであろうELにも当然参加できないので、何とも言えない空しさが残ります。そして、セリエAはここ5シーズンで実にのべ8クラブがCLのベスト16で敗退しているのです。

まあ、それじゃあかわいそうということで、昨シーズンから決勝トーナメントに進出するだけで5ポイントが加算されるルールに変わったため、ミランとフィオレンティーナはちょっとだけ恩恵を受けましたけど。

CLの厳しいグループステージを勝ち抜いて、決勝トーナメントに駒を進めるというのは相当価値のあること。それよりも、早々にグループステージで敗退し、回ったELでベスト8に進出したクラブの方が、少なくとも昨シーズンまではポイントが高くなる可能性が大きかったということになります。コレってどうですか?

【ブンデスが上回ったと考えるのはまだ早い?】
既にシーズンごとのUEFAリーグランキングでは2007-2008からブンデスが上回っているのですが、これはELにセリエA勢がわずか1クラブしか参加できず、ブンデス勢が猛威を奮い始めたシーズンと重なっています。

確かにブンデスは観客も明らかに入っていますし、リーグとしての体力もセリエAを上回っているでしょう。ここ5シーズンのELで、毎回ベスト4以上に進出するクラブを出しているのは、本当に素晴らしいことだと思います。ただ、このUEFAリーグランキングの順位逆転だけを見て、純粋なサッカーのレベルもブンデスが上回ったと考えるのは、まだ早計ではないかと私は思います。

なお、今週のFoot!は亘崇詞さんをお迎えして、“アミーゴを訪ねて〜ローマ編〜”をお送りしますのでお楽しみに!

土屋雅史(J SPORTS「Foot!」


WORLD SOCCER NEWS「Foot!」

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