金足農の躍進で注目を集める「秋田朝日放送」のツイッター担当者が舞台裏を語った

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「あああ…」ツイートが話題の秋田朝日放送を直撃

 第100回全国高校野球選手権記念大会の準々決勝が18日に行われ、金足農(秋田)が近江(滋賀)に9回裏に2ランスクイズを決めて逆転サヨナラ勝ち。1984年以来、34年ぶりの4強進出を決めた。県内出身だけで構成されたチームが、強豪を相手に劇的な勝ち方を続ける姿は高校野球ファンの共感を呼び、また一人で投げ続けるプロ注目の150キロ右腕・吉田輝星投手(3年)は4試合で615球の熱投を続けている。ドラマのような展開の一方で、同時に大きな注目を集めているのが、地元放送局「秋田朝日放送」の連日の絶叫ツイートだ。「THE ANSWER」では同局の担当者を直撃。舞台裏を聞いた。

 金足農の快進撃と共に、にわかにスポットライトを浴びているのが「秋田朝日放送」のツイッターだ。8回に逆転した3回戦・横浜戦(17日)では勝利の瞬間に「アアアアア…」と「ア」だけで28文字のツイートを発信。「落ち着け」「壊れたのか」など“中の人”を心配する声も寄せられるなど、大きな話題を呼んだが、準々決勝では逆転サヨナラの瞬間に、今度は「ああああああ…」と「あ」だけを71連発。「秋田朝日放送も半端ない」など、再び脚光を浴びていた。

 かつてないほどの盛り上がりを見せている同局のツイッター。担当者の一人は反響の大きさに半ば喜び、半ば戸惑いつつも、内幕を教えてくれた。

 同局のツイッターには“中の人”は複数人いるが、3回戦、準々決勝を担当したのは女性だという。もともと野球にさほど興味があったわけではないが、地方大会から担当するうちに、自然と愛着が沸いてきたという。それが甲子園となればなおさらだ。勝ち上がる過程を見守ってきた金足農に感情移入したがゆえの、絶叫ツイートになったようだ。

「当日のツイッター担当者のストレートなつぶやきです。横浜戦の時は、当初はあそこまで反応があるとは気づかず、応援する気持ちのままに思ったままに叫んだみたいです。それがヤフーの話題に乗っている。本人もびっくり、社内もびっくりでした。社員の家族や知り合いから、『大変なことになっているよ』と反響があってから気づきました」

 もともとツイッターは活用しており、地方大会ではイニング毎の結果などシンプルにツイートしていた。金足農の甲子園出場が決まってからは、もう少し盛り上げられればとツイートの数自体を増やしていったという。

「テレビ局ですし、きちんと情報を発信しなければならないが…」

「甲子園が始まる前は正直なところ、3回戦まで行けたらなという気持ちでした。相手が横浜だったのでここまでかなと。なんとなくダメかなという思いがあったので、ああいった気持ちが入ったツイートになったのだと思います」

「テレビ局ですし、きちんと情報を発信しなければならない。公式のSNSの中であんまりふざけたことをやっていいのかなと思っていたところもあって、これまでは番組情報の発信くらいにとどまっていましたが、何かしらSNSを活用しなければという声も以前からありました」

 報道機関としてのツイッターの活用方法を考えていた最中にスタートした夏の甲子園。劇的な勝ち方を続ける金足農を応援する気持ちが、感情をそのまま表現する“壊れツイート”につながっていった。

「秋田県はもともと、高校野球熱が凄くあるんです。この時期は弊社でもHPのほかに、高校野球用のページ、高校野球専用ツイッターも立ち上げる。高校野球を応援していく中で、素直に学校を応援するようなメッセージがあってもいいのではないかと。実際にリツイートしてもらった先を見てみると、『嬉しいですよね』『その気持ちわかります』という好意的な声が数多く上がっていた。『壊れてくれるなんてありがとう』という声もあったのには驚きました。こういう形で盛り上げるのも、ありじゃないのかなと」

「バズる」経験は同局にとっても初めてのこと。サヨナラ2ランスクイズの瞬間の「あ」71連発ツイートは、19日の午後3時時点で2万7000件以上リツイートされている。ついているコメントもほとんどが、ツイートに共感するという好意的なものだ。

準決勝で始球式を務めるのは同校が34年前に対戦した桑田さん

 金足農の魅力についても、こう語ってくれた。

「全員が秋田の子たち。その中でも農業高校という特殊なところでもある。34年前にも初出場で快進撃。桑田、清原がいたPL学園を苦しめた学校という事はみんなが知っています。甲子園に行けば、何かやってくれそう。“金農”OBだけじゃなくて、県内には根強いファンがたくさんいます。吉田君のような逸材が、秋田にいたということも誇らしいです」

 くしくも日大三(西東京)と対戦する準決勝で始球式を務めるのは桑田真澄さん。第1試合に登場する金足農の前で投げるのも、因縁めいている。

「金足農の選手たちはのびのび楽しそうにやっているので、勝ってもらいたい気持ちはもちろんあるが、見ている方が欲をかいてもいけないですから」と静かにエールを送った。

 準決勝ももちろんツイートは続ける。これだけツイートが注目される中での発信は過去にないが、「もちろん何かしらのツイートはすると思います。急に黙ってしまうわけにはいかないですよね。見られているというのを、気にし過ぎず、いつも通りやってくれれば、人を不快にさせないようなものであれば良いと思っています」とまるで球児のような意気込みも語ってくれた。

 秋田の農業高校が続ける夏の快進撃は、地元にも大きな感動と勇気を運び続けている。(THE ANSWER編集部)