NHKで新番組が始まった。その名も「笑神降臨」、実にご大層なタイトルである。しかし大仰なのはタイトルだけではない。のっけからナレーションで『笑いの神は怒っている』ときた。いっそ気持ちがいいほどに大きく出たものだ。内容は“ただ1組の芸人が29分かけて入魂のネタをじっくりと見せる”ものである。

 6日深夜の初回放送では次長課長(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)が29分で3本のコントを披露した。1本目はうさんくさい占い師をモチーフにしたもの。河本扮する占い師にとある実在の人物を想起してしまい、思わずにやりとしてしまう内容だった。得意のアドリブと思われる部分の熱がブラウン管を通すことでやや冷めてしまったことが残念。2本目はコンパクトにまとめた通販ネタ。次課長らしい、いい塩梅のとっちらかり感がよかった。

 3本目はNHKで放送中の「プロフェッショナル 仕事の流儀」のパロディ。VTRからスタジオ部分まで非常に丁寧に作られており、井上演じるフリーターがフィクションならではのリアリティを持っていた。腹を抱えるというよりも心に染み入るような笑いが心地よく、15分というテレビコントでは稀な長さでありながら退屈することはなかった。

 1回目の放送はおおむね成功だったと思う。こういった思い切ったことができるのは、視聴率のことをさほど気にしなくてもいいNHKならではなのであろう。

 単純計算で1本10分という長尺は、近年のショートネタブームに対するアンチテーゼであるように思われる。先述のナレーションには確かに、ショートネタを中心とした“今の笑い”に“笑いの神は怒っている”といった含みがあった。ショートネタはあくまで時代の流れであり、そのものを否定することに意味はない。しかしどうしてもショートネタには向かない芸人は存在する。この番組はこれから先、そういった芸人の救済措置としてまさに神のような存在になるのかもしれない。

 今後の出演予定者はアンジャッシュ(プロダクション人力舎)、インパルス(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)、東京03(プロダクション人力舎)と、実力のある中堅どころを押さえている。彼らに長尺のネタを披露させるなど明らかに現在の笑いの本流に逆らっているが、芸人側、視聴者側ともにニーズは確実にあるはず。「サラリーマンNeo」「ケータイ大喜利」と世の流れに迎合しない笑いを提供し続けているNHKの看板が、もう一枚増えそうだ。

(編集部:三浦ヨーコ)


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