大型スマホがiPadやAndroidタブレットを減少させた? 次世代タブレットはキーボード付き2in1ノートPC化へ

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最近のスマホは画面サイズが大型化している。iPhone 6s PlusやXperia Z5 Premiumは5.5インチ、サムスンのGalaxy Noteシリーズは5.7インチ、さらにファーウェイのP8 Maxでは、なんと6.8インチまで巨大なサイズになっている。

ここまでスマホの画面が大きければ、動画や電子書籍を見るにもタブレットは不要かもしれない。
今まではスマホとタブレットを使用していた人も、今後は大画面スマホだけ使うという人も増えていくだろう。
初代モデルが熱狂的に受け入れられたiPad miniも、最新モデルiPad mini 4では以前ほどの人気や話題性はなくなっている。

大手調査会社IDCの報告にもその結果が表れている。2015年第2四半期(4月から6月)の世界のタブレットの出荷台数は前年と比べて7%の減少。シェアトップのアップルは18%の減少、2位サムスンも12%の減少と、上位2社はこぞって出荷数減となっている。
そもそもスマホは毎年買い替えても、タブレットは1度買えば数年間は使い続ける、という人が多い。

大型スマホの登場と買いかえのサイクルの長期化、これがタブレット出荷台数の減少につながっていると考えられている。

そこで各社はタブレットの新たな需要を生み出そうと、これまでには無かったタブレットを登場させている。それがキーボード付属のタブレットだ。


iPad Proはキーボードにもなるカバーが提供される


アップルが9月に発表した『iPad Pro』は筆圧を感知する専用のペンを使い、まるで本物の鉛筆のように絵や文字を書くことができる。それに加えて本体を保護するカバーにキーボードを備えた「Smart Keyboard」も販売される予定だ。
このカバー付ければまるでノートPCのように使うこともできる。

実はタブレット用のキーボードはこれまでもいくつかの周辺機器メーカーが販売してきた。
しかしメーカーによる専用品は、タブレット本体との一体感が大きく高まる。
キーボードを付けたタブレットは大きい画面のスマホではなく、ビジネスや学校でも利用できるノートPCとして使うこともできるのだ。

こうした動きはアップル以外の各社でも起きている。最近のタブレットは専用のキーボードが提供される製品が急増しているのだ。ソニーが昨年発売した『Xperia Z5』 Tabletもキーボード付属だし、グーグルが9月30日に発表したタブレット『Pixel C』もキーボード付属だ。


グーグルのPixel Cもキーボードを提供


実はタブレットのノートPC化は、Windowsタブレットの世界ではすでに数年前から始まっている。
「2-in-1」と呼ばれる、画面が外れるノートPCがすでに多数販売されている。
iPadや低価格なAndroidタブレットの登場以降、タブレットはノートPCの販売に大きな打撃を与えた。その影響を受けてWindowsのノートPCは、Windowsタブレットとして進化してきたのだ。

初期の2in1ノートパソコンはキーボード部分もサイズが大きく、タブレット部を取り外してもスタイリッシュではなかった。だが、マイクロソフトがキーボード付きの薄型カバーの『Surface』シリーズを投入してから「普段はWindowsタブレット、いざというときはWindowsノートPC」として使える製品が急増し人気となっている。

今や低価格の中華Windowsタブレットにもキーボードを付属させた製品があるし、日本でオリジナルスマホやタブレットを展開するジェネシスホールディングスからもキーボード付きWindowsタブレットが登場している。


2-in1のWindowsタブレット人気を作り上げたマイクロソフトのSurfaceシリーズ


タブレットとしても、ノートPCとして使えるWindows製品は、iPadなど人気タブレットに対抗するために生まれた。
一方、iPad ProやPixel Cなどの新世代のタブレットは、大画面スマホにシェアを奪われたことで、ノートPC分野へ進出を図ろうとしている。どちらも「タブレットでもありノートPCでもある」製品であり、製品としての垣根は無くなりつつある。これら2-in-1な製品は今やトレンドになりつつあるのだ。

IDCの調査でも2-in-1製品は今後出荷増が見込まれており、タブレットが2-in-1製品化するのは必然の流れなのだろう。

もちろんタブレットだけでも文字入力は可能だ。しかし、画面上に表示されるキーボードは画面を狭くするだけでなく、操作の邪魔になってしまう。文字入力を多用するシーンでは、外付けキーボードのほうが効率はよい。

仕事でタブレットを使う人は、商談中はタブレットだけを使い、報告書を書くときはキーボードを使えば作業効率も上がる。また学生も普段はタブレットで動画を楽しみ、レポートを書くときはキーボードを使う、といった使い分けも便利だ。

エントリーレベルのタブレットは、アマゾンの『Fireタブレット』のような低価格化がより一層進むだろう。
しかしハイエンドタブレットは、キーボードやキーボードカバーが標準で利用できるノートPC型に移行していく。

これから出てくるタブレットは、このように製品が2極化していくだろう。


山根康宏