アギーレ(右)の後任監督人事は、韓国でも関心事。霜田技術委員長(左)の渡欧など、内情を捉えた鋭い指摘も。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 ハビエル・アギーレ監督との契約を解除し、新監督探しに奔走する日本サッカー協会の動向は、韓国でも逐一報じられている。
 
 日本の各スポーツ新聞が取り上げる監督候補の名前はほぼすべて韓国でも紹介されており、オランダのベルト・ファン・マルバイクが浮上した際には、一部のネチズンが過剰な反応も示した。
 
 昨年夏、大韓サッカー協会もファン・マルバイクにオファーを出しながら、同監督が韓国に居住しての采配に難色を示して白紙になった経緯がある。そのことから、
「日本は在宅勤務を希望する監督を選ぶのか」
 と皮肉る書き込みがあったほどだ。
 
 ミカエル・ラウドルップが有力候補に浮上していることも報じられている。かつてキ・ソンヨンが所属するスウォンジーを指揮し、現在はナム・テヒが所属するカタールのレフウィヤを率いているため、
「韓国のファンには馴染みの名前」(ネットメディア『OSEN』)
 と報じるメディアもあった。
 
 もちろん、チェーザレ・ブランデッリ、クラウディオ・ラニエリ、グレン・ホドルらに打診を断られたことも伝えられている。
 
「司令塔急務の日本、3日間で3人に拒否された」(サッカー専門誌『ベストイレブン』)
「気を揉む日本、監督候補たちが続々と謝絶」(スポーツ新聞『スポーツ京郷』)
 
 スポーツ新聞の『スポーツ朝鮮』は、
「ヨーロッパの監督たちが日本代表監督職を相次いで拒否する理由は?」
 と題した記事の中でこう分析している。
 
「日本代表監督職は一時期、安定的なポストとして噂だった。欧州に劣らない高い年俸に4年の契約期間、優秀な選手が揃っていることなどで脚光を浴びた。にもかかわらず、候補者たちが相次いで断っているのは、わずか数試合のAマッチを経てワールドカップ予選に臨まなければならないという時間的な切迫もさることながら、日本サッカー協会の軌道修正も原因だと指摘できる。
 
 日本はブラジル・ワールドカップ直後にアギーレ監督を選任し、次回ワールドカップまで保障する4年契約を結んだ。しかし今回の監督選任過程で、技術委員会が毎年契約を更新する案を持ち出した。毎年のように成績が問われ、チーム運営に圧迫を受ける状況で、遠く離れた日本を選ぶのは欧州の監督たちにとっては十分すぎるほどに負担だろう」
 この記事を書いた『スポーツ朝鮮』のパク・サンギョン記者はKリーグのキャンプ取材で先週1週間近く九州に滞在していた。新聞や雑誌はもちろん、テレビなどでも日本の新監督人事についての報道に接しながら、いくつかの違和感があると語ってくれたのが印象的だ。
 
「日本で一連の報道に接しながら感じたのは、半年前の韓国に似ているなということ。ブラジル・ワールドカップ後、韓国も外国人監督の招聘に動きながら相次いで断られ、状況打開のためにイ・ヨンス技術委員長が急きょ、欧州に飛んだ。
 
 霜田技術委員長の渡欧もそれとダブりますが、各種メディアで多くの候補者の名前が浮上することに、いささかの違和感を覚えます。その根拠や誰がリークしているかなどは分かりませんが、あまりオープンにすると候補者たちとの交渉で不利に働くおそれがある。
 
 なによりも4年契約ではなく1年区切りで評価するという方針を、なぜ現段階で明らかにする必要があったのか。仮にそれが内部決定だとしても、契約期間の詳細は交渉のテーブルで協議すべきではないかと思いました。
 
 韓国と日本では仕事の進め方や情報公開の仕方に違いがあるのでしょうが、今の状況は日本にとってマイナスに働いているような気がしてなりません」
 
 いずれにしても、日本代表の新監督人事に韓国も注目しているのは間違いない。
 
文:慎 武宏(スポーツライター)