エンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

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「野球を全然知らない人でもスゴイと分かる」

 デビュー以来見せる連日の活躍でメジャーを席巻するエンゼルス大谷翔平選手。投手としては2戦2勝、打者としては3戦連続アーチ&4戦連続打点など驚異のパフォーマンスを披露し続けている。ベーブ・ルース以来、約100年ぶりの本格派“二刀流”選手の登場にファンは大いに盛り上がりを見せているが、米メディアは大谷のパフォーマンスをどう見ているのか。昨年来日し、日本ハム時代の大谷を取材した地元紙「ロサンゼルス・タイムズ」の米コラムニスト、ディラン・ヘルナンデス氏に聞いた。

――ここまでの大谷のパフォーマンスに対する率直な感想を。

「去年日本で見た時と同じような印象ですね。とにかくアスリートとして格が違う。そこがすごく目立ちますよね。あんなに軽くバットを振って打球を飛ばす選手はいないし、あんなに力まないで投げて、簡単に98、99マイル(約158、159キロ)出る選手もいない。あれだけの体格であんなに走れる選手も、メジャーにいないと思う。とにかく持ってる素材そのものが他の選手と違う気がします。その上で、日本流の練習を長年重ねてきた結果が見える。投球フォームもきれいだし、スイングもきれいですよね」

――投打に苦戦を強いられたオープン戦から活躍は予感していたそうですね。

「実はマット・ケンプ(ドジャース)のことが頭をよぎったんです。ケンプは高校を卒業するまで主にバスケをプレーしていて、ドジャースには素材のよさだけでドラフトされたような選手。野球の基礎もあまり知らないままメジャーデビューして、結局3、4年後にはトップレベルと言われるようになった。大谷はケンプのような素材を持ちながら、頭もよくて頑張り屋です。キャンプの時から成功すると思っていました。ただ、まさかシーズン最初の10日間でここまで活躍すると思わなかったのでビックリしましたね」

――今、LAのプロスポーツ界にはスターがいない。

「(NBAレイカーズの)コービー(・ブライアント)が引退した後、スターはいません。カーショーもトラウトもトップ選手だけど、あまり多くを話さないし、感情を表に出さない。ある意味、大谷もそうかもしれませんが、やっぱり投げる打つを両方やるのはスゴイ。今、一番ロスで話題になっているスポーツ選手じゃないですか。

 気が付いたのは、最初のホームランを打った後、球場の雰囲気が変わったことです。それをできる選手って、あまりいないですよね。トラウトもプレーのインパクトはあったけど、観客の興奮レベルを変えられる選手ではない。最後に見たのは、メジャー昇格したばかりのプイグ(ドジャース)。その前はマニー(ラミレス)ですね。大谷は打席に入る時に名前を呼ばれただけで盛り上がる。だから、活躍すればロスNO1のスターになってもおかしくないと思います。野球を全然知らない人でも、スゴイというのがすぐ分かる。そこがスゴイですよね」

タイガー・ウッズ級のスター性も!?「ありますよね」

――かつてはゴルフを知らない人でもタイガー・ウッズに熱狂した。その可能性を秘めている。

「ありますよね。野球は歴史がすごく大切。でも、30チームもあるし、各チーム162試合も戦うから、珍しいことは滅多に起きない。その中で大谷は、NFLとMLBを兼業したボー・ジャクソン、隻腕の投手ジム・アボット以来、誰もやったことがないことをやっている。ベーブ・ルースと比べる人が多いけど、当時から野球は大分変わった。そう考えると、誰もやったことがないことをやっていると思います」

――これからの活躍が楽しみ。

「楽しみですね。面白かったのが、アスレチックス戦で2度目に先発した試合。ほとんどの人は、最初の登板は情報を持っていなかったアスレチックスが苦戦したけど、2度目は有利だろうと思っていた。その状況の中で、逆に大谷が1回目を上回る投球を見せたのがスゴイ。やっぱり頭がいい証拠です。

 打者として打席に立った時も、相手投手の攻め方が変わってきてますよね。内角攻めだけじゃなくなっている。その中でも、大谷はよく見ていて、いつ変化球が投げられるのか、頭の中で分かっている気がします。

 彼のアジャスト能力はすごい。ここから常識的に考えれば、各チームが彼の情報を集めて弱点を攻めるから成績が下がるはずだけど、彼の場合は頭のよさやアジャスト能力があるから、もしかしたらさらに伸びるかもしれない。年齢を考えてもまだ伸びる。本当に楽しみですね」(盆子原浩二 / Koji Bonkobara)