パスポートのスタンプはなくなるのか? 羽田空港で入国手続きに「顔認証」導入へ
羽田空港の帰国審査場に、日本で初めてとなる「顔認証ゲート」が導入されます。旅客自身が操作するもので、パスポートへのスタンプ捺印は省略されるというもの。入国審査は今後、どのように変わっていくのでしょうか。
事前手続き不要 セルフで入国審査
法務省入国管理局が2017年10月18日(水)から、羽田空港の帰国(上陸)審査場に「顔認証ゲート」3台を先行導入します。
羽田空港の帰国審査場に先行導入される顔認証ゲートの概要(画像:法務省)。
このゲートの利用対象は日本人の帰国手続きです。旅客が自身で、ゲートの旅券(パスポート)リーダーに向けてIC旅券の顔写真ページを開いて置き、情報を読み取らせます。その後、ゲートの内蔵カメラで顔写真を撮影。顔認証の処理が完了し、問題がなければゲートを通過することができます。
通常の入国手続きでは、入国審査官が旅券の顔写真と本人の顔を確認し、OKであれば旅券にスタンプを押しますが、顔認証ゲートでは証印(スタンプ)が省略されます。証印を希望する人は、最寄りの職員に問い合わせれば捺印に応じてくれるとのことです。なお顔認証ゲートの利用には、IC旅券を持っていること、ひとりで機器の操作ができること、身長135cm以上であることが条件になります。
システム導入の背景を、東京入国管理局羽田空港支局審査管理部門に聞きました。
――なぜ顔認証ゲートを導入するのでしょうか?
訪日外国人旅行者のさらなる増加に向け、日本人の入国審査を合理化し、手続きを円滑にするためです。政府は訪日外国人旅行者数を2020年までに4000万人と、いまの倍に増やしていく方針です。このため、機械化できるところは機械化し、より多くの入国審査官を外国人の審査に充てる狙いがあります。
――このような自動ゲートはどれほど導入されていて、どれほどの時短効果があるのでしょうか?
これまでも日本の空港には、指紋認証によってお客様自身で出入国手続きを行っていただく「自動化ゲート」が導入されていますが、事前の利用登録が必要なこともあり、利用率がそれほど伸びていないのが実情です。今回の顔認証ゲートは事前登録が不要で、日本の入国審査においては初めて導入されます。海外では、ヨーロッパなどで顔認証ゲートが導入されている空港があります。時短効果については、実運用をふまえて検証していきます。
出国手続きへも拡大へ 旅券のスタンプはなくてもOK?
――顔認証はどれほど厳格なのでしょうか?
たとえば前髪が垂れていたり、メガネを着用していたりして旅券の顔写真と印象が異なる場合に、ゲートを通過させることは想定していません。故意にマスクをしたり、あるいはタブレット端末に自分の顔写真を映したりしてゲートを通過しようとするといった不正も考えられます。それを防止するため、ゲート付近には監視役となる入国審査官のほか、操作を案内するコンシェルジュを配置します。
――証印は省略されるといいますが、そもそも必要なかったのでしょうか?
これまでも、自動化ゲートにおいては証印は省略されています。機械を操作いただくことで出入国はデータとして記録されるので問題はなく、省令上は、電磁的に出入国手続きをした場合は証印を要しないということになっています。ただ、他人に見せるためにスタンプが欲しいという方もいらっしゃいますので、顔認証ゲートでは要望に応じて、その場で監視している入国審査官が証印を捺します。
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東京入国管理局羽田空港支局審査管理部門によると、帰国審査場における実運用の経過をふまえ、顔認証ゲートを出国審査場にも導入するほか、今後さらに成田空港や関西空港などへも拡大していく予定だといいます。ただ、外国人の入出国手続きへの適用は、現在のところ予定していないそうです。
顔認証ゲートの操作方法。顔写真の撮影時に帽子やマスク、メガネなどをかけていると、認証を妨げることがあるという(画像:法務省)。
証印については、東京入国管理局羽田空港支局審査管理部門によると「世界的に省略される傾向にある」とのこと。「お隣の韓国など、証印を廃止する国も増えています。この流れはどこの入国審査場でも了承していますので、日本の出国証印がないために渡航先の国で入国審査ができない、ということはありません」と話します。
顔認証ゲートの導入が進めば、将来的には日本の出入国証印も見られなくなっていくのかもしれません。
【写真】日本の出入国証印
旅券に捺された日本の出国証印や入国証印(乗りものニュース編集部撮影)。