竹達彩奈「笑ってここまで来られたかと言うと、そうでもなかった」――3rdアルバム『Lyrical Concerto』に至る道のり
やわらかなピンクのインテリアに囲まれ、キュートに微笑む竹達彩奈。3rdアルバム『Lyrical Concerto』のジャケット写真の印象を抱えたまま対面した彼女は、ふわふわと可愛いだけじゃない、芯の通った強さを備えた魅力的な女性だった。その魅力はいったいどこからくるのだろうか? 悩み戸惑い、それでも前を向いて歩んできた5年間の音楽活動について、たっぷりと振り返ってもらった。

撮影/川野結李歌 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.



デビューから5年。あっという間に感じるけれど…



――2012年に『Sinfonia! Sinfonia!!!』でソロデビューされて、今年は5年目のシーズンになりますが、ご自身の音楽活動を振り返ってみていかがですか?

駆け抜けてしまえばあっという間に感じますが、ここまで来たのは…わりと簡単ではなかったなあっていうのが本音ですね。

――難しい部分があったということでしょうか?

そうですね。ゼロから自分の名前で作品を作ることに対して、責任感が芽生え始めちゃったらもう…気になってきりがないし(笑)。担当のプロデューサーさんが異動で替わるたびに、新しい風が吹いてくれるのもすごく嬉しいんですが、新しいチームに慣れるまでが大変だったりもして……。すべてが笑ってここまで来られたかと言うと、そうでもなかった……ですね。でも、過ぎてしまうと「楽しかったね」って思えることもいっぱいあって。

――どういった「楽しさ」でしょうか?

やっぱり私は役者なので、作品を作らせてもらうっていうのはすごく好きだし、楽しいんですよね。ものを作る瞬間に関われている、その時間がすごく楽しくて、「次はどんなものを作ろうか?」って、みんなで相談している時間も楽しいんです。



――なるほど。デビューから5年の歩みについては、のちほど詳しくお伺いしたいと思うのですが、まずは、11月2日にリリースされた3rdアルバム『Lyrical Concerto』について。『ユメイロソレイユ』は、竹達さんが作詞も手がけられたんですよね。

『ユメイロソレイユ』は、『キミイロモノローグ』のアンサーソングとしてずっと作りたいと思っていた曲なんです。『キミイロモノローグ』が初めて自分がゼロから作詞をさせてもらった曲で、男の子目線の曲だったので、今度は女の子目線の曲が書けたらいいなと思って作りました。



――結果的に、今回のアルバムのなかでも代表曲のような作品に仕上がっていますね。

MVまで作ってもらえて、曲としてどんどん大きくなっていったのが本当に嬉しくて、ありがたくって、頑張ってよかったなあって思えた一曲です。

――歌詞はスラスラと書けましたか?

正統派な女の子でいくか、ちょっとツンデレにしようか、根暗にしようかっていう、キャラクターの性格を決めるまではけっこう時間がかかったんですけど、決まればわりとあっという間で、一日くらいでできあがりました。

――歌詞も可愛くて、ふわふわした女の子みたいなイメージがあって、MVもやわらかい世界観で素敵でした。「こういう雰囲気でやりたい」というのは竹達さんから伝えたのでしょうか?

『ユメイロソレイユ』の歌詞は、女の子がおひさまの下でふわふわ散歩しているイメージで作らせてもらったので、MVでもそのイメージを活かせたらいいなあって話をさせてもらって、そこからさらに監督が膨らませて作ってくれました。



歌い方ひとつにも、譲れない“こだわり”がある。



――竹達さんのMVって毎回まったく違う世界観で、次は何がでてくるのかな? って楽しみなんです。

嬉しい。ありがとうございます(笑)。

――そのときに思い浮かぶものが、いつも違うのでしょうか?

『齧りかけの林檎』あたりからMVもこうしたいって言わせてもらうようになったんですが、たぶん自分でレコーディングしながら……今回は作詞もしているので、ストーリーがもうできているんですよね。なので、こういう感じにしたいっていうのが芽生え始めて、口うるさく伝えちゃったかも(笑)。

――普段から「あ、これってネタとして使えるな」って考えたりしていますか?

あー! 考えてます、たしかに! 「このネタ面白いから、いつか使おう」って思うんですけど、すぐに忘れるんですよ(笑)。書いておいたりすればいいんですけど(笑)。たまにふっと思い出すんですよね。

――そのほかに、アピールしておきたい曲はありますか?

えー! アピール…全部したい(笑)。難しいですね、これっていうのが。



――では…個人的にとっても素敵だなぁと思った、3曲目の『SWEETS is CIRCUS』についてお伺いしてもいいでしょうか?(笑)

あー、サーカスですね! 私もすっごいお気に入りです。夜の曲が欲しいと思っていたのと、おもちゃ箱をひっくり返したような曲が欲しいとずっと思っていて…「サーカスだ!」と(笑)。

――それも、ただのサーカスじゃない感じです。

そうですね。夜のちょっと怖い…内緒のサーカスみたいなのがいいって思ってディレクターさんに相談したら、「こういう感じですか?」って出してくださったのがPlus-Tech Squeeze Boxさんの曲だったんですね。それを聞いて「それです!」って。

――なるほど! 『SWEETS is CIRCUS』はまさにPlus-Tech Squeeze Boxのハヤシベトモノリさんが作詞・作曲・編曲を担当されていますね。

そうなんです。そういう経緯で書いていただけることになって、理想どおりのサーカス曲を書いてくださって。2番になったらちょっと怖くなる感じとかもすごいお気に入りです。

――明るいだけじゃなくて、不思議な雰囲気のある曲ですもんね。

はい。最初ディレクターさんから「もっと元気に歌ってください」って言われたんですけど、なんかちょっと不思議感というか、怖い感じ? 可愛いんだけどちょっと怖いみたいな雰囲気を出したかったから、なんとも言えないような声の出し方をしてみて…芯があるようでないような、わからない感じ(笑)。それで、「私はこの歌い方をしたいんです!」ってこだわらせてもらいました。




コンチェルト=協奏曲、タイトルに込めた思い。



――アルバムのタイトルはご自身でつけていらっしゃるんでしょうか? これまでの3枚とも音楽用語が入っていて素敵だなあと思ったのですが。

毎回、私がつけています。『Sinfonia! Sinfonia!!!』でデビューさせてもらったので、最初のアルバムはデビューからまとめた一枚ということで『apple symphony』にして。それから音楽用語を使うのが好きになったんですよね。

――なるほど。そうすると、2枚目は…。

クロレっていうお姫様から、王子様へのラブソングみたいなイメージで『Colore Serenata』にしました。

――今回の3枚目は「コンチェルト」という言葉を使われていますね。

コンチェルトって協奏曲みたいな意味もあるので、ちょうど3枚目できりがいいなあと思って。ただ、コンチェルトの前のリリカルを決定するまでは、すごい時間かかりました。いろいろ案があったなかから多数決をとった結果、リリカルが1位になりました(笑)。

――そしてこのアルバムを引っ提げて、12月25日には大阪、来年1月15日には東京でライブを予定されています。

まだどういうふうになるのかわからないんですけど、本当に自分が作りたいアルバムを作らせてもらえたので、ライブでも、今回のアルバムのテーマである「二次元」を象徴できるような世界観にしたいなと思います。



――今日はこの取材の前に、リリースイベントでお渡し会もされたそうですが、ファンのみなさんの反応はいかがでしたか?

「イベントに初めて来ました」とか、「声優さんのことは全然知らないんですけど、竹達さんに興味が湧いたので来ました」とか、「友達の付き添いで来たんですけど、応援しています」みたいな方もいて(笑)、いろんな方が来てくださって…スゴいなと思いました。

――5年も続けているなかで、さらに新しいファンが生まれるというのは嬉しいですね。

驚きましたね。5年間やらせていただいて、初めて来た人ってたくさんいるんだ! って。古くから応援してくださって、もう顔なじみみたいな(笑)方たちもたくさん来てくださいましたけど、新しく来てくださった方もたくさんいらっしゃって…この5年のあいだで、いろんな人が応援してくださっているんだなっていうのを今回改めて感じられた、すごくいい時間でした。

――初めて来られた方たちは、なにがきっかけだったのでしょうか?

なにがきっかけだったんでしょうね(笑)。「3rdアルバムから応援しています」っていう方がけっこういらっしゃったんですよね。あと、「この3rdアルバムがいちばん好きです」っておっしゃっていただいたり。それってすごく嬉しいことで。「前のほうが良かった」よりも、塗り替えていけるほうが素敵だと思うので、そういうふうに言っていただいたのは嬉しいですね。



「声優として歌を歌うことで、何ができるんだろう?」



――現在、竹達さんの音楽活動はテーマを「二次元」とした第3シーズンを迎えていらっしゃるとのことですが、第1シーズンからどういった経緯を辿っているのか、教えていただけますか?

第1シーズンは2012年にソロデビューしたばかりの頃で、コアな音楽が好きな、とてもマニアックな(笑)初代プロデューサーさんとディレクターさんに引っ張ってもらって、一緒に音楽を作っていました。打ち合わせでも全然知らない音楽用語がいっぱい出てきて…すごく新鮮だったし、楽しかったし、勉強になった第1シーズンでしたね。

――そのチームで1stアルバムまでをリリースして…。

初代プロデューサーとディレクターが一気にいなくなって…異動で(笑)。そこから新しいプロデューサーさんのもとで、第2シーズンが始まるんです。

――大きな変化ですね。

それまではコアでマニアックな音楽を作るぞ! みたいな感じでしたが、新しい風が吹いたことによって、またちょっと雰囲気が変わったんですよね。それもすごく楽しくて、「こういう音楽の作り方もあるんだ」って勉強になった一方で、急にチームが変わったことで「どうしよう、どうしよう」ってテンパり始めた時期でもあります(笑)。



――第2シーズンはアニメのタイアップもありましたね。

そうですね。それまで全部ノンタイアップでやらせていただいてたんですが、第2シーズンからアニメのタイアップがつくようになって。「え! どうしよう。すっごい嬉しいけど、どうしたらいいかわかんない!」って(笑)。

――しかもオープニング曲で…。

もう、テンパりますよね(笑)。『デンキ街の本屋さん』のオープニング曲(『齧りかけの林檎』)で…責任重大ですから、すごく悩んで、いろんな人と相談しながら作らせていただきました。大好きな曲で、いまも大事に歌わせてもらっています。



――第1シーズンとの音楽に対する意識の違いなどはありましたか?

自分の意見を言い始めましたね…自我が芽生えた、みたいな(笑)。自分が作りたいものを「こうやって作りたいです!」って言い始めて、第2シーズンで作らせてもらった後に、「私は次、なにを作りたいんだろう?」って思い始めたところから第3シーズンが始まって、「二次元」というテーマが生まれました。

――その「二次元」というテーマは、竹達さんから出てきたのでしょうか?

そうですね。「声優として歌を歌わせてもらうって、どういう意味なんだろう? 声優で歌うって、なにができるんだろう?」って考えたときに、私のなかの空想で、好きな世界観を二次元風に作ることができたら楽しいなあって思って。そうしたら、声優ならではの表現の仕方や、新しいなにかが生まれるんじゃないかと思って、「二次元をテーマにやりたい」と提案しました。



──これまでいろんな声優さんにお話を伺ってきたなかで、みなさん「声優が歌うことの意味」というのを模索していらっしゃって、実際に落とし込むまでに時間がかかっている印象があります。だから第3シーズンでようやく「二次元」というテーマが出てきたと伺って、とても納得しました。

そうですね。正直な話、音楽に対して相当後ろ向きなところからスタートしたので、前向きになるまでにやっぱりすごい時間がかかりました。最初は「音楽をやるって、どうすればいいの?」とか、「お芝居をしたくて声優を始めたけど、音楽ってどうやって作ったらいいの?」って、本当に後ろ向きのことばかり考えていたんですよね。

――声優さんが歌う場合、「どの声で歌うのか?」というところから始まるわけですよね。

そうなんです。まず地声を探すところからスタートしましたね。お芝居で低いトーンや高いトーンを出しすぎて、「どれが私の地声なんだろう?」って思い始めちゃって、自分の声がわからないんですよね(笑)。

――いまはどうですか?

いまだに「地声ってなんだろう?」って思うこともありますけど、低いトーンや高いトーンのほかにも、ボソボソしゃべったりとか…お芝居で演じてきたキャラクターを活かして表現できたら楽しいなあって思って、今回の『Lyrical Concerto』ではいろんな声の出し方や歌い方に挑戦して、いままで培ってきたお芝居や、出会ってきた役のおかげで生まれているところがたくさんあります。



オフの日は本屋へ。漫画をオトナ買いするのは理由がある!



――今日たくさんお話を伺ってみて、竹達さんって石橋を叩いて渡るタイプなのかなあと思ったのですが…。

まさに私、その話をさっきしていたんですよ!「石橋を叩いて渡るタイプだから、全然ニュースがない」って(笑)。「最近、ニュースはなにかありますか?」って聞かれて、「んー、ないなあ」って(笑)。つねに叩いて叩いて「大丈夫かな? 大丈夫かな?」って確認して過ごしているから、事件も事故もなにも起きないんです(笑)。

――イメージとしては、叩いたカケラを全部ふりかぶって…。

あははは!

――それを全部自分の力にされているから、幅がどんどん広がっていってらっしゃるのかなあと。最初にとてもマニアックな音楽を作ることから始まったのも、いまにすごい繋がっていると思います。

それはそうですね。本当にアニソンとかしか知らなかったんですけど、みなさんがたくさん与えてくださって、勉強させていただきました。その結果、「こういう曲を作りたい」とか、「こういう曲はいままでなかったよね」って話ができるようになったと思うので、これまで一緒にお仕事をさせていただいたスタッフさんたちにはリスペクトが絶えないですね。

――最後にプライベートについて伺いたいのですが、お休みの日はどうやって過ごされていますか?

まず本屋さんに行って、漫画を大量に買います。30冊くらい(笑)。これ嫌い、つまんない、おもしろい、好きっていうのは、自分でお金を出してからこそ言える言葉だと思っているので、気になった作品や話題になっている作品は片っ端から買います。



――それは…すごいですね(笑)。

新刊で買うと作家さんにちゃんと印税が入るので、また素敵な作品を生み出してもらえるようにという思いも込めて。あとはゲームですね。ゲームも課金して、このゲームがどんどん繁盛しますようにって思いながら(笑)。全部そうですね。いい作品が生まれますように、いいゲームが生まれますようにって思いながら、お金を使って楽しんでいます(笑)。

――最近のマイブームはありますか?

なんだろう…カイロソフトっていう会社のアプリゲームを全部買っているんですけど、最近のアプリゲームにはないドット絵なんですよ(笑)。すごく幅広くて。温泉宿を経営したり、忍者の村を大きくしたり、天下統一を目指したり…最近リリースされたのは、音楽事務所を経営してタレントを育てるゲームですね(笑)。

――ドット絵で?(笑)

ドット絵です(笑)。最近ないじゃないですか、ドット絵で育成ゲームって。でもすっごい楽しくなっちゃって。

――気になりますね、それは。

「カイロソフト」で探してみてください(笑)。育成や経営ができるゲームが、だいたい数カ月に一回リリースされるので、それを毎回買っていますね。移動中はだいたいゲームをやっています(笑)。



【プロフィール】
竹達彩奈(たけたつ・あやな)/6月23日生まれ。埼玉県出身。O型。2009年に声優デビュー。主な出演作に『けいおん!』(中野 梓)、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(高坂桐乃)、『だがしかし』(枝垂ほたる)、『ディバインゲート』(ヒカリ)など。ソロアーティストとしては、2012年4月に『Sinfonia! Sinfonia!!!』でデビュー。2016年11月2日に3rdアルバム『Lyrical Concerto』をリリースした。
【Twitter】@ayana_take
【HP】http://ayanataketatsu.jp/

■3rdアルバム『Lyrical Concerto』

左より、完全限定盤、初回限定盤、通常盤

【完全限定盤】
品番:PCCG-01553
価格:¥6,500(本体)+税

【初回限定盤】
品番:PCCG-01554
価格:¥4,200(本体)+税

【通常盤】
品番:PCCG-01555
価格:¥3,000(本体)+税
PONY CANYON


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★★竹達彩奈さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント★★

今回インタビューさせていただいた、竹達彩奈さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

■応募方法:ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT


■受付期間:2016年11月30日(水)12:00〜12月6日(火)12:00

■当選者確定フロー
・当選者発表日/12月7日(水)
・当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、発送先のご連絡 (個人情報の安全な受け渡し)のため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
・当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから12月7日(水)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただきます。12月10日(土)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。

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