みのもんたセクハラ疑惑に見る企業内セクハラ発生の構造/増沢 隆太
本番中に女子アナウンサーの体に触れようとしたと騒ぎになったみのもんた氏。TBSはこれに対し「誤解を招く恐れがあるので『現場』を注意したとのこと。
企業組織におけるセクハラ発生の典型的な構造を見ることができます。組織管理上大きなリスクとなりかねない構造です。


顧問先企業や講演でもハラスメントの対処はたくさんしてきました。セクハラのようにいろいろデリケートで複雑な背景もあるケースが多いものは、特に慎重かつ毅然とした対処が必要です。
しかし現実にはなかなかできません。なぜでしょう。


セクハラ問題はとくにそのデリケートさゆえに、目的意識を見失いがちだからです。
企業におけるハラスメント対策はすべて組織管理のためにあります。特に私が関わる中小企業では、社内に法務部門やハラスメント窓口など無いのが普通で、結局そのツケは経営者・管理者が負わなければなりません。


しかし実際の現場では組織管理ではなく倫理観やら犯罪のような扱いになってしまい、これがかえって本来の目的達成を阻害するのです。もちろん犯罪レベルの事件もありますので、「適正な対処」には警察との連携含めた対応も必要な場合は多いでしょう。しかしあくまで目的は犯罪の立件ではないことに留意して下さい。


みの氏は「セクハラという認識はない。パワハラと言われるならわからなくもない」との発言をしているようです。事実とすれば典型的な組織管理上危険な認識です。
さらにまずいのは会社側が視聴率を稼ぐスターにおもねって、その責を無視し、現場に責任転嫁している姿勢です。テレビ界という特殊で、一般社会とは隔絶された世界だから許される?のかどうか知りませんが、一般企業であれば絶対に許されない状況です。


まず実行した側の意図はハラスメントにおいては基本的に関係ありません。
「そういう意図は無かった」とほぼ100%実行者は言います。


セクハラかどうかの認定は「受けた側」がするのです。受けた側が「ハラスメント」と認識したかどうかがカギです。
しかしそれでは何でもかんでも、冤罪含め言ったもん勝ちになるとの危惧があります。そこを客観的に判断するのが組織の責任となります。


たとえば今回の件は「エロティックな話をした」ではなく、放送中「女性スタッフの肉体に触れた・触れようとした」ということです。直接肉体に触れるということはハラスメントとなる可能性がきわめて高くなります。
「やむを得ず行う」必要性が乏しいからです。
危険が迫ってきて、その回避のため緊急避難だったなど、特殊な状況以外で男女問わず「体に触れる」必要性はまずないでしょう。
あるとすれば「親近感」や「コミュニケーションの一環」くらいです。


ここがセクハラのキモです。親近感やコミュニケーション表現は個人的なもの。自分はそう思っていても相手がそれを完全に共有出来ている保証はありません。だから許されないのです。
同性同士であっても体に触れる行為が不快に感じる人はいます。まして異性間では不快に感じる割合がぐっと高まります。


ではイケメン男性が体に触れるのは良いのでしょうか?もちろんダメです。
ただ、これまた「触れられた側」が不快に感じなければ問題化しません。それは不公平不平等と思いますが。ハラスメント対処は組織管理が目的です。問題化しなければ『問題ない』のです。 これが管理者の立場です。倫理的不公平感は関係ありません。(ただし、不快に感じていても(被害者側が)言い出せない、耐えている、のであれば完全に問題になりますので、表面的な判断は危険です)
「不快に感じる人がいる」限り、それはハラスメントとなり得る訳ですから、それを禁止することがハラスメント対処です。