ブー・ウィークリー=「ブー」は選手登録名。名前の由来はアメリカのアニメのキャラクター(写真/田辺安啓=JJ)

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日本では男子ツアー開幕戦の東建ホームメイトカップで石川遼の成績知りたさにJGTOのホームページへのアクセスが殺到し、サーバーが一時ダウンしたというニュースを聞いた。初優勝が期待された中、石川はトップと5打差の5位タイに終わったが、石川が大会の立役者であったことは疑いようもない事実だ。もっとも、ここで言う「立役者」とは「最終成績はさておき」という意味。つまり、たとえ石川が10位に終わろうとも30位に終わろうとも、その数字とは無関係に、石川が大会を盛り上げたという意味である。もちろん、成績や将来性はさておき、16歳の少年プロがたった一人で大ギャラリーをひきつけ、テレビの視聴率を格段にアップさせ、JGTOのホームページを止めてしまうほどユーザーを引っ張っていたのだから、それはそれで「偉業」である。

ところで、海を渡ったアメリカの男子ツアーでは、マスターズ後のベライゾンヘリテージクラシックで34歳のブー・ウィークリーが2年連続優勝を果たした。同大会を2年連続で制したのは、故ペイン・スチュワート(81、90年)、デービス・ラブ(91、92年)に続く史上3人目だが、そんな記録はさておき、彼の優勝にゴルフファンと大会関係者は惜しみない拍手と喝采を送った。

ウィークリーは南部訛りの英語をしゃべり、見た目はお世辞にも格好いいとは言えないタイプ。米メディアは彼をしばしば「レッドネック(田舎もの)の代表格」として紹介し、彼自身もレッドネックを自認している。噛みタバコをやめる気配は一向になく、「だって習慣だから、しょーがないよ」。マスターズで優勝者にグリーンジャケットが贈られるように、同大会では赤いチェック柄のジャケットが贈られるのだが、ウィークリーが着ると、これまたお世辞にも似合うとは言えない。それでも彼は「これでジャケットが2着になった。土曜日と日曜日に1着ずつ着れるなあ」と、コメディアンよろしく、おどけて話し、インタビュールームは笑いの渦。

そんなウィークリーは昨年の同大会で初優勝を飾って以来、スポンサー関係者や地元メディアの招待ラウンドに何度も足を運び、大会への恩返しを続けてきた。大会関係者からは「こんなチャンピオンは初めてだ」と喜ばれ、「この大会のヒーローだ」と密かなる人気を誇ってきた。そして今年。再びウィークリーが優勝したため、「オレたちのブーがこれからもオレたちの大会のためにやってきてくれる」と関係者の喜びは倍増した。そう、優勝したウィークリーは同大会の立役者なのだ。

石川とウィークリーを比べたら、同じ「立役者」でも、石川はイケメンの若者、ウィークリーは田舎くさくて中年に近づきつつある太り気味のダサ〜い男。石川の夢は「マスターズで優勝すること」だそうだが、「どの試合も試合は試合。メジャーもジャスト・ゴルフ」というウィークリーはマスターズの開催時期をうっかり忘れ、マスターズウィークにハンティング旅行を計画していたほどの無頓着ぶりだった(出場して20位タイだった)。この2人のタイプには天と地ほどの差がある。だが、勝てなかった立役者と2連覇を果たした立役者、どっちがアスリートとして格好いいかと問われたら、そりゃあ石川の健闘したけれど、やっぱり勝利を飾って大会を盛り上げた立役者のほうが「役者が1枚上手」なのではなかろうかと、密かに思ってしまう。(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)