児童ポルノ所持の恐怖:濡れ衣で失職・自殺した人々

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Jon Stokes


画像はWikimedia

英国の中学校の校務員が、上司であるEddie Thompson氏のパソコンに児童ポルノ画像を隠した罪で起訴されている。この校務員はThompson氏に不満をもっており、同氏を解雇に追い込み、破滅させることが目的だったという。

問題の校務員は、児童ポルノ画像を焼き付けたCDを、Thompson氏のパソコンの中にあったものだとして警察に郵送した。さらに、Thompson氏のノートパソコンに児童ポルノ画像を隠した上で、警察に匿名で電話をした。通報を受けた警察は、問題のノートパソコンを押収し、被害者であるThompson氏を逮捕した。

この事件の恐ろしいところは、これが実際に起こったということだけでない。校務員がポルノ所持の偽情報を警察に流し、その結果Thompson氏が逮捕されたのは2006年だが、真実が明らかになったのが2007年だったという点にある。校務員は2007年にようやく逮捕され、現在裁判が行なわれている。

Thompson氏とその妻は、本当の犯人が逮捕されるまでの1年間を、近隣住民の非難の声におびえ、友人や家族、同僚からも避けられる暮らしをしていたという。

英国の警察は2002年、ウェブサイトで児童ポルノ画像を購入した容疑で7000人以上を起訴したが、このうちの多くがクレジットカード詐欺の被害者だったことが後に判明している。Simon Bunce氏もそんな被害者の1人で、IDが児童性愛者に盗まれていた。だが、容疑が完全に晴れるまでに、Bunce氏は高収入の職を失い、家族からも絶縁されてしまった。

[英国では1999年から2000年代前半、児童ポルノ所持者たちを逮捕するための『オペレーション・オー(Operation Ore)』が行なわれた。児童ポルノの頒布元とされたウェブサイトの利用者数千名のデータに基づき、7250名の容疑者を特定、4283件の家宅捜索が実施され、逮捕3744名、起訴1848名、有罪1451名。しかし、そもそも誤りを含んでいたデータに基づいて多くの不当捜査が実施されたことがのちに判明。誤って捜査対象となった者の生活が破壊され、少なくとも35名の自殺者の発生につながったとされている。先行して米国で実施された児童ポルノ一斉取り締まり作戦「オペレーション・アヴァランチ」 (Operation Avalanche)を受けて行なわれたものだが、米国では訴追のための証拠を収集した上で作戦に着手したため、起訴に至ったケースではほとんどが有効な判決に結びついたという。

米国で2008年に起こった高校教頭の「児童ポルノ濡れ衣事件」についての日本語版記事はこちら]

WIRED NEWS 原文(English)

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