上西小百合衆議院議員とのやりとりで注目されている浦和レッズ。先日、Jリーグが開示した資料、2016年度のJクラブ個別経営情報に目を通せば、そのクラブ予算が相変わらずJリーグ各クラブの中で断トツのトップを行くことが確認できる。営業収益を翌年の予算と見なせば、浦和の今年度の年間予算は約66.06億円だ。2位は鹿島の約55.82億円なので、約10億円以上の開きがある。

 Jリーグ一番のビッグクラブ。まさに浦和1強状態だ。いま始まった傾向でもない。にもかかわらず、Jリーグでは2006年を最後に10年以上、優勝(年間チャンピオン)から遠ざかっている。2012年にミハイロ・ペトロビッチが監督に就任して以来の成績も、3位、6位、2位、3位、2位。惜しいといえば惜しいが、ビッグクラブが優勝を逃し続けてきた痛恨の足跡というべきだろう。

 最も惜しかったのは昨季。ファーストステージ3位、セカンドステージ優勝。勝ち点では年間1位だった。鹿島と争ったチャンピオンシップも、第1戦のアウェー戦で1−0の勝利。優位な立場で臨んだ第2戦のホーム戦も、興梠の先制ゴールで通算スコアを2−0とした。

 そこから2−2にされ、アウェーゴールルールで鹿島に敗れる展開は、痛恨の極み。予算額で上回る強者が逆転を許す様は、弱者の視点で言えば痛快劇だ。浦和にはショックの大きい敗戦だった。

 そのサッカーは守備的だ。戦力がありながら、後方に人が多いので、その結果、非効率サッカーに陥る。昨季のチャンピオンシップ決勝しかり。その非効率性は一目瞭然になったはずだ。

 それを5シーズンも続けた。優勝を逃し続けてきた理由そのもの。これだけでも、監督交代の必然性は十分にある。だが、追及すべきメディアは、ペトロビッチが会見で、自らのサッカーを攻撃的だと称せば、そのまま書いてしまう始末。サッカーそのものの善し悪しについて、ほとんど言及できていない。 

 で、今季だ。現在9勝8敗2分で8位。昨季の終わりに抱いた、立ち直るのは簡単ではないとの予感が当たってしまった格好だ。過去10試合では3勝6敗1分と、悪い流れに歯止めが掛からない状態にある。監督交代のタイミングを迎えている。と言うより、もはや遅いというべきか。

 チェックしたわけではないが、ネットでは、サポーターの一部が不満をぶつけているだろうし、監督交代も声高に叫んでいるに違いない。しかし、進退問題について言及するメディアはいない。クラブの姿勢を追及する様子もない。

 きわめて不自然、不健全な状態にある。まず、鋭い反応を示すべきは地元メディアだ。テレビ埼玉、埼玉新聞、NHKさいたま……は、地元メディアとしての真価が問われている状態にある。

 地元メディアとはいったい何か。全国各地に点在するJリーグ各クラブとの関係は概ね、対等ではない。クラブあっての地元メディア。ぶら下がっている。クラブにとって都合の悪い、批評性の高い記事を積極的に書こうとする気質はない。基本的にはヨイショ。クラブを温かい目でみつめている。

 日本代表を取り巻く中央のメディアも、似たようなものだが、Jリーグの地元メディアよりさすがに厳しめだ。批判という文化はギリギリ保たれた状態にある。ネットの時代になり、東京も地方も、メディアはすべて同じ土俵に立てる状態にあるにもかかわらず、元気のなさが目立つ。存在感は希薄だ。

 浦和および埼玉県は、地方と言っても、東京まで数十分の通勤圏だ。ここから埼玉県ですよ、という境界がハッキリしないきわめて東京的な地方。千葉、神奈川もそうだが、気がつけば県境を越えている。にもかかわらず、しっかり地方している。地味で大人しい存在になろうとする。