66年ぶりの連覇を達成した羽生結弦【写真:Getty Images】

写真拡大 (全2枚)

羽生に降り注いだ“プーさんの雨” 拾い集めたのは17人の“フラワーキッズ”だった

 平昌五輪フィギュアスケート男子シングルは、羽生結弦が66年ぶりの連覇を達成した。五輪史に残る快挙に沸く一方で注目されたのは、演技後のリンクに雨のように投げ込まれたくまのプーさん。地元・韓国メディアが「プーさんの行方」を特集するなど、羽生の“相棒”もまた、社会現象になった。その“プーさん余波”は、意外な形でも注目を集めている。

 米紙がスポットを当てたのは、プーさんや、リンクに投げ込まれる花束を拾い集める“フラワーキッズ”だ。「ニューヨークタイムズ」は「スケートファンがくまや花束を投げる時、“フラワーキッズ”が掃除する」と題し、特集している。

 演技を終えた直後に降り注ぐ、プーさんの雨。そしてそれをすぐに拾う、紫色の衣装をまとったフラワーキッズたち。平昌五輪での、このシーンはおなじみとなった。

 記事では、この子どもたちが、韓国の17人のチームで、「観客が氷上にいるお気に入りのフィギュアスケーターに向けてスタンドから投げ入れた多くの人形や花束などを集める担当だ」と紹介。スイーパーとも呼ばれる彼女らのほとんどが女子で男子は一人だけ。近隣のスケーターから選出されているという。

「この仕事は時に大変だ」として、時に突発的な事態が起きることも伝えた。「21日の女子ショートプログラムでは、退場しようとしていたあるフラワーガールが、米国のスケーター、長洲未来を避けなければならなかった。ウォームアップしていた彼女が突然止まり、スケート靴を確認し始めたからだ」と具体例を伝えた。

 ぶつかってしまって、スケーターがケガなどをしてしまっては大ごと。フラワーキッズたちは、リンク上では決して気を抜けないのだ。

プーさんが直撃したこともあるが… 「プレゼントを拾い集めるのは楽しいわ」

 男子の“あの場面”については、こう触れている。「今年の男子大会は特に困難だった。日本人金メダリスト、ユヅル・ハニュウのファンが、くまのプーさん人形をたくさん投げ入れるからだ。3分もない中で大量の人形を集めるため、スイーパーたちは、けなげにくまを掴み、さらに人形が降り注ぐ中で、複数の大きな袋に投げ入れていた」。

 注目を集めた“プーさんの雨”。あれだけの数の人形を、次の選手が滑走する前に片づけねばならない。それをわずか17人でこなすのだから、決して簡単ではない“仕事”だ。

 同紙は11歳のフラワーガール、チェ・チュヨンさんのコメントを紹介。「スタンドから投げられた空飛ぶプーさんに当たったの。プレゼントを拾い集めるのは楽しいわ」。12歳のイ・スリンさんは、人形を集める最中に氷の凹凸に当たって転倒してしまったというが、「彼女に言わせればそんな不運も、米国のネイサン・チェンのようなお気に入りの選手を近くで見るだけの価値があるという」と伝えている。

 米テレビ局「NBC」のフィギュア解説者で、サラエボ五輪金メダリストのスコット・ハミルトン氏のコメントも伝えている。

「フラワーキッズは世間から愛されていると同時に、彼女らは選手がきれいな氷の上で滑ることができるよう重要な役割を担っている。彼らを観るのは楽しいよ。大好きなんだ。彼女らの全員が偉大な競技者になることを夢見ている」

 金メダリストも、フラワーキッズの担う役割の重要性について証言している。日本のみならず、世界を沸かせた、平昌で起きた壮大なドラマの陰には、17人のフラワーキッズの功績もあった。(THE ANSWER編集部)