100年後も豊かな暮らしが出来る街づくりに向けて(熱海)/小槻 博文
<NPO×地域活性×コミュニケーション>
高度経済成長期には日本有数の温泉街として栄えた熱海。しかしそんな熱海もバブル崩壊とともに客足が次第に遠のき寂れていくことになる。
そこで今回は、熱海に情緒と活気の両方を取り戻し、そして未来へきちんとつなげたいという想いで地域活性化に取り組んでいるNPO法人atamistaを紹介する。
「100年後も豊かな暮らしが出来る街づくり」を
高度経済成長期には日本有数の温泉街として栄えた熱海。しかしバブル崩壊以降の1990年代半ばから後半にかけて、客足は次第に遠のき、その結果ホテルや旅館はどんどん潰れ、企業の保養所も撤退していった。
その後2000年代に入ると撤退した物件の跡地に次々にマンションが立ち並ぶようになるが、「正直熱海が東京と変わらない町になっていってしまうのではないかと危機感を覚えるようになった」とatamista代表理事の市来広一郎氏は当時を振り返る。
そこで情緒と活気の両方を取り戻し、そして未来へきちんとつなげていきたいという想いから、大学進学とともに郷里を離れていた市来氏は2007年に地元・熱海へ戻り、そして翌年NPO法人atamistaを立ち上げた
atamistaでは「100年後も豊かな暮らしが出来る街づくり」をビジョンに熱海市の街づくりに取り組んでいる。さもすると“熱海=観光”ということになってしまいがちだが、短期的な視点ではなくあくまで持続可能な街にすることが重要であると考え、 “地域”“経済”“環境”の3つの側面から熱海を再生させるべく各種活動を進めている。
具体的には街づくりに参画する人を集め、育て、そしてそれら人材が交流出来る場をつくっていくことを主旨に、「オンたま」「家守事業」などの事業が進められている。
■「オンたま」
「オンたま」は、熱海に潜在する自然や地場産業、まち、人、食などにスポットを当てることで、熱海の温泉や自然の豊かさと、そこに息づく"まち"と"ひと"の豊かさなど、知っているようで知らない熱海の素顔を見つけるために定期的に開催されているプログラムだ。
■「家守事業」
「家守事業」は、まちに眠っている遊休不動産(空き家・空き店舗)を活用し、エリア価値向上を図る事業だ。そして個々の遊休不動産のみならず、道路や公園という公共空間も含めてトータルマネジメントすることで、エリア全体での再生を意識しているという。
その第一弾として商店街の一角にある遊休不動産をリノベーションしてオープンさせたのが「CAFÉ RoCA」だ。ここはヨーロッパのバールのように、ふらっと立ち寄り、人々が交流し、会話を楽しみながら、熱海のローカルコンテンツや文化を楽しめる、そんないわば町づくりの拠点として位置づけられている。
またリノベーションに関わる人材の育成に向けてリノベーションスクールを開催する準備も進めているとのこと。このスクールでは具体的な物件をオーナーに提供してもらい、その再生プランを受講生が策定、そしてオーナーにプレゼンして提案が受け入れられれば実際にリノベーションを行うという内容を想定している。
移住者に根付いてもらうために
2008年に設立後「オンたま」や「家守事業」を中心にさまざまな活動が進められてきたが、その成果が現れ始めていると感じているそうだ。例えばリーマンショックや東日本震災をきっかけにIターン・Uターンしてくる人が増え、そしてそのような人たちの中から今まで熱海になかったようなタイプの飲食店を開業したり、普段は熱海で生活をしながら週に1、2回打ち合わせのために東京に出向くといった働き方をする人が現れてきたりしている。またこの数年でさまざまなNPOが発足したり、行政が本腰を入れ始めたりするなど、町全体の空気が前向きになってきた印象を受けているとのことだ。
「時代の流れを取り込めず商業で衰退していった町ですので、いきなり商業で復活するのは正直難しいと思います。そこでまずは新しいタイプの人たちに熱海に来てもらうことで、その人たちに受け入れられる商業が生まれるというのが自然な流れかなと思っています。したがって10,000人を呼んでくるのではなく、50人で良いからそのような人たちに来てもらい、そして定着してもらうことが重要だと考えています。」(市来氏)
そして移住してきた人たちに対して地域に根付いてもらうことを目的に、情報誌の制作・発行を中心にWEBサイトやSNSも活用しながら各種プログラムへの参加を呼び掛け、そして参加した人たちを会員化していくという流れを作っていくべく、各種情報発信を進めている。
また地元のマスメディアにおいても地域活性の話題は関心が高く、記者自身にも一個人として応援したいと思ってもらいやすいので、積極的に情報提供しながら関係を築くべく努めている。
一方でまだまだatamistaの活動に対しての理解が十分ではない地元住民も多少なりいるそうだ。したがって移住者だけでなく地元住民に対してもきちんとコミュニケーションを図りながら、理解者を一人でも増やしていくことがこれからの課題だという。
最終目標は“解散”!?
このように移住者の定着を図りながら、街づくりに参画する人を集め、育て、そして人材が交流出来る場をつくっていくべく取り組んでいるatamistaだが、今後の抱負を聞くと“解散”という言葉が返ってきた。
「まずは直近の5年くらいで中心部の活性化を実現し、そして2030年までにはatamistaの活動を完了・解散させることを目標として考えています。」
「それが意味するところは、atamistaがなくても自立的に持続可能な町に熱海が生まれ変わっているということなのです。」
地域再生や地域活性に取り組んでいる関係者に聞くと、「例えるならば私たちは医者。患者(=地域)を健康な状態するのが医者の役割であり、健常者に対して医者があれこれしないと同じように、医者が不要になること(=すべての人が健康である世界)が理想である」と皆声をそろえるのが印象的だ。今後果たしてatamistaが解散出来る日が来るのか?その動向に注目したい。
広報・PR情報サイト「広報スタートアップのススメ」
http://www.pr-startup.com/
Facebookページ「地域活性化のススメ」
http://www.facebook.com/kasseiproject
高度経済成長期には日本有数の温泉街として栄えた熱海。しかしそんな熱海もバブル崩壊とともに客足が次第に遠のき寂れていくことになる。
そこで今回は、熱海に情緒と活気の両方を取り戻し、そして未来へきちんとつなげたいという想いで地域活性化に取り組んでいるNPO法人atamistaを紹介する。
「100年後も豊かな暮らしが出来る街づくり」を
その後2000年代に入ると撤退した物件の跡地に次々にマンションが立ち並ぶようになるが、「正直熱海が東京と変わらない町になっていってしまうのではないかと危機感を覚えるようになった」とatamista代表理事の市来広一郎氏は当時を振り返る。
そこで情緒と活気の両方を取り戻し、そして未来へきちんとつなげていきたいという想いから、大学進学とともに郷里を離れていた市来氏は2007年に地元・熱海へ戻り、そして翌年NPO法人atamistaを立ち上げた
atamistaでは「100年後も豊かな暮らしが出来る街づくり」をビジョンに熱海市の街づくりに取り組んでいる。さもすると“熱海=観光”ということになってしまいがちだが、短期的な視点ではなくあくまで持続可能な街にすることが重要であると考え、 “地域”“経済”“環境”の3つの側面から熱海を再生させるべく各種活動を進めている。
具体的には街づくりに参画する人を集め、育て、そしてそれら人材が交流出来る場をつくっていくことを主旨に、「オンたま」「家守事業」などの事業が進められている。
■「オンたま」
「オンたま」は、熱海に潜在する自然や地場産業、まち、人、食などにスポットを当てることで、熱海の温泉や自然の豊かさと、そこに息づく"まち"と"ひと"の豊かさなど、知っているようで知らない熱海の素顔を見つけるために定期的に開催されているプログラムだ。
■「家守事業」
「家守事業」は、まちに眠っている遊休不動産(空き家・空き店舗)を活用し、エリア価値向上を図る事業だ。そして個々の遊休不動産のみならず、道路や公園という公共空間も含めてトータルマネジメントすることで、エリア全体での再生を意識しているという。
その第一弾として商店街の一角にある遊休不動産をリノベーションしてオープンさせたのが「CAFÉ RoCA」だ。ここはヨーロッパのバールのように、ふらっと立ち寄り、人々が交流し、会話を楽しみながら、熱海のローカルコンテンツや文化を楽しめる、そんないわば町づくりの拠点として位置づけられている。
またリノベーションに関わる人材の育成に向けてリノベーションスクールを開催する準備も進めているとのこと。このスクールでは具体的な物件をオーナーに提供してもらい、その再生プランを受講生が策定、そしてオーナーにプレゼンして提案が受け入れられれば実際にリノベーションを行うという内容を想定している。
移住者に根付いてもらうために
2008年に設立後「オンたま」や「家守事業」を中心にさまざまな活動が進められてきたが、その成果が現れ始めていると感じているそうだ。例えばリーマンショックや東日本震災をきっかけにIターン・Uターンしてくる人が増え、そしてそのような人たちの中から今まで熱海になかったようなタイプの飲食店を開業したり、普段は熱海で生活をしながら週に1、2回打ち合わせのために東京に出向くといった働き方をする人が現れてきたりしている。またこの数年でさまざまなNPOが発足したり、行政が本腰を入れ始めたりするなど、町全体の空気が前向きになってきた印象を受けているとのことだ。
「時代の流れを取り込めず商業で衰退していった町ですので、いきなり商業で復活するのは正直難しいと思います。そこでまずは新しいタイプの人たちに熱海に来てもらうことで、その人たちに受け入れられる商業が生まれるというのが自然な流れかなと思っています。したがって10,000人を呼んでくるのではなく、50人で良いからそのような人たちに来てもらい、そして定着してもらうことが重要だと考えています。」(市来氏)
そして移住してきた人たちに対して地域に根付いてもらうことを目的に、情報誌の制作・発行を中心にWEBサイトやSNSも活用しながら各種プログラムへの参加を呼び掛け、そして参加した人たちを会員化していくという流れを作っていくべく、各種情報発信を進めている。
また地元のマスメディアにおいても地域活性の話題は関心が高く、記者自身にも一個人として応援したいと思ってもらいやすいので、積極的に情報提供しながら関係を築くべく努めている。
一方でまだまだatamistaの活動に対しての理解が十分ではない地元住民も多少なりいるそうだ。したがって移住者だけでなく地元住民に対してもきちんとコミュニケーションを図りながら、理解者を一人でも増やしていくことがこれからの課題だという。
最終目標は“解散”!?
このように移住者の定着を図りながら、街づくりに参画する人を集め、育て、そして人材が交流出来る場をつくっていくべく取り組んでいるatamistaだが、今後の抱負を聞くと“解散”という言葉が返ってきた。
「まずは直近の5年くらいで中心部の活性化を実現し、そして2030年までにはatamistaの活動を完了・解散させることを目標として考えています。」
「それが意味するところは、atamistaがなくても自立的に持続可能な町に熱海が生まれ変わっているということなのです。」
地域再生や地域活性に取り組んでいる関係者に聞くと、「例えるならば私たちは医者。患者(=地域)を健康な状態するのが医者の役割であり、健常者に対して医者があれこれしないと同じように、医者が不要になること(=すべての人が健康である世界)が理想である」と皆声をそろえるのが印象的だ。今後果たしてatamistaが解散出来る日が来るのか?その動向に注目したい。
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