【NPO広報事例】子どもが売られない世界をつくるために/小槻 博文
■ベンチャー・中小企業・NPO等の広報・PR活動事例

強制的に子どもが売られてしまう問題を防止すべく、世界各地で活動を行うNPO法人かものはしプロジェクト。今回は同団体の活動や広報・PR活動の取り組みを紹介しよう。



【インタビュー企画・実施】 「広報スタートアップのススメ」編集部 (運営会社:合同会社VentunicatioN)


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「子どもが売られない世界をつくる」ために

世界には自分の意思と関係なく身体を売られている子どもが何百万人と存在する。そこでNPO法人かものはしプロジェクトではそんな子どもたちを失くそうという想いの下、子どもが売られないための仕組みや環境づくりに取り組んでおり、現在カンボジアとインド、そして日本を拠点に各種活動を進めている。


まずカンボジアにおいては、貧困が故に子どもが売られてしまうことが多々あることから、貧困を解消するために女性を雇用して土産物など雑貨をつくる工房としてコミュニティファクトリーを開設。また加害者を摘発するための仕組みづくりに向けて捜査研修などカンボジア警察の能力向上の支援を進めたり、さまざまな問題を抱えている子どもたちを保護する孤児院に対して、孤児院卒業後に自立して生活することが出来るような支援も行ったりしている。





一方インドについては2012年から着手したばかりということで、まずは今どのような状況なのか実態調査を進めながら、現地パートナーなどと連携して少しずつ活動に取り組み始めている段階だ。


そして日本では、カンボジアやインドにて活動を行うための資金調達や、この問題を知ってもらい寄付をはじめとする支援の輪を広げていくための啓蒙・啓発活動に取り組んでいる。

広く潜在層に、深く顕在層に

そうしたなかで啓蒙・啓発活動は“潜在層”と“顕在層”に大別してそれぞれ取り組んでおり、まず潜在層に対しては広く世の中に児童買春の問題や同団体について知ってもらうための活動として、パブリシティやデジタルコミュニケーション(団体サイト・SNS)、また外部講演やセミナーなどを中心に展開。一方顕在層に対しては、より理解や関心を深めてもらい支援者になってもらうための活動として、活動説明会やスタディーツアー(現地視察)などを開催している。





そのなかでも、イベントへの参加者の約3割がサイトやSNSから申し込みしていることからデジタルコミュニケーションを重要視しており、したがってデジタルコミュニケーションをさらに強化すべく、現在コンテンツの拡充も検討しているそうだ。


一方で「子どもが売られる問題」はセンシティブであるがゆえに、なかなかメディアにとって取り上げづらいテーマであるし、一般の人にとっても直球では伝わりづらいテーマだ。


「そこでなぜこの問題に取り組むのか、どのように困難を乗り越えてきたのかといったような代表の村田のヒューマンストーリーを入り口にして、そのなかでこの問題について触れる形を採りながら、報道獲得や講演会・セミナーでの講演機会の創出を図っています。」(NPO法人かものはしプロジェクト 広報担当 小畠瑞代さん)


とはいえヒューマンストーリー以外での切り口を見出すのが難しいと打ち明ける。またメディアで取り上げられたからと言ってすぐに効果が現われるわけではないが、だからと言って露出がゼロになったら「何か問題があるのではないか」とネガティブな印象や信用低下につながってしまうため、どう上手くメディアと付き合っていくべきか、広報担当として常に考えているそうだ。




ミッション実現に向けたコミュニケーション活動を推進

そうした悩みを抱えつつも、今後どのように取り組んでいくのか抱負を最後に聞くと、


「当団体では『子どもが売られない世界をつくる』をミッションステートメントとして掲げています。したがってコミュニケーション活動に限らず全ての活動に当てはまることですが、『果たしてこの業務はミッションステートメントにつながっているのか』ということを考えながら日々の業務に取り組んでいます。」(同)


「そうしたなかで広報としては『この問題を世の中の人々に知ってもらい、資金をはじめ支援の輪を広げる』ことを目的に、1日も早く“子どもが売られない世界”を実現すべく貪欲に取り組んでいきたいと考えています。」(同)


と力強く返ってきた。目的はあくまでミッションステートメントの達成であり、コミュニケーション活動は目的達成のための取り組みだ。そこが明確になっている限り、試行錯誤しながらもきっと適したコミュニケーション活動の在り方を見つけていくことであろう。