世界中で一躍人気となったヒットアイテムだが……

写真拡大

 ここ最近、街でよく見掛けるようになった「自撮り棒」。棒の先端にスマホを装着して写真や動画を撮影することができる便利ツールであり、米『TIME』誌に2014年のヒット商品の一つとして紹介されるなど、全世界で流行している。

 実は1980年代にミノルタカメラ(現・コニカミノルタ)が世界で最初に開発した「日本発」の製品なのだが、当時は需要がなく珍発明扱いされていた。だが、スマホの普及によって復権を果たした格好だ。

 日本でも若い世代を中心に利用者が急増中だが、マナーや安全性の問題点が浮上。使用禁止を打ち出す施設が世界的に増加するなど、その是非をめぐって議論が起きている。

日本でもディズニーランド&シーで使用禁止に

 すでにアメリカのスミソニアン博物館やニューヨーク近代美術館、イギリスのナショナルギャラリー、フランスのベルサイユ宮殿などといった世界的な観光地が自撮り棒の使用を禁止する方針を打ち出した。さらにパリのルーブル美術館も使用者の急増を懸念し、展示物にカメラを向けないようにルールの厳守を呼び掛けている。

 その原因は大きく分けて二つ。人が密集する観光地では自撮り棒が他のお客さんに当たってしまうなどのトラブルが少なからずあり、安全面に配慮するという意図が。もう一つは自撮り棒を振り回すことで貴重な展示品に当たって破損してしまう恐れがあるという点だ。

 日本では写真が禁止されている美術館が大半だが、海外では撮影が許可されている場合が多数。今まで自撮り棒で特に大きな問題は報告されていないが、利用者があまりに急増している状況を受けて各施設が早めの対策に乗り出した結果といえる。

 日本でも東京ディズニーリゾート(東京ディズニーランド/東京ディズニーシー)がいち早く自撮り棒の使用を禁止にした。同施設では自撮り棒だけでなく三脚などの撮影補助機材の持ち込みも禁止しており、撮影の際はセルフタイマーの使用やキャスト(園内スタッフ)に声を掛けてほしいと呼び掛けている。

 また、イギリスでは自撮り棒を禁止にするライブ会場が増えており、これは安全面だけでなく「後ろの観客に迷惑」という点も大きな理由になっている。同じ理由で英サッカーチームのアーセナルとトッテナムが「サポーターから苦情があった」としてスタジアムでの使用を禁止した。

迷惑? 過剰反応? マナーに賛否

 上述のように特定施設での自撮り棒の使用に関しては、安全性をめぐって「危険だ」「過剰反応では」と賛否が分かれている。そもそものマナーの問題でも議論があり、国内の掲示板サイトでは以下のような批判が飛び交っている。

「混んでるところでやられると迷惑なんだよ」
「鉄の棒だから凶器と変わらん」
「見た目が貧乏くさいから早く廃れてほしい」
「自撮り棒を持ってる奴に限ってマナーが悪い」

 その一方で自撮り棒ユーザーからは、

「場所をわきまえれば目くじら立てる必要はない」
「マナー周知が進めば大丈夫」
「みんなが楽しんでいるのにケチつけることないしょ」
「一人旅行の必需品だから冷たい目で見ないでほしい」

 との声もあり、意見が分かれているようだ。市民権を得てから日が浅く物珍しさから目を引く存在であり、マナーの浸透が追いついていないことからも不快感を抱いている人たちが少なからずいるようである。

さらには「電波法違反」の落とし穴まで

 自撮り棒をめぐる問題はこれだけではない。現在は無線機能でカメラ撮影ができるタイプが主流になっているが、この無線は電波法の影響下にある。技術基準適合証明(技適マーク)が付いている製品ならば問題ないが、マークのないものを使った場合は電波法違反の疑いで100万円以下の罰金または1年以下の懲役となる可能性があるのだ。違法の自覚がなくとも「うっかり作動させただけで懲役刑」ということも理論的にはあり得る。

 マークがついていても海外での使用に関しては保証がない。日本では適法製品でも国外では違法という可能性があるため、海外旅行では注意が必要だ。逆に海外で買った自撮り棒は日本国内での使用に「違法」の危険が伴う。

 また、認可を受けていない粗悪品が数多く出回っている韓国では政府が販売業者の取り締まりに乗り出す事態になっており、各国で悩みのタネになっているようだ。

「自撮り棒に限らず、海外製のパソコンなどでWi-Fi接続すれば『違法』と判断される危険性がある。問題は電波出力の大小。微弱なものならば技適マークがなくとも法律で取り締まられることはないのですが、ユーザーが自分の使っている製品の電波出力がどの程度なのか知るのは非常に難しい。結果、現状ではマークの有無に頼るしかない。ワイヤレス機器の普及に各国の法律が追いついていない結果といえます」(IT関係者)

 少し前までは、ここまで無線機器が身近になるとは誰も思っていなかっただろう。自撮り棒の急激なブームが法律を遥かに追い越してしまったため、混乱を生みかねない状況につながっている。

 ケータイが普及しだした時も「電車の優先席付近での使用」などマナーや利方法をめぐって議論があったが、それと同じことが自撮り棒ブームで再び起きているといえるだろう。自撮り棒が単なるブームではなく生活に定着すれば、次第にマナーや法律が追いついてくるのだろうが、それまでは今後も賛否を巻き起こすことになりそうだ。

(文/佐藤勇馬 Photo by R4vi via flicker)