銀メダルを獲得した羽生結弦【写真:AP】

写真拡大

ユーロスポーツ解説者「4回転の本数に比例して加点されるべきではない」

 フィギュアスケートの世界選手権男子はネイサン・チェン(米国)が合計323.42点の世界記録をマークし、連覇を達成。3度目の優勝を狙った羽生結弦(ANA)は2位となった。上位2人が300点を超えるハイレベル決戦となった大会について、イタリア解説者が総括。採点方式について持論を展開している。イタリアメディア「OAスポーツ」が伝えている。

 チェンの大会連覇で幕を閉じた世界選手権。総括したのは、ユーロスポーツ解説者マッシミリアーノ・アンベーシ氏だ。記事では、羽生についてショートプログラム(SP)のジャンプ要素抜け、フリーの着氷がやや乱れた4回転サルコーという2つのミスが勝敗を分けた鍵に挙げる一方で、演技については高く評価している。

「とにかく、ハニュウの演技は気高く重厚なものだった。彼のコンディションは良い状態ではなかった。足が4分間に耐えられるかも分からなかったのである。彼は自身の心と向き合い、プライドと闘って、フリーをほぼ完璧に成し遂げたのだ」と語ったといい、60センチ以上の高さを記録した4回転ループなどについて賛辞を並べた。

 ただ、チェンにミスが出なかったため、順位については「至極妥当」と言及。また、同氏は「私の見解では2人の構成点には差があるはずだ」と踏み込み、「ユヅルのプログラムはチェンと比べるとかなり豊かで豪華である。チェンも細やかな点を向上させてはいるが、実際の演技を見ると差が分かるだろう。フリーの点数という数字だけでは決めつけられないのだ」と指摘した。

「技術点と構成点の間に矛盾があってはいけない」と持論

 さらに、採点についても持論を展開している。3位に入ったヴィンセント・ジョウ(米国)の演技構成にも触れながら、同氏は「プログラムの構成点は4回転の本数に比例して加点されていくべきではない。それは構成点の意義を否定するものだし、技術的な難易度だけで評価してしまうことになる。私は今大会の反省点はそこからだと思う」と語ったという。

 羽生の4回転ループで加点が1点だったジャッジがいたことについても指摘。「入りに工夫があり高さもある、あの4回転ループにたった+1とは有り得ないと僕は思うよ」とし、「一人のジャッジを批判したい訳ではない。この問題は複雑で、ジャッジたちの採点ではなく採点システムそのものにあるんだ。技術点と構成点の間に矛盾があってはいけない」と力説したという。

 他の選手も例に出しながら採点について見解を語った同氏は「もし、優れて抜きん出た演技したいのならハニュウのようなプログラムにすると良い。それは間違いない」と言及。その上で「この採点システムは、一元的な選手を称賛するのに作られた訳ではないと思う。つまり4回転ジャンプだけで他の中身がないようなプログラムに対してだ」と続けた。

「それならば(4回転の本数が重視される現状ならば)、早急に(システムの)見直しが必要だ!」と考えを訴えたという。アンベーシ氏はフィギュア界がさらに魅力的な発展を願うように、来季に向けた提言を行っていた。(THE ANSWER編集部)