最終ラインで何とか踏ん張っていたミランだが、82分にゴンサロ・ロドリゲスの同点ヘッドを許し、いつも通りに崩れた。組織力の低いチームがその限界を露呈した試合だった。雨でスリッピーな状況でなら低い遠めからのシュートも有効なはずなのに、シュートはわずか3本と、あらゆる面で判断力の拙さも目立った。 (C) Getty Images

写真拡大 (全2枚)

 幸運なかたちで先制点を得ながらも、これを守りきるどころか、終了間際に逆転ゴールを決められて敗北を喫したフィオレンティーナ戦のミラン。前節ヴェローナ戦に続いて土壇場で失点を喫したが、学習能力が低いというのは少し違うかもしれない。
 
 おそらく、選手は失敗を繰り返すまいと、懸命にプレーしたに違いない。しかし、それでもフィオレンティーナのピッチを広く使ったパスワークに揺さぶられ続け、最後まで集中力を保つことができなかった。学習能力云々ではなく、現在の力を全て出し、それでも敗れたということではないだろうか。
 
 前半はフィオレンティーナの守備の拙さもあり、最近では珍しく相手陣内の深い位置でボールをつなげたミラン。11分には本田圭佑が抜け出してチャンスも得た(角度のない位置からのシュートはGKネトがブロック)。ただ、その後は良いかたちを作っても“あと1本”のパスがつながらず、決定機にまでは至らなかった。
 
 後半はフィオレンティーナが選手交代とシステム変更で守備の修正を図り、ミランは守勢に追い込まれた。しかし、CBガブリエル・パレッタの判断の良い守備や相手攻撃陣のラストパスのズレなどで何とか凌いだ。
 
 そして55分、ジェレミー・メネーズがフィオレンティーナDF陣のミスからボールを奪ってカウンターを仕掛けると、ジャコモ・ボナベントゥーラのダイレクトシュートは当たりそこないだったが、運よくゴール前のマッティア・デストロの元にボールが届きゴール。意外なかたちでミランは敵地で先制した。
 
 この“プレゼント”を何としても守りたいという気持ちは感じられたが、いかんせん攻守において連係というものが機能しない今季のミラン。ゴール前で人数をかけて待ち受けるだけの守備を、個々でも組織でも多彩な攻撃のアイデアを持つフィオレンティーナが崩すのは時間の問題だった――。
 
 ヨーロッパリーグなどとの並行でハードスケジュールを強いられているフィオレンティーナにとって、その疲れを忘れさせるほどの劇的な勝利は、極度の不振に喘ぐミランにさらなるショックを与えた。今年に入り、試合ごとに去就が取り沙汰されるフィリッポ・インザーギ監督だが、果たして今週は解任の危機を乗り越えることができるだろうか……。
 
 さて、4試合ぶりにスタメン出場を果たした本田。SBイグナツィオ・アバーテの復帰で、右サイドの攻撃を再び活性化させられるのではないかという期待もあったが、終わってみれば相手には脅威を、見る者には何のインパクトも与えることができないまま、79分にアレッシオ・チェルチとの交代でピッチを後にした。
 
 とはいえ、本田にとっては気の毒な状況ではあった。
 
 左サイドが、メネーズ、ボナベントゥーラ、SBルカ・アントネッリといった複数の選手が絡んで効果的な攻撃を見せたのに対し、右サイドは本田が良いかたちでボールを持っても、他の選手との距離が広がりすぎ、アバーテの上がりも遅いため、プレーの選択肢は乏しく、相手にとっては対応が楽だった。
 
 時折、1対1を仕掛けて縦の突破を試みても、相手は複数の選手で対応してくるため、ひとりをかわしても他のDFによってパスコースはふさがれてしまっていた。また、本田自身がコントロールを乱すことも幾度かあった。
 
 機を見てゴール前に全力疾走してボールを待ち受けるも、味方のボールコントロールミスなどでボールが届かない場面も多く、あらゆる面で“間の悪さ”や“運の悪さ”が感じられた試合でもあった。
 
 孤立した状況、流れも悪いなかで、出来る限りのことはやったと言える本田。とはいえ、それがチームにとって役立ったかといえば、否である。特に前半、ボールを持ちながら次の一手が見つからずに攻撃を遅らせてしまう場面では(本田だけのせいではなかったが)、突破力のあるチェルチであれば……という思いも頭をよぎったものだ。
 
 以前のようなアバーテとのコンビプレーを取り戻し、攻撃時にはメネーズやデストロと近い位置でプレーすることができれば、より本田のプレーは効果的となり、またゴールやラストパスという序盤戦の輝きも戻ってくるかもしれない。
 
 しかしこのショッキングな敗戦により、今後ますます混乱していくであろうチーム状況のなか、果たしてそういった組織プレーの向上が図られるのか……。不安と疑問だけが残る。