『精選女性随筆集中里恒子野上彌生子』(中里 恒子野上 彌生子小池 真理子選) 川端康成や小林秀雄、白洲正子らにあつい信頼を寄せられていた京都の古美術商・柳孝は、中里恒子の魅力について、比類ない端的なことばで表現している。曰く、「眼すじの良い方」(「眼すじの良さ」、『中里恒子全集第18巻月報』、一九八一・三、中央公論社)。中里恒子が柳孝の店を初めて訪れたのは、後に歴史小説『閉ざされた海』(