【戸塚啓コラム】Jリーグ前半戦、各クラブの強化の成果やいかに
動いたチームと、動かないチームがある。
J1のアルビレックス新潟が、三浦文丈監督の休養に踏み切った。
今季はブラジル人選手が入れ替わり、日本人選手の主力格も移籍した。チームが練度を高めるまでに時間がかかる一方で、三浦監督はコーチ経験を持つ。通常の新監督より素早くチームを掌握できるとの期待を抱かせたが、10試合を消化して1勝2分7敗は17位だ。2シーズン連続で年間15位に終わっていることも含めて、早めに手当てをしたのだろう。
その新潟より成績がふるわないのが、大宮アルディージャである。1勝1分8敗の勝点4で、最下位に低迷しているのだ。
9節の浦和レッズ戦に1対0で勝利し、浮上のきっかけをつかんだかに見えた。ところが、10節は北海道コンサドーレ札幌に0対1で敗れた。
ここまでわずか3ゴールと、得点力不足は深刻だ。清水エスパルスから獲得した大前元紀は、パスの受け手にも出し手にもなれる。川崎フロンターレへ移籍した家長昭博に、得点能力で劣るところもない。補強の収支は決してマイナスではないのだが、大前を中心とした新たなオートマティズムの構築には相応の時間が必要だ。
ところが、開幕から躓いてしまった。結果が出ていないだけに、時間的な余裕を持てない。渋谷洋樹監督はメンバーの入れ替えやシステムの変更に活路を求めてきたが、それも実を結んでいないのが現実だ。浦和戦は大前に出番が無く、札幌戦はメンバーにも選ばれなかった。
浮上のきっかけを見つけられていない大宮だが、チームは渋谷監督のもとで週末のリーグ戦へ向けて準備を進めている。新潟とは対照的に、こちらは現時点で続投を選択している。
渋谷監督に弁解の余地があるとすれば、キャプテンでセンターバックの菊地光将の戦線離脱だろう。ここまでの10試合で、彼がピッチに立ったのは4試合だけだ。菊地とともに最終ライン中央を担う河本裕之も、札幌戦は負傷で出場できなかった。彼らの復帰によってチームが安定感を取り戻せるとの期待も、続投の理由となっているのかもしれない。
昨季5位の大宮を襲う不振は、シーズン序盤の驚きのひとつである。それ以上に戸惑いを運んでくるのは、サンフレッチェ広島の低迷かもしれない。
一昨シーズンのJ1リーグ王者が、ここまで1勝3分6敗の成績に終わっているのだ。勝点6は16位である。降格圏なのだ。
1点差負けが5つある。「競り負けている」とか「勝負強さに欠ける」という言い方はできる。その一方で、ドローや敗戦に終わったゲームでも、相手を上回るシュートを記録したゲームは多い。
1対2で敗れた札幌戦では、相手のほぼ3倍に当たる22本のシュートを浴びせた。ホームの横浜F・マリノス戦でも、相手の2倍以上の19本を記録している。現状では「もうひと押しが足りない」のだが、「あとひと押しで好転する」と考えることもできる。
そもそも、3−4−2−1のシステムは成熟している。リーグ10節のヴィッセル神戸戦では、森崎和幸が今季リーグ初出場を飾った。結果は出ていないものの、監督交代といった大きな変化は必要としないとの判断だろう。
成績不振を理由に監督交代へ踏み切るのか。いまはまだ、動かないのか。
シーズン中のこの時点では、どちらが正解かどうかはジャッジできない。クラブとしてのノルマを最終的にクリアできたかどうかで、各クラブの強化方針に「○」か「×」がつけられる。
いずれにせよ、現実はシビアになりつつある。首位の鹿島アントラーズは、すでに勝点21を記録している。2位の浦和レッズ、3位のFC東京、4位のガンバ大阪は、勝点19をマークしている。上位陣との勝点差が、挽回可能な範囲を超えつつあるのは厳然たる事実だ。
J1のアルビレックス新潟が、三浦文丈監督の休養に踏み切った。
今季はブラジル人選手が入れ替わり、日本人選手の主力格も移籍した。チームが練度を高めるまでに時間がかかる一方で、三浦監督はコーチ経験を持つ。通常の新監督より素早くチームを掌握できるとの期待を抱かせたが、10試合を消化して1勝2分7敗は17位だ。2シーズン連続で年間15位に終わっていることも含めて、早めに手当てをしたのだろう。
9節の浦和レッズ戦に1対0で勝利し、浮上のきっかけをつかんだかに見えた。ところが、10節は北海道コンサドーレ札幌に0対1で敗れた。
ここまでわずか3ゴールと、得点力不足は深刻だ。清水エスパルスから獲得した大前元紀は、パスの受け手にも出し手にもなれる。川崎フロンターレへ移籍した家長昭博に、得点能力で劣るところもない。補強の収支は決してマイナスではないのだが、大前を中心とした新たなオートマティズムの構築には相応の時間が必要だ。
ところが、開幕から躓いてしまった。結果が出ていないだけに、時間的な余裕を持てない。渋谷洋樹監督はメンバーの入れ替えやシステムの変更に活路を求めてきたが、それも実を結んでいないのが現実だ。浦和戦は大前に出番が無く、札幌戦はメンバーにも選ばれなかった。
浮上のきっかけを見つけられていない大宮だが、チームは渋谷監督のもとで週末のリーグ戦へ向けて準備を進めている。新潟とは対照的に、こちらは現時点で続投を選択している。
渋谷監督に弁解の余地があるとすれば、キャプテンでセンターバックの菊地光将の戦線離脱だろう。ここまでの10試合で、彼がピッチに立ったのは4試合だけだ。菊地とともに最終ライン中央を担う河本裕之も、札幌戦は負傷で出場できなかった。彼らの復帰によってチームが安定感を取り戻せるとの期待も、続投の理由となっているのかもしれない。
昨季5位の大宮を襲う不振は、シーズン序盤の驚きのひとつである。それ以上に戸惑いを運んでくるのは、サンフレッチェ広島の低迷かもしれない。
一昨シーズンのJ1リーグ王者が、ここまで1勝3分6敗の成績に終わっているのだ。勝点6は16位である。降格圏なのだ。
1点差負けが5つある。「競り負けている」とか「勝負強さに欠ける」という言い方はできる。その一方で、ドローや敗戦に終わったゲームでも、相手を上回るシュートを記録したゲームは多い。
1対2で敗れた札幌戦では、相手のほぼ3倍に当たる22本のシュートを浴びせた。ホームの横浜F・マリノス戦でも、相手の2倍以上の19本を記録している。現状では「もうひと押しが足りない」のだが、「あとひと押しで好転する」と考えることもできる。
そもそも、3−4−2−1のシステムは成熟している。リーグ10節のヴィッセル神戸戦では、森崎和幸が今季リーグ初出場を飾った。結果は出ていないものの、監督交代といった大きな変化は必要としないとの判断だろう。
成績不振を理由に監督交代へ踏み切るのか。いまはまだ、動かないのか。
シーズン中のこの時点では、どちらが正解かどうかはジャッジできない。クラブとしてのノルマを最終的にクリアできたかどうかで、各クラブの強化方針に「○」か「×」がつけられる。
いずれにせよ、現実はシビアになりつつある。首位の鹿島アントラーズは、すでに勝点21を記録している。2位の浦和レッズ、3位のFC東京、4位のガンバ大阪は、勝点19をマークしている。上位陣との勝点差が、挽回可能な範囲を超えつつあるのは厳然たる事実だ。
1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを連続して取材している