スマホ向け4Kディスプレイが開発されたが人間には認識できない?フルHD以上のディスプレイにメリットはあるのか

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IGZOディスプレイを開発しているシャープは4月13日、世界初のスマホ向け4Kディスプレイを開発したと発表した。2016年の量産化を目指すという。
具体的には5.5インチ 3840×2160ドットとなり、大型スマホ(ファブレット)への搭載が見込まれるだろう。

しかしながら、スマホに対して4Kディスプレイは本当に必要なのだろうか。

●そもそもドットの見えないディスプレイは存在する
人間の目で認識できる解像度には上限というものがある。
諸説あるが、300〜400ppiというもので、それを超えるとドットの粗さが見えなくなるというものだ。

今回開発されたシャープのスマホ向け4Kディスプレイは806ppiとされ、従来ディスプレイの約2倍の高精細なディスプレイとなる。
ちなみに、5.5インチフルHD解像度のiPhone 6 Plusのディスプレイは401ppiだ。
試しにiPhone 6 Plusの画面に思いっきり目を近づけてディスプレイ表面を見てみたが、ドットは見えなかった。なので、4Kディスプレイであれば、人の目で認識できる範疇を超えていることがわかる。

そもそも「ppi」というのは、「pixel per inch」の略で、1インチ四方(2.54cm四方)の中にいくつのドットがあるかを指している。
これが300を超えると、人の目では認識が難しくなると思って良さそうだ。
ちなみに、300を超えるスマホだが、Retinaディスプレイを初めて採用したiPhone 4の時点ですでに326ppiとなっているため、現在は多くのスマホが超えていると言えよう。

さらに一般的なカラー印刷の解像度についても触れておこう。
一般的なカラー印刷の解像度は、400ppi程度とされている。これも人間の目に認識できるレベルを超えているため、それ以上の解像度は、出力に時間がかかってしまうなど、デメリットが大きくなってしまうのだ。

●スマホ向け4Kディスプレイは時期尚早か
そこで、シャープが開発したスマホ向け4Kディスプレイはどうだろう。
メリットは、4K対応機器が増えることで4Kコンテンツの普及がさらに見込めるとしているが、5.5インチ、806ppiという超高精細ディスプレイのデメリットは以下のようになる。

・表示にたいしてより大きなマシンパワーが必要となる
ディスプレイが高精細になればなるほど、より多くのドットの点灯、消灯、点滅、色分けなど管理する必要が出てきてしまうため、より大きなマシンパワーが必要となってしまう。
CPUだけではなく、ビデオチップも高性能でなければならない。
そのため、これらのハードウェア性能も一緒に上がらないと、従来のHDやフルHDディスプレイよりも表示がもたついたり、ゲームでは表示の処理が落ちたりする原因となる可能性もあるだろう。

・バッテリーの減りが早くなる
マシンパワーをより多く使うということは、電力もそれに合わせて必要となる。つまり、バッテリーの減りが早くなるのだ。バッテリー容量の限られているスマホでは、致命的な消費電力になる可能性がある。

・一部のコンテンツが小さく表示されてしまう
例えばHDやフルHD向けに撮影された写真や動画などは、解像度が足りないため中心部に少し小さく表示されてしまうかもしれない。そのため、5.5インチディスプレイの中心部にちょこんと4インチぐらいの大きさで動画を見なければ行けない場合も出てくることだろう。

・さらに一部コンテンツがぼやけてしまう可能性も
4Kディスプレイ向けに作られた写真や動画以外では、4Kディスプレイに表示させるため、拡大表示する必要がある。その際、機械的に拡大しているため、写真や映像がぼやけてしまう可能性がある。

・より多くのデータ容量を使ってしまう
ディスプレイが高精細になればなるほど、データ量が増えてしまう。例えば動画の場合では、1分あたり400MB近いデータ量を使うため、1時間も視聴しようものなら約24GBも必要となってしまう。
光回線のWi-Fiであればまだしも、これがLTEなどのモバイルデータ通信では、すぐに上限に達してしまい通信速度制限の対象になるだろう。


以上のように、スマホ向け4Kディスプレイはメリットよりもデメリットのほうが非常に多いのが現状だ。
メリットが「4Kコンテンツの普及が見込める」という時点で、消費者ではなくコンテンツ提供者のほうを向いている状態である。
もっとも大きな問題は、「人間の目で認識できないレベルに達しているのに、どうしてそれ以上の高精細化が必要なのか」である。
それをクリアするのは、5.5インチで4Kという超解像技術の恩恵を受けられるコンテンツが登場するかによることだろう。


布施 繁樹