クロスバー直撃のミドルシュートを放った一方で、終了間際にパスミスで敗戦の危機も招いた本田。ヒーローにも、戦犯にもなりえた一戦だった。 (C) Getty Images

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 セリエA第25節のキエーボ戦、本田圭佑は後半から出場し、いきなり強烈なミドルを放ったが、ボールはクロスバーを叩いた――。
 
 前節チェゼーナ戦で今シーズン初のベンチウォーマーに甘んじた後の一戦、強烈な好印象を周囲に与えたかったが、昨シーズンのセリエAデビュー戦(19節サッスオーロ戦)同様、ボールはゴールの枠に弾かれてしまった。
 
 マイナスからのスタートとなった今シーズン、ラツィオとの開幕戦でGKに当てながらもファーストチャンスでゴールを決め、その後のゴールラッシュに結びつけたのとは対照的な、今回のクロスバー直撃弾……この先、本田にどのような未来が待っているのか。
 
 と、このワンプレーと過去を結び付けて本田の全てを語るのはアンフェアだろう。ただ、今回のキエーボ戦を見る限り、ミランが暗黒のトンネルから抜け出すのはまだ先であること、そのなかで過ごす本田がいばらの道を歩み続けるであろうことは簡単に想像できた。
 
 前回の対戦では、ジェレミー・メネーズとのキッカー争いを制した(?)本田が鮮やかなFKを直接決めた相手であるキエーボは、ホームでは全く違う姿でミランに襲いかかった。90分間を通してプレッシャーをかけ続け、ミランにまともな攻撃を許さなかったのだ。
 
 ミランは相変わらず、きつくプレッシャーをかけてくる相手には弱かった。前半はまだMFが前を向いてボールを持つことはできたものの、トップ下で中盤と前線のつなぎ役となっていたジャコモ・ボナベントゥーラが後半、中盤に下がって守備に忙殺されると、ミランは中盤と前線が完全に分断されてしまった。
 
 このような状態では、後半途中からメネーズ、本田、ジャンパオロ・パッツィーニ、アレッシオ・チェルチが同時にピッチに立つ超攻撃的布陣となっても、あまり効果のない、行き当たりばったりの攻撃に終始するだけ。攻守に無秩序な、23節エンポリ戦までのミランに逆戻りしてしまった。
 
 本田は冒頭のミドルシュートの他、速い展開でのダイレクトパスなどで判断力とボディバランスの良さを見せたが、45分間で存在感を示せた場面はわずか。この試合でも前後左右を広く動き回ってプレーに絡もうとしていたが、チーム全体の動きに完全にフィットしているとは言い難かった。
 
 ミランは突破力に秀でた選手が攻撃陣には多いため、スペースを求めて選手間が広がりやすく、それぞれが孤立しがちである。そのなかで本田が最も活きるのは、やはりメネーズ、チェルチ、そしてCFの選手と近い位置でプレーし、速い連係で相手の守備の壁を突破していくことではないだろうか。
 
 もっとも、ミランの攻撃が機能するか否かは、まず本田のプレー以前に中盤の働き次第である。良い位置で相手からボールを奪い(そのためには前線での効果的な守備も不可欠だが)、中盤が前を向いて良いタイミングで前線にボールを供給できるか。
 
 その意味で、チェゼーナ戦では奮闘したリッカルド・モントリーボが鳴りを潜め、また中盤の大黒柱であるナイジェル・デヨングが太腿を手で押さえながら試合途中にピッチを退いたのは非常に気がかりだ。
 
 前節で久々にすっきりとした勝利を収めるも、また元の姿に戻ってしまったミラン。さらなる戦力ダウンも懸念される状況で、フィリッポ・インザーギ監督はいかなる手を打つのか。そして次節、前回の対戦では2ゴールを決めたヴェローナ相手に、本田は出場機会を得て決定的な仕事を果たすことができるだろうか。