新たな戦力を多く加えたものの、ここからの急浮上など全く望めない現在のミラン。本田ひとりで打開できる問題でもない。写真はエンポリ戦でデストロのゴールを祝う場面。 (C) Getty Images

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 いつも通りのミランだった。守備での対応の遅さによって、エンポリの効果的なパス回しを許し、逆に攻撃では相手のプレッシャーに苦しんでペナルティエリアに近づくことすら容易ではなかった。
 
 しかし、防戦一方で最初の30分を過ごすと、エンポリの絶妙だった陣形が崩れ、パスワークが乱れ出したこともあり、ミランは攻撃陣が前を向いてプレーすることができるようになる。
 
 そして40分、中盤でボールを奪ったジェレミー・メネーズが持ち込み、十分に相手を引きつけて左のジャコモ・ボナベントゥーラにパス。ここからグラウンダーで中央に折り返すと、ワントップのマッティア・デストロが合わせ、ミランでのファーストゴールとなる先制点を決めた。
 
 ファーストチャンスをモノにしたミラン。後半に入ると、良い形でボールを持てる回数も増えたことで、勝負を決める2点目を狙ったが、逆に数少ないエンポリの攻撃で守備が乱れ、67分に危険なFWマッシモ・マッカローネのマークを外してしまい、同点ヘッドを許してしまった。
 
 82分にみずからのキックミスから招いたピンチを防ごうとしてハンドを犯したディエゴ・ロペスが退場。結局、ミランは勝点1を守ることに重きを置き、エンポリも攻めきることができず、両者にとって不満足の引き分けに終わった。
 
 本田圭佑は2列目の右サイドで先発出場。前半は守備に忙殺されたが、ボールを奪ったたり相手の攻撃を遅らせるなどの効果的な働きは見せられず、また攻撃では相手との対決を避けてワンタッチの横パスなど無難なプレーに終始した。
 
 後半、良い位置でボールを受けてスペースが空いた状態で前を向けるようになると、前線のデストロに好パスを通したりもしたが、全体的には相手に脅威を与えるプレーは非常に少なく、決定的な仕事は果たせなかった。
 
 それにしても、ミランの組織の未熟さは試合を重ねるとともに目立つようになってきている。エンポリには前半戦(4節)でも苦戦したが(2-2の引き分け)、今回は内容面でさらに差が広がってしまった。
 
 前述した通り、守備の組織力があまりに低く、さらに個々が大事な場面でミスを犯すため、せっかくの流れを自ら手放してしまう。このようなミスで今シーズン、いったいどれだけの勝点を失ってきただろうか。
 
 攻撃でも、相手を崩すパターンは非常に少なく、様々な選手がピッチに立ち、色々なフォーメーションを試すも、結局はメネーズ頼みとなっている(それでゴールを量産しているのはさすがではあるが)。
 
 開幕から思わぬ好スタートを切り、チャンピオンズ・リーグ出場圏内入りという期待も高まったが、間もなくして問題は噴出し、今年に入ってからは相手が上位であろうが、下位であろうが、それより見劣りする内容のプレーを続けている。
 
 理由は単純。どのチームも試合を重ねるごとに組織を向上させてチーム力を上げているのに対し、ミランは何ら力の上積みがないからだ。開幕戦のラツィオと20節のラツィオは全く違うチームであり、変化(成長)のないミラン(むしろ弱体化していた?)では歯が立たなかった。
 
 最初から強くてスキのないユベントスには3節で完敗を喫して現実を思い知らせていたが、前節のリマッチでは絶望的な差がかつてのライバル同士である両チームの間には横たわっていた。
 
 パレルモ、ジェノア、サッスオーロ、アタランタ……これまで格下と見ていたこれらの相手に試合を完全にコントロールされて敗れたミランに、かつての強力チームの面影はない。今年に入り、セリエAで勝利した相手が、財政難でチームが崩壊状態にあるパルマだけというのが何とも寂しい……。
 
 怪我人の続出というアクシデントがあったのは不運だが、それを不振の理由にするにはあまりに不甲斐ない試合が続いている。ちなみにエンポリ戦では、アレックス、ガブリエル・パレッタのスタメンCB2人が負傷退場しており、フィリッポ・インザーギ監督に与えられた選択肢はさらに少なくなる。
 
 数字上ではまだ可能性は十分にある欧州カップ出場権を狙い、残り試合での浮上を誓うミラン。勝利こそ最高の良薬といわれるが、奮起して自らを治癒することができるか。このままでは浮上どころか、再び監督の去就問題やチームの内紛など、問題ばかりが浮かび上がることになるかもしれない。