いよいよ白熱するロシアの「エネルギー帝国化」脅威論
「ロシア脅威論」という言葉が、最近市場関係者のあいだで語られることが多くなった。それはズバリ、ロシアという付き合いにくい大国が、世界の勢力図を塗り替えかねない「超エネルギー帝国」にのし上がりつつあることへの懸念だ。今回は、その実態に迫ってみよう。
1991年12月のソビエト連邦解体後、ロシアは初代大統領ボリス・エリツィンの下で市場型経済を指向した経済改革を行なった。しかし、需要の拡大に対して供給能力が追いつかず、激しい物価上昇=ハイパーインフレが発生し、国内経済が厳しい状況に追い込まれた。
“ルーブル危機”は、当時の世界の金融市場に大きな衝撃を与え、それをきっかけに、有力ヘッジファンドである米LTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)が破綻したことは、あまりにも有名だ。
2000年代に入ると、原油や天然ガスなどのエネルギー価格の上昇を背景に、高い経済成長を維持するようになり、最近では、世界有数の“エネルギー帝国”と称され、BRICsの一角を占めるまでに至っている。
現在、ロシアは、サウジアラビアに次ぐ世界第2位の原油輸出国である。また、天然ガスを含めたエネルギー供給能力は、圧倒的なマグニチュードを誇る。同国は、まさに“エネルギー帝国”の名に値する存在だ。ロシア経済は、現在、過去数年間の世界的なエネルギー需要の増大に伴う、原油・天然ガスの価格高騰に支えられて高い成長を続けており、今や90年代後半の“ルーブル危機”当時の面影を感じさせない勢いがある。
そのエネルギー輸出代金によって、多くの新興財閥が誕生しており、彼らは、現在、中東産油国と並んで、「世界で最も大きな富を手にした人々」と言われている。ロンドンの中心街では、毎日のようにロシア人富豪のパーティーが開催されることもあるという。
国内経済に目を転じると、今年1-3月期のGDP成長率は8.5%増と、前期対比でやや成長率が落ちたものの、世界的な資源価格の高騰によって、鉱業部門を中心に生産活動が堅調で、雇用・所得環境も安定している。それ以外の分野でも、建設業や小売業などが高い伸び率を示している。
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