広島カープの“指導法”に大リーグも注目!元選手・監督が語る、強さの秘密

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25年ぶりにリーグ優勝を果たした広島カープ。球団としては初めて本拠地でCSファイナルSを戦うことになります。その対戦相手は巨人を退けたDeNA。本塁打・打点で2冠に輝いた筒香を擁する難敵です。どのような結果になるのか、楽しみにしているファンも多いことでしょう。

広島カープといえば、昔から「年俸予算の少ないチーム」と言われてきました。確かにチーム方針としては、大物選手を獲得するというよりは、質の良い若手選手を発見し、チームに入れて徹底的に鍛える。

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そして、しっかりと戦える選手として1軍で活躍させるスタイルをとっています。もちろん、そのように戦っている球団は他にもあるのですが、その数が多いのが広島カープなのです。「育成の広島」といイメージがあるのもそのためでしょう。

そんな広島カープの内情に迫ったのが、選手・監督として優勝を経験し、現在は野球解説者として活躍する山本浩二さんと、現役時代にリーグ優勝に貢献し、自身もトリプルスリーを記録。また、広島カープの監督就任に続き、2016年8月には、アメリカ大リーグ、カンザスシティ・ロイヤルズの編成部門アドバイザーに就任した野村謙二郎さんです。

書籍『広島カープの血脈』は、このレジェンド2人が広島カープの強さの秘密を明かした一冊。その中で注目したいのが、広島の育成システムです。

広島カープでは、有望と思われる若手を積極的に試合に出します。「まだ試合に出すには早いかな」と思われる選手でも、一軍の試合で20、30試合は出場します。中には50試合ほど経験させても、という考え方も。このシステムの良い面は「自分の今のレベルと一軍選手のギャップを痛感できる」部分であると、同書で明かされています。

どんなにコーチが指導しても伝わらない経験や情報が実戦の中にはあります。実戦に出ることで、それに自身で気づける。これが選手をより成長させるのです。もちろん、全ての若手が一軍で成功するわけではないので、ダメなら二軍に送り返す。

選手は、「全然だめだった」「一軍はやっぱり凄い」とわかっているので必死に食らいつくのです。二軍で結果を出せば再び一軍へ。ただし、プロ野球はそんなに甘いものではりませんので、再度、二軍で頑張るということも案外多いとのこと。

そこは選手もコーチも苦しいのです。コーチング、選手を管理する立場からすると、『早く一軍に上がってきてほしい』と思うのですが、本人のことを考えると、『もう少し我慢して、本当の力をつけてから這い上がってほしい』と突き放すしかありません

出典『広島カープの血脈』


育成はすぐに結果が出るものではありませんので、選手をはじめ、コーチ、監督、経営陣すべてが苦しかったりするのです。しかし、その苦しさから目を背けずに徹底的に育てていくのが広島カープの伝統。そのためには同じ事を何度でも指導するし、できるまで粘っこく付き合う。これがこのチームに根付いているのです。

また、今年、アメリカ大リーグ、カンザスシティ・ロイヤルズの編成部門アドバイザーに就任した野村さんによると、大リーグもカープの指導方法に関心をもっているとのこと。

大リーグは、「ベースボールを楽しむというスタイルでやっている」とは野村さん。体格の大きな選手たちがパワーを見せつけるかのようにフルスイングする。観ていても気持ちの良いプレーが大リーグではみられますよね。

それに比べると日本の野球はまだまだ繊細。ただし、繊細だからこそ、アメリカ人が吸収するものもあるのです。なぜ、大リーグが日本の野球に関心を持つのか。それは、アメリカで結果を残せていなかった選手が、不思議と日本で活躍しているからです。

クイックモーションができなかった投手が日本に来てできるようになって、コントロールがバラバラだった選手の制球力が良くなって、フィールディングができなかった選手ができるようになるんです出典『広島カープの血脈』

野村さんからすると、これらは教えたらできること。しかし、大リーグではこれまで教えられてこなかったのです。日本にやってきた彼らは日本に来てそれを学び、活躍。そして、また、大リーグに呼び戻されるのです。すると、「日本の指導方法は素晴らしい」となるのです。

実際に渡米した野村さんには、向こうのコーチから「どんな練習があるんだ、もっと教えてくれ」と声をかけられたそうです。

今や、大リーグからも注目を集めるようになった、広島の育成システム。育成とはマニュアル通りに進めれば育つものではなく、そのワンシーン、ワンシーンに人と人との対話が存在します。この向き合う際に「粘っこくやる」「できるまでやる」という気持ちが、広島カープというチームにはあるのです。

いよいよ開幕するCSファイナルS。決して潤沢な資金があるわけでない「育成の広島」は、どのような結末を迎えるのでしょうか。