ハリルホジッチ監督「塩対応」の真意を考察

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6月8日、日本代表の練習前3時間に記者たちは練習場に集まった。日本サッカー協会の広報担当が話し合いを求めたのだ。議題は、選手を記者が取材するエリア、ミックスゾーンでの対応についてだ。

同5日の練習後に広報担当が明らかにしたハリルホジッチ監督の要求は、

1.日々のミックスゾーンには選手を4名程度しか出さない
2.試合前日は選手をミックスゾーンに出さない

というものだった。理由は、「練習後に回復メニューをしたいから、できる限り早くホテルに戻りたい」というものだ。

約1時間の話し合いの中で出てきた意見としては、「なぜ報道は邪魔のような扱いを受けなければいけないのか」「ヨーロッパの基準と言ってもここはアジア」「南米の取材対応はもっと緩やか」「地方紙は選出されている地元チームの選手のコメントが取れなければ記事が作りにくい」などということ。

その中で記者側からは「試合前日までに各選手が1度はミックスゾーンで対応する」という提案がなされた。

話し合いの終了2時間後までに、ハリルホジッチ監督がこの案を了承したことがわかった。

試合前日を含めて選手はミックスゾーンに現れるが、イラク戦までの3日間、シンガポール戦の前の4日間については各選手が1回ずつ対応することになった。

だが、この"塩対応"とも言うべき取材制限には別の意味があるのではないか。

これまでは監督に対して非常に好意的な記事が多った。記者たちから誕生日のお祝いを用意してもらっていたことなどから、周囲の温かい目は十分に理解しているようだ。

そもそも選手が記者対応している時間は1人10分もないのだ。そこを制限することでの対立は見えていたはずだ。それでも規制したいと意思表示しつつ、練習の準備をしているわずかな間に妥協案を飲むことは考えにくい。当然「折衷案」を用意していたと考えられる。

実はハリルホジッチ監督の狙いは、妥協できることをぶつけ、あえてストレスを持ち込んだことなのではないだろうか。監督は選手たちに緊張感を求めているのと同じように、記者たちとの関係に緊迫感を持たせようとしているように思える。代表チームはピリピリとした雰囲気の中にこそ成長があるのかもしれない。

【日本蹴球合同会社/森雅史】